第4話 この世界のこと教えてください!②
「いや、とてもわかりやすいよ。ありがとう。帝国とか王国とかまさに異世界って感じでワクワクが込み上げるなあ!
あと、この街について聞かせて欲しいんだけど良いか?」
「この街か? うーん。そうだな。この地図でいうと下の方の連合王国と王国の間になるな。
先ほどドルクマン王国が建国された話はしたと思うけど、それ以前は連合王国がある西の大平原の東側は何にもなかったんだよな。まあ、南の大森林に近いってこともあり凶悪なモンスターや亜人もたくさんいるからな。
で、大森林だけど北側に出っ張ってる場所がある、そのさらに東側にもう一つ王国が建国されて、この地域はだいたい両王国の真ん中に位置する場所なんだよな。
で、各王国を行き来するために数日はかかるが、この地域で必ず一晩泊まることになるので、自然と宿屋街になっていったってわけだ。
あと、大森林からとエルフの国からも人族に友好的なモンスターや亜人が人族相手に商売をする奴が増えてきた。
っていうのがこの地域の歴史だ。こんなところで良いか?」
「ああ、十分だ。
ということだと、ここはそのどちらかの王国の領土ってことになるのかい?
モンスターや亜人たちがたくさん住んでいるみたいだけど、市民権みたいなものは発行されるのか?」
「ああ、なるほど。確かに気になるところだな。
まず、市民権だが二つの王国以外はよく知らねえ。市民権とかの概念があるのかどうかもな。
で、この二つの王国だが、市民権が発行されるのは人族だけみたいだな。ただし、諸侯によっちゃ亜人との共存を積極的におこなっているのもいて、そういうところではその地域だけの市民権が発行されることもあると聞いたことがある。まあ、オレは実際には見たこと無いがな。
あと、この地域だが、正式にはどちらの領土ってわけでもない。王国が領有を宣言するよりも先にオレら亜人やモンスターが住み着いちまったからな。
ただ、両国とも役人と軍隊は派遣されていて、共同統治地域ってことで中立地帯になってる。なので、一応人族による治安と秩序が保たれている。
まあ、オレらとしても人族相手に商売をさせて貰ってるわけだからその点には異論なく過ごしているってわけだな。」
「なるほど。なるほど。どんどんとこの世界のイメージが湧いてくるよ。それにこんな地図もあるからかなり文明レベルは高そうだよな。この地域も三階建ての建物多いし。
あと、二つほど聞きたいんだが。
経済と仕事についてが一点。まあ、ぶっちゃけ仕事ってどうやって探せばよい?」
「おお。なるほどな。
確かに人族の国で生きていこうっていうんなら仕事は必要だな。なんだかんだでお金が無いと生きていけない。
まあ、農業系と国がやってる仕事系になるけど、流石に仕事の実情まではわからんところだが………。
ちなみに役人や軍人・警察はそもそもとしてよそ者だと無理みたいだ。唯一傭兵と言う形では各国とも非公式で雇ってるってのは聞いたことがある。傭兵は人族以外でも雇っているらしいしね。
あ、そうそう!
ドルクマン王国だが、こちらはモンスター退治が国の命題っていうのもあり、冒険者ってのが正式な職業としてあるみたいだ。これは特に国に関係なく腕に自信がある奴は誰でもなることができるらしいぞ。まあ、稼いで生活できるかは別の話だけどな。
あとはあれだ。ここら辺の地域で人族や亜人たちに対してなにか商売をしていくっていうのも一つだけど。でもこれも何か元手となるものが無いと厳しいかもな。」
「軍人とか冒険者って民間のものは無いの? 冒険者ギルドとか?」
「ああ。あるにはあるが、これも結局信用問題に直結する話だ。市民権がないものはなかなか難しいだろうな。
ってか、オレは亜人だからそもそも市民権とか情報としてしか意識が無かったが、王国に行って詳しく聞いてみることだな。」
「なるほど。ありがとう。とても参考になったよ。ホントにオレは右も左もわからない状態だったからな。
あと、最後にこの辺で食材を売ってるところは知らないか? 調味料もあればベストなんだが。
それとこれはお願いと言うことになるが、この宿屋のキッチンを借りることはできるか?
実は、ハーフの女の子から試験を受けさせられていて、納得のいく料理を作らないと一緒に居られないんだよ。かなり切実なんだよ。
ってか、ファテマのモフモフと離れたくない………。」
「なっ、なんだ。
最後の方はもはや願望だな? ハハハ!
キッチンの件は良いぜ! オレも異世界の料理を見てみたいな。その代わりオレにも食わせろよな?」
「ああ、もちろんだよ。オレの料理スキル舐めるなよ!」
「あと材料の件だが、この店を出て右に行くと市場があるからそこで買うことができるよ。
でも、ぶっちゃけ食いモンに関してはあまり期待できないぜ。この辺は農場もないホントの平野地帯で食糧も両方の王国から仕入れているのが実態だ。
あと食事関係といやあ、ぜひとも寄って貰いたいんだが、知り合いがやってるレストランがある。個人経営でやってるカウンターだけの小さい店だからある程度しゃべれると思うよ。そこでいろいろと聞いてみるのもいいんじゃないか?」
「………。
と言いつつも、結局行けってことだよな? ダンも人が悪いよ。」
「アハハ。バレたか。流石はロキだな。ぶっちゃけその通りだよ。これが、その店のチラシだ。持ってってくれ!」
「まあ、オレとしても何の手掛かりもないからダンの言う通りにするけどな。でも癪に障るのはあるぞ。」
「オーナー。そろそろこっちも手伝ってくださいよ。今日は棚卸あるんでそっちにいけないっすよ。」
フロントからスタッフの声が聞こえてきた。確かに一時間半はしゃべっていたであろうか。
「あ、今行くよ。
すまねえロキ。そろそろ仕事に戻らなきゃならん。またなんかあったら遠慮なく言ってくれよ。
ロキとの会話は本当に楽しかったからな。忙しくても時間を作るからな!」
「いやいや、こちらこそ忙しいところ話を聞かせて貰ってありがとう。かなりこの世界について把握できたよ。
また細かいところで聞くことになると思うけど、そん時はぜひともよろしく!」
そう言って比呂貴は宿屋を後にした。
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