第2話 レイム(ポンコツだけど)仲間になる!

 レイムを含めたみんなでロビーに集まり朝食を取っていた。

 そしてファテマがレイムに尋ねる。

「レイム、お主よ。先ほどロキの邪まオーラから魔力を吸収していたのでは無いのか?

 通常の食事は必要なのか?」

「なっ!? それはそれで魔力の話よ? 生命維持するためには普通のご飯も必要よ?

 まあ、人族よりは少なくて大丈夫なんだけど、私、人族の食事って大好きだからいっぱい食べちゃうんだけどね♪

 えへへ☆」

「えへへって言うけど、ようは魔力補給と生命維持は別な食事が必要ってことだよね?

 それって効率悪いよね。」

 比呂貴がボソッと突っ込みを入れる。


「ん? 確かにそうとも言うかしら?

 い、いやいや、そうじゃなくて、そんなことないもん! 私ポンコツじゃないもん!」

「いや、なにもポンコツまで言ってねえし。まあ、自分でも言うくらい自覚はあるんだね。」

「なっ!?」

 喋れば喋るほど沼にハマっていくレイムである。すっかり残念系ポンコツキャラの位置を定着させたようである。


 そしてレイムはいきなり立ち上がって叫ぶ。

「ってか、そういうことじゃなくて!

 なんでみんな仲良くご飯してんのよ! 私さっき会ったばっかりだよ? 怪しいとか思わないわけ? 悪い事企んでるかもよ?」

「え? なんか悪い事企んでるの?」

「いや、そんな事無いけど。どっちかっていうと何も考えてないというか………。」

「そっ。ならいいんじゃね?」

「私、サキュバスだから生気とか吸っちゃうかもよ?」

「まあ、駄々漏れてるところは吸っちゃって良いよ。所詮は漏れているやつ、オレにはどうしようもないモノだし、有効活用しちゃってくれるならエコだよ!」

 レイムの言葉に比呂貴が答える。(食事の手は休めない。)


「いやいや、しかも私、これでも魔族だよ?

 珍しい上に、人族からもモンスターや亜人からも嫌われてる代表だよ?」

「いや、珍しいと言うたら儂らもユニコーンじゃしなかなか珍しいぞ? アイリなんかダークエルフとのハーフじゃし、たぶんこの世に数人とおらんよ?」

「むっ、た、確かに。でも、私、嫌われ者じゃん。」

「儂ら魔族には特に偏見は無いぞ? まあ、実害があるようなら対処するがな。」

 レイムの言葉に今度はファテマが答える。(食事の手は休めない。)


「しかも、私サキュバスだよ?

 低級だ! 低俗だ! って、他の魔族からも言われるし、人族からは汚らわしいとか言われてだいたいいやらしい不潔な目で見られるし。」

「いや、オレはこの世界の常識的なところは良く分からんけど、汚らわしいこととかしてきたの?」

 レイムの言葉に比呂貴が答える。


「え? いや、確かにそういうシチュエーションにして魔力は貰ったことあるけど、実際に、その、えっと、そういう行為というか………。

 ぶっちゃっけえっちなことはしたことありません!

 これはこれでサキュバスとしてはどうかと思うんだけど………。」


「いやいや、流石にサキュバスだけあって可愛い外見だと思うよ。まあ、オレのタイプとはちょっと違うけど。オレのタイプのワンツーはここにふたりいるしね。

 それにこんな愚痴が出るってことは相当苦労してきたんだね。ご苦労様でしたって言ってあげたいよ。」

「ロ、ロキさん!」

 さらにレイムと比呂貴は会話する。(比呂貴はデザートを食べている。)


 その後、さらにファテマがレイムに声を掛ける。

「いや、さっき仕事がクビになったって言っておったからな。行く当てが無いのかと。別に帰る場所があるのなら食事が終わった後にでも別れるが良い。

 儂とてちょっとだったがお主と朝食を共にできて嬉しかったぞ!」

「えっ??

 た、確かに行く当てはありません………。」


「ならここに居れば良い。アイリも良いよな?」

「うん。まあ、お姉さんバカっぽいけど良い人っぽいから。ぶっちゃけロキよりよっぽど安全だしね。」

「アイリスちゃん。いえ大天使アイリス!」

 アイリスもサラッと鋭い一言を混ぜつつ答える。比呂貴がしょんぼりしているのは言うまでもない。


「そうじゃ。これからロキがドルクマン王国にひとり行くのじゃが、お主、ついて行ってくれんかのう?

 ロキはこの地域に疎くてな。一人は心配じゃったんじゃよ。流石に道案内は出来るであろう?

 それに、魔力吸入という意味ではロキと居た方が良かろうて?」

「行く! ドルクマンなら何度も行ったことあるわ。と言うか、昔住んでて冒険者してた!」

 ファテマとレイムは話をする。


 そして数秒後、



「うわわああああぁぁん!」

 レイムは大声で泣き出してそのまま地べたに座り込んでしまった。



「ど、どうしたのじゃ? 急に?」

 ファテマが心配そうにレイムのところに行く。

「ってか、なんでみんなそんなに優しいの? おかしいよ!

 わっ、私ね、ヒック。

 ほら、魔族じゃん。ウエッ。サキュバスだし。ヒックヒック。

 だからね、こんなに優しくしてもらったのって初めてなのね。嘘でもこんなに優しくされたこと無いのね。


 さらにね、私ポンコツじゃん? ジュルルウ。

 むしろね、いろんな人やいろんなところで酷い事いっぱいされてきたんだよぉ!

 だからだから、例え、今までの話が全部嘘だったとしてもね、とっても嬉しくってね。

 もう嘘でも良いよ。今が一番幸せだからここで死んじゃっても良いかも!」


「べっ、別に今までの話は嘘ではないからな。それに命は大切にせい!

 そっか、お主も苦労してきたんじゃのう。儂らもそれなりに苦労してきたからな。苦労の分は今後、優しくなれようて。」

「ファ、ファテマちゃん。いえ、ファテマ様!」

 そう言いながらファテマはレイムの頭を優しく抱いてあげた。

「ほれほれ、いい加減泣き止まんか!

 お主は崇高で気高い魔族の端くれであろう?」

「うん。ありがとうファテマちゃん!」

 レイムは魔族には似つかわしくない、太陽のような笑顔で答えたのであった。


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