第9話 魔法の特訓後、簡単ですがファテマに料理を振る舞います。

「ファテマさーーーん! なんも起きないよーー!」

「バッカモォォーーン!!! 思わずズッコケそうになったわい!

 勇ましく石を持ち上げておったから思わず期待してしまったわい! 儂のドキドキの期待を返せ!」


「ごっ、ごめんなさい! でも、さっぱりわかんないです!」

「まあ、確かにそんなに簡単にできてもらっても困るがな。ほれ。心を落ち着かせよ。そして自分の中の魔力を感じるが良い。」

「………。ふぅ。」

「ふむ。良い感じじゃ。そしてそのまま石がボロボロと砕けるところを想像するのじゃ。」

 ファテマの言葉にうなずく比呂貴。その数秒後、



『バラバラバラバラ………。』

 石が崩れていく。



「わぁぁぁ! ファテマやったよ!」

「なぬぅぅぅ!」

 比呂貴が岩を砕くのを見て奇声を発して驚くファテマ。目が点になっている。

「儂とて初めて魔力を発動させるのに一週間は掛かったというのに!」

「ファテマ! 何となくコツがわかったよ! ありがとう!」

 そう言って比呂貴はすっかり変形してしまった崖のところへ行く。


「呪文だけど、別に即興でも大丈夫だよね。おそらく……。

物理も化学も得意ではないけど流石に基本的というか一般常識なところは知ってるからね。

 なので、雷は電気のプラスとマイナスで、風は気圧の高低で、ということは………。」

 なにやらブツブツと言いながら作業をする比呂貴。右手と左手両方になにやら電極が発生している。


『ピカッ!』


 辺りに閃光が走り、湖に打ち込まれる。


『ドンッ!』


 スパークが起き水中で大きな音とともに爆発が起きる。

 そしてすかさず比呂貴は空を割くポーズをとりながら言葉を呟く。すると、。


『ヒュルルルゥゥーーー!』


 爆発の水しぶきを風で河原まで吹き飛ばすのであった。

「どう? ファテマ? 昨日のファテマの真似をしてみたんだけど?」


「………!?」


 ファテマは目が点になり、空いた口が塞がらない。もちろん言葉も出てこなかった。

「あ、あれ? なんか間違ってたかな? ファテマ?」

 目を白黒させアワアワとしていたファテマだったが、ようやく落ち着いて比呂貴に向かってしゃべる。


「ふう。取り乱してしまってすまぬのう。しかし、ロキよ。お主はどこまで出鱈目な奴なんじゃ?

 大した訓練も無く魔法を使えたことも驚いたし、さらに属性以外の魔法についても呪文らしいものを唱えず発動させよってからに。まさに今、現実に起きとることが理解不能じゃて………。

 本当にお主はどうなっておるんじゃか………。」

 ファテマは呆れているような、ビックリしているような、感心しているような、感情が入り交じりどうして良いかわからないといったようである。


「えええぇ?

 オレはファテマに魔法について教えて貰ったことを自分なりに解釈して、そして言われた通りにしただけだよ?」

「いや、だからと言ってこんなにすぐに魔法は使えんよ。人族なら特にな。いやはやもう良い。飯にするかのう。

 ロキが吹き飛ばしたところに魚も跳ねておるしな。儂が拾って来てやるわい。」

「え? 待ってよファテマ。オレも一緒に行くから!」


 そしてファテマは昨日のように牧で火をおこして魚を焼き、お昼に食べた果物も取ってきて、そうしているとそこそこリッチな食事になった。

「ふっふーーん! 本日は魚のほかにいくつか材料がありますので簡単ではありますが料理させて頂きます!

 先ほど魔法で塩を精製しておきました。料理やってたのもあって砂糖と塩は化学式知ってたんだよねぇ。

 なので塩が出来ました。まあ、何回か失敗したんだけどね。お陰でなんかとても疲れてしまいましたが。

 でもそんなことはどうでも良いのです。ファテマに美味しい魚を食べて貰うんです。」


「えええい! 御託は良いからはよう食べさせておくれ! もう腹ペコじゃ!」

 ファテマは可愛く駄々をこねる。尻尾をパタパタさせているので相当なのだろう。

「まあまあ、ファテマさん。空腹も最高の調味料となるのですよ。で、ちょうどひとつ焼き上がったかな?

 まずは、魚の塩焼きになります。」


「ホントに待たせおってからに。

 昨日の魚に塩というのを付けて焼いただけだと思うが、そんなに違うもんかのう。まったく想像がつかんわ。」

 そう言ってファテマは魚を可愛らしくほうばる。


「ふううううーーーー!」


 ファテマは一言発して尻尾を激しく左右に振り、そのままモグモグと一匹瞬殺で食べてしまう。

「ロキよ! これは凄いではないか! 昨日のとはまた違って、これが美味しいってことか!

 あれ? これは昨日も言ったかのう?」


「そうでしょう。そうでしょう。塩は偉大でしょう!

 特にファテマは昼間の激戦でまだ疲れているからね。塩分も欲していると思うんですよ。見事に刺さりましたね。」

 そう言って比呂貴はドヤ顔でいる。続いて、

「さて次は、ここに酸味の強い果物があります。昼間も食べました。美味しかったですよねぇ。

 で、これをサッと絞って魚に掛けます。」


『ジュウウウゥゥーー!』


 魚の焼ける匂いと果物の酸味のある香りが辺りを包んだ。そしてそれをファテマに渡す。

「さて、次はどんな感じかのう?」

 ファテマは可愛らしくも大きな口で魚をほうばる。


「うっ! !“#$%&@!!!」


 一口噛んでファテマの尻尾は真っ直ぐ上にピンと立っている。

 そしてその魚は比呂貴に向かって投げられる。その後、ファテマは湖のところへ駆けて行った。

「あれれ? ファテマ的には魚や唐揚げにレモンはダメ派みたいだな。これは気を付けておこう。

 あと、このお魚さんは勿体無いのでオレが責任をもって美味しく頂きます。

 うーん、レモンは美味しいと思うんだけどなあ………。」


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