第6話 シューにいろいろと話は聞けた。では、いよいよ料理タイム!

「いや、女の子二人なのでお菓子を考えているんですよ。あと、砂糖とかもやっぱり市場でしか手に入りませんか?」

「そうですね。市場でなら入手できます。先ほどの小麦粉もそうですが精製品全般はやっぱり王国で作っているものが良いですね。最近はこの地域でも精製をしているんですが、まだまだ品質が良くありませんからね。」

「なるほど!

 シューさんが言うならそういうことなんでしょうね。とても参考になりました。ありがとうございます!」


「いえいえ。こちらこそ。あまり役には立っていないような気もしますが………。

 できれば私もそのお菓子は食べてみたかったのですがお店がありますからね。残念です。」

「そんなの機会があればいくらでも作りますよ!

 ありがとうございます。早速市場に買い物行きますね。お会計をお願いします!」

「ロキさんは銅貨三枚です。」

「金は儂が払おう。三人分まとめて貰えんかのう?」

 会計に対してファテマが割り込んできた。


「ファッ、ファテマさん!?」

「そういや、アイリからお金を貰っておったんだっけかな? まあ、それはそのまま持っておれ。今後役に立つやもしれん。」

「あ、ありがとう。ファテマ!」


『アイリスってば、一応オレが部屋に行ったこととお金を渡してたことはちゃんと言ってたんだね。やっぱりとても良い子じゃないか。

 あと、ファテマさんのお金はどっから出てくるんだろう。これも気になるところだけど………。』



 そしてお会計を済ませた比呂貴たちはそのまま市場に向かう。

「で、なんで二人とも付いてきているの?」

「え? 儂がおらんとお金はどうするんじゃ?

 逆にそんなこと言われるとは思わんかったわ!」


「………。」

 アイリスは比呂貴をチラッと見て、何も言わずファテマの斜め後ろを歩いている。


『うーん。アイリスってば筋金入りだな。人間が嫌いなのか、男が嫌いなのか。まっ、まさか根本的にオレが嫌われている?

 どちらにしても今の状況はかなり辛いな。ちょっとずつでも仲良くなれたら良いんだけど………。』

 比呂貴は苦笑いである。


「そりゃあ、会計してくれるのはありがたいけど、でも、仕入れを知っちゃったらネタバレで全然面白くないよ。

 って、別にファテマさんネタはわかっても完成品まではわからんかな。」

「ぐぬぬ。バカにされておるが、こればっかりは事実だからぐうの音も出ん。」

「ハハハ。じゃあ、一緒にお願いしますね!」


 そして一通り買い物を済ませた比呂貴たち。一同は宿屋のキッチンに集まっている。

「さて、これから作りますのは、お鍋で作るホールケーキです!

 まあ、もうしばらく時間が掛かるからロビーで待っててよ。或いは部屋に居ても良いよ。出来たら呼びに行くから。」

「ふむ。わかったぞ。ロキよ。」

 そう言ってファテマとアイリスはキッチンを後にした。


 ダンは引き続きキッチンに残っている。

「なあ、ロキよ。オレにも手伝わせてくれ!

 難しい料理は無理だが、これでも一応朝食くらいは作れるからな。それに異世界のお菓子作りに興味がある。

 後で、シューにも自慢できるしな。」

「結局最後の言葉に集約されているような気がするが、でも手伝いは歓迎だよ。

 ただ、作るのはただのホールケーキだよ? ホールケーキくらいはこの世界にもあるでしょうよ?」


「あるにはあるが、ホールケーキなんて窯で焼かないといけないものだと思っていたからな。そんなの王国に行かないと無いぜ?

 しかも窯もそんなたくさんあるわけでも無いから、それこそ王族・貴族の贅沢なものっていうイメージしかないんだけど。

 それがこんな鍋で作れるっていうんなら大発明だぜ!」

「なるほど。でも、流石に鍋で作るから見た目はだいぶショボいからね。そこまでは期待しないでね。」



 そしてケーキが完成した。試食用に別の鍋でももうひとつホールを作っていた。比呂貴とダンはそちらのケーキを食べてみる。

「まあ、試食用はホールと生クリームだけで見た目ショボいけど、まあオレとダンが食う分だからこんなもんでよかろう。

 そして味は……、まあ、こんなもんかな?

 まあでも、日本で作るケーキとはだいぶ雰囲気が違うな。まあ、材料が微妙に違うからその差だよな。むしろ、ここまで作ったんだし良しとするか。」


「おおおおおぉ! ロキよ。これはめっちゃうまいじゃなか!

 ってか、よく考えたらホールケーキなんて食べるのは生まれて初めてなんだけどな。こんな感じなんだ。

 フワフワの食感でクリームがとても甘い! これは確かに貴族様が嗜む(たしなむ)わけだ!

 これならあのお嬢さま方もきっと喜んでくれるさ! 少なくともオレもそうだし、シューなんてめっちゃ喜ぶぜ?

 フフフ。これは後で自慢できるぜ!」

「またまた最後の言葉にすべてが含まれてるようだけど、でも、喜んでもらえて嬉しいよ!

 さて、ファテマとアイリスを呼んでくるか!」


 比呂貴はファテマとアイリスを呼んできて、朝、比呂貴とダンが打ち合わせをしていたテーブルに集まった。

 ファテマとアイリスは椅子に座っておりテーブルにはケーキが置いてある。ケーキは試食用とは違って如何にも小さな女の子受けしそうな色とりどりにフルーツでデコッてある。

「さて、ここにケーキがあります。今からナイフで切り分けますよ!」


「おおおぉ!

 これは凄い。ケーキの上だけじゃなくて中にもいっぱいフルーツとクリームが詰まっておるではないか!

 お主、かなり芸が細かいのう。」

 ファテマは目を輝かせて言う。一方アイリスは、少しは興味あるらしく、ケーキをチラチラと見ている。

「むふふ。まあ、オレって出来る男なんでこれくらいはやりますよ。」


『うーん、アイリスの反応が思ったより薄いけど、まあ、ケーキ食べたらそれなりの反応を見せてくれるかな?

 まあ、まったくの無反応じゃなかっただけマシかな。』

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