第4話 レイムのこととみんなのことと

「せっかくレイムのことも出てきたから、このままレイムがどうやって生活していたか教えてよ。

 まあ、言いたくないところは言わなくて良いから。」

「そうね、色々と転々と渡って生きてきたわね。かなり苦労しながら………。

 だいたいは貴族の屋敷でメイドさんをしていたり、ちょっとした歓楽街系でマッサージ屋さんの仕事をしてたわ。これでもマッサージは得意なんだからね!

 ちなみにドルクマンではメイドをしてたり、あと、冒険者もやってたりしてたわ。」


「おお! 冒険者してたんだ? オレもちょっと冒険者には興味があるんだよね。」

「なら、冒険者の登録くらいはさっさと済ませちゃいましょ。名前だけで登録が完了するから。」

「おおお! マジか!? じゃあ、道案内よろしく!」

「わかったわ!」


「あと、続きなんだけど今は良いや! 今度連合王国に行くとき、みんなで聞くようにするね。そっちのほうがレイムも良いでしょ?」

「あ、確かにみんなにも話したいかも。まとめて話したほうが効率も良さそうね。」

「効率とかいう言葉がレイムから出てくるとは。ちょっと違和感!」

「なっ! あんたやっぱり失礼ね!」


「じゃあ、ファテマさんも言ってたから、オレのこととファテマたちのことを話しておくよ。

 まずは、オレの話から。」

 そう言って比呂貴は異世界から来たことと、ぶっちゃけまだまだ世界のことがわからないので今回のドルクマンに行く理由などを説明した。

「へっ、へえ。なるほどね。

 私もサキュバスでかなり珍しい生き物だ! なんて思ってたけど、ユニコーンに出会ったり異世界の人族に出会ったり。私の存在なんて別にたいしたことないわね。」

「え? 別にたいしたことないことはないでしょ? 魔族なんでしょ?」


 と、比呂貴は突っ込みつつ、今度はファテマたちのことを話し始める。

「ところでレイムはユニコーン族の事ってどれだけ知っているの?」

「どれだけってそんなアバウトに聞かれても、どう答えていいかわからないわね。」

「あはは。確かにその通りだけど、レイムに突っ込まれるとは。

 一応、あの可愛らしい形(なり)で、あれでもオレよりも年上らしい。」


「あああ、そうでしょうね。ユニコーン族はとても長生きだし、その分、成長もとても遅いわね。

 可愛い♪ なんて言ってるけど、恐らく私よりも歳は上かもね。ちなみに、私は三十歳よ!

 人族の年齢で言ったらもうおばちゃんかもしれないけど、人族の成長度合いで考えるならちょうど二十歳くらいかしら?

 魔族もまあまあ長生きだけど、とりあえず成人するまでの成長は早いのよ。」


「オレが聞いた話だと、ファテマが百二十歳。アイリスでも六十歳らしい。」

「ファッ!? マジで!」

「そう。マジらしい。」

「っていうことは、あの愛らしいアイリスたんがまだ当分続くってこと!? この世に神はいたのか!」

「って、お前は悪魔だろうが! ってお約束の突っ込みだな。あと、その思考回路、お主も相当腐っておるな………。

 ちなみにオレは三十六歳! レイムがオレより年下でちょっと良かったよ。って別にそんなことは聞いてないってか?」


 そしてその後は、ファテマから教えて貰った比呂貴の知る範囲のことを伝えた。あと、比呂貴とファテマの出会いなど。一応、要約しながら。

「フェッ。グズッ。

 ファ、ファテマちゃん。アイリスちゃん………。」

 レイムは顔をグチャグチャにしながら聞いていた。

「ちょっ、そこまでなりながら聞くことか?」


「だってぇ、ファテマちゃんのお父さん、お母さん。アイリスちゃんのお父さんが………。

 あんたこそ、こんな話聞いて涙にならないわけ!」

「うっ、まあ、壮絶な話だとは思ったよ。」

「わ、私もめっちゃ苦労してきて不幸だと思ってたけど、ぜんぜん大したこと無かったわ。あの二人に比べたらザコ同然じゃん。

 やっぱりアイリスちゃんに浄化してもらおう!」

「ああ、だからもう、浄化ネタはやめなさい! はいはい。この話題はここまでね!」

 比呂貴がグズるレイムをなだめながら次の話題に移ろうとする。


「で、レイムにはもう一つ聞きたいんだよね。」

「なっ、何よ? 改まっちゃって。」

「レイムって一応魔族なんでしょ? どんな魔法が使えるの?

 オレも最近ちょっと魔法が使えるようになってきてさ! 魔族が使う魔法についても教えて欲しいなって!」


「なっ!?」

「『なっ』てなによ? さぞかし凄いやついっぱい知ってるんでしょ?」

「ロ、ロキってば、絶対ワザと言ってるでしょ? 私はそんなに魔法は得意じゃないんだよ! ちょっとしたスキル系の魔法が使えるだけ!

 サキュバスの代表的な得意魔法でチャームってのがあるんだけど、それすら使えないわよ!

 そもそも魔法が得意でいっぱい使えていたら人生こんなに苦労してないわ!

 もう、バカバカ!」

 そう言ってポカポカというSE(効果音)を立てながら比呂貴を叩く。


「たっ、確かに!? オレとしたことが!

 言われて気付いたが、レイムが魔法を得意げに使っているとか違和感でしかない!

 そもそもポンコツだったの忘れてたわ。」

「ぐぬぬぅ! 自分でポンコツ言うのは耐えられるけど、人からポンコツ言われるのはやっぱりムカつくぅぅ!」

「あはは。ごめん!

 じゃあ、代わりにオレが練習中の魔法を見せてあげるよ。途中で休憩があるって言ってたよね?」


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