第3話 この世界のこと教えてください!①
「え? ハーフってそんなに珍しいの?
まあ、確かにユニコーンの子とユニコーンとエルフのハーフの子が姉妹っていうんだから、そっちの言い方で『訳あり』ってのはわかるけどね。」
「いやいや、人族がどんな妄想抱いているかわからんが、そうそうハーフなんていないぜ? 異種族間交配なんてなかなか成立するもんじゃないよ。
とは言ってもエルフは純潔であるが惚れっぽい一面もあるのは確かだな。人族とエルフのハーフは見たことはある。
でもな、それでも片手で数えるくらいしか見たこと無いぞ?
あとな、ここに来るときにリュックを持っていたが、そこから宝石を出してきたんだよ。あ、これは個人情報になるな。これは信用に関わるからこれ以上はやめておこう。」
『なんだこのおっさんは。口が堅いのか柔らかいのか。まあ、コンプライアンスの精神はあるようだな。』
比呂貴は苦笑いでいる。そして比呂貴から追加質問をする。
「なるほど。珍しいのはわかったよ。
あと、ダンのこともある程度は信用することにする。ただのおしゃべりなだけかもしれんが、しっかりと情報提供してくれるからな。信用に関わるところをはしゃべらないっていうところも気に入ったよ。
そんなダンにいくつか聞きたいんだがいいか?」
「そう言って貰えるのは嬉しいねえ。情報屋冥利に尽きるってもんだ!
何でも聞いてくれ。」
「まずはこの世界の全体像を聞かせてくれよ。」
「!? そこからか?
ロキよ。差し支えない程度で構わないんだが何者なんだ? ただの人族って訳じゃ無さそうだな?」
「あ、オレか?
まあ、秘密にすることでも無いし、ダンからも正確な情報が欲しいからな。説明してやるよ。」
そう言って比呂貴は異世界から来たことと、ファテマとドラゴンを追っ払ったことの概要を話した。
「ロッ、ロキが異世界人!? それはたまげたなあ………。
しかし、オレの最近はどうなってんだろう。ここ数日でロキの言うところの伝説級の出来事ばっかり起きるじゃねえかよ。
人生で三回あるっていう大転機っていうやつか?
よし、いいだろう。しっかり説明してやるから良く聞けよ。ということなんで、しばらく店番頼むわ!」
ダンは大きな声でもう一人いた店番に声を掛けた。そしていったん席を立ち店の奥に入っていった。
二、三分ほどしてダンは戻ってきた。手にはA三サイズくらいの紙を持っていた。
「これだ。世界地図。王国で手に入れたんだけど、結構高かったんだぜ!」
「ほうほう。なるほどねぇ。」
比呂貴は興味津々で覗き込む。ダンは話を続ける。
「人間の国は大きく五つある。まあ、自治区やモンスターの小さい国のようなものもたくさんあるみたいだけどな。
まずはこのふたつ。」
そう言ってダンは地図の下の方を差した。
「ひとつは『ベアーテ・エンデル連合王国』だ。人族の国としては最古の国で最強となっている。人口、歴史、文化、文学、政治、経済、軍事。どれをとってもだ。
ちなみに人口は約四千万人いるということらしい。首都だけで五百万人いて、もうひとつの王国よりも人口が多いんだよ。
帝国との国境近くに複数の力のある諸侯の辺境伯がいるが、かなり強い自治権を有していて国境の警備を行っているということだ。本国での発言権も強い。
歴史も千年以上あり、千年王国と呼ぶ奴もいるくらいだ。
次にもう一つの王国だが、こっちは『ドルクマン王国』で連合王国と一緒に国を立ち上げた。
その南側に『南の大森林』があるんだが、そっちがな、凶悪な亜人やモンスターが多く住んでいて、度々連合王国に襲撃していたんだが、その時に大活躍した英雄ドルクマンが建国した国だ。
王国と正式に同盟関係を築いており、南の大森林からモンスターが出てこないようにしている役割もあるんだ。
人口は約三百万人から四百万人と言われているが、どんどんと増えているみたいなので正確にはわからん。
まだ若い国だが、軍事と食糧資源に恵まれていてどんどんと力を付けている。
そして南の大森林のさらに西、連合王国から南の位置にエルフ・ドワーフの国がある。人族的には『岩と森』と呼称して連合国扱いにしている。というのも一応正式に国と認めて国交を開いているからだ。
ただ、エルフとドワーフは仲が良いのか悪いのかわからないところがあってな。お互いがお互いをひとつの国だと言い張っているところがある。
とまあ、ここまで駆け足に説明してきたけど付いて来てるか?」
「あ、ああ。流石に情報量がいっぱいで戸惑うことはあるけど。でもまあなんとかね。
どんどん続きを行ってくれ!」
「了解。とは言っても他の国のことはほとんど知らないんだけどね。なんせここまで情報が落ちてこない………。
まあ、説明するとだな、まずは2大帝国の話。地図で言うと北側あたりだ。
ひとつは『ハイデルマルク帝国』もうひとつは『クートル帝国』ふたつの帝国はとても好戦的で現在は停戦状態だが、ここ十数年戦争を行っている。本当に仲が悪い。
建国もほぼ同時で人口も約一千万人程度で国力としては拮抗している。
その両帝国のさらに北側にドラゴンの国がある。国と言っても名称も無くて、ただ多数のドラゴンが住み着いているというのが正しいところ。そんなに組織だっているわけでも無いしな。
ただし、ふたつの帝国とは交易が盛んで帝国としてはドラゴンをいかして取り込むことに腐心しているみたいだが、ドラゴンとしてはそんな人族をうまく利用して交易を有利にしようとしているからしたたかなもんだよ。
ドラゴンの国は他の人族の国からも広く認知されているから、国としての承認などは無いが実質的に国として扱われているような感じだ。
そして最後に『アマレイ共和国』がある。
この国は帝国や王国から権力闘争に疑問を抱いている人族が集まってできた国らしい。
人族としては変わっていて、政治のリーダーを一般から選出する仕組みをとっているんだ。
最近では各帝国と王国から権力闘争などで敗北した者、亡命者などが流れている。
あ、そうそう。この国でもうひとつ特徴があるのは通貨だ。通貨は各国とも発行していおり、それぞれレートが存在して交換しながら交易をするんだが、この国だけがレートが存在しない。
というか、他の国の通貨が実質使用不可なんだ。まだまだ若い国なので国内の支配を強めるためにも通貨政策も徹底的にやっているということみたいだ。交易をするためには現物が必要と言うことである。
まあ、オレはそれがどうして国の支配を強めることになるのかわからないんだけどな。
ざっと言うとこんなところだが、なにか質問はあるか?」
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