第10話 ファテマの妹に会いに行くぞ! ぶっちゃけ楽しみでしかない!

 二人は一通り食事を終え、そして雑談に入っていた。

「しかし、魔法も直ぐにモノにしよってからに。開いた口が塞がらんかったぞ!

 あれだけ魔法が使えるならドラゴン退治も手伝って欲しかったわい。もしかしたら完全に退治することができたかもしれんぞ。」


「え? あ、いや、でもまあ、あの時はまだ魔法とか良く分かってなかったんで………。」

「そんな本気に取るでない。冗談じゃ。」

「あ、そ、そうですね。

 ふっ、ふう。ファテマさんもそんな冗談言うんですね。かなり焦っちゃいましたよ。

 いやあれだな。冗談って言ってもこれってかなり本音だな。ファテマさんって怒らせたら怖いタイプみたいだ。気を付けよう………。」


「昨日から何回言ったかわからんが、お主は本当に何者なんじゃ?」

「え? そう真面目に言われると難しいんだけど、樹神比呂貴。三十六歳。仕事は商社マンです! 学生の頃は飲食店とケーキ屋さんでバイトしてたんで、料理もお菓子作りも得意です!

 っていうようなことしか言えないですが………。まあ、こんなことを聞きたいわけじゃないんだろうけどね。」


「確かに本当に魚は美味しかったぞ! 果物の奴はダメじゃったが。

 それに知識量じゃ。人族は高い知識や技術力を持っておるが、この世界の常識を遥かに超えた知識量を持っておるんじゃな。魔法を使うにしてもそれが感じれたわい。

 お陰でドラゴン。まあ、実際に退けたのは儂じゃが、それでもロキの高い知識力の裏付けがあったからこそじゃ。儂一人じゃあんな作戦は天地がひっくり返っても出てこんからな。

 こう見えて、本当に感謝しとるんじゃぞ。ありがとうロキよ。」


「き、急にどうしたんですか? そんな改まって言われると照れちゃうじゃないですか?

 じゃあ、」

「あ、じゃからと言って、その『モフモフ』とやらはダメじゃぞ!」

「ガーーーン。先に言われてしまった………。

 それと、二日目にしてすでにオレの行動を見透かされてしまっていることの脅威!」


「にしても、本当にすがすがしい気持ちじゃ。肩の荷も下りて、こんなに力が抜けた状態はいつぶりじゃろうて?

 いやはや、本当に疲れたよ。疲れたんじゃよ。もう大変じゃったからなあ。

 よし、じゃあ、どれだけ大変だったか話してやろう。しかと聞くが良い。」

「あれ? これってもしかして回想シーンに入っていくやつ?」



 とまあ、ファテマはこの一か月ほどの壮絶な日々を語ってくれた。確かに比呂貴の予想を遥かに超えて壮絶で、さらにとても悲しく辛い出来事だったようだ。

 しかし、この話はまた別の機会にということで。

 回想には入りません!



 翌朝。

「ほれ、ロキよ。いつまで寝ておるんじゃ? 起きてくれんのか? 今起きてくれるなら、昨日はダメじゃと言ったが尻尾をモフモフさせてやるぞ。」

 寝ぼけている比呂貴に対し、ファテマはにこやかにゆーらゆらと尻尾を振って煽っている。

「え? マジっすか。ファテマさん!? じゃあ、遠慮なく!」

「儂に二言は無い! ほれ、はようせい!」



『モーフモフ♪ モーフモフ☆』

『モーフモフ♪ モーフモフ☆』



 ふたりは合唱している。そして比呂貴はファテマに近づき尻尾をモフモフする。

「モフモフ、モフモフ。ああ、幸せっす。ファテマさん!」




「………、

 はよう起きんか! って、いつまで寝ておるんじゃ!」

 再びファテマに起こされる比呂貴。

「あ、あれ? モフモフは?」

「何を寝ぼけておる。どうせ汚らわしい夢でも見ておったんじゃろうて。」

 虫けらを見るようにボソッとファテマは吐き捨てた。


「あ、あれれぇぇ?

 いやー、マンガやアニメの見過ぎとはいえ、なんてベタな夢を見るんだよ。オレ。あのキャラクター達と同じことをするとは………。

 このシチュだとこうなっちゃんだね。テンプレ展開なんだね。これは抗うことのできない全次元での法則だということを理解したよ。

 うわー。自分でもなんかパワーワード言ってるわ。」

 そんな比呂貴は置いておき、昨日のうちに果物は準備していたので朝食を済ませた。


「魚もあったけど、流石に同じ果物ばっかり食べるのも飽きるよね。」

「贅沢な奴じゃのう。ロキは。」

「で、ちなみに妹さんのいるところにはどうやって帰るの? まさか歩き!?」

「儂の背に乗れ。ゆっくり空を駆けて帰っても夕方くらいには着くじゃろうて。」

「え? ファテマさんに乗っても良いの? フワッフワじゃん♪」


「ユニコーン状態だし、あまりフワフワでは無いと思うがな………。

 というかじゃ。本来ユニコーンはお主みたいなおっさんは乗せんのじゃぞ。ユニコーンが懐くのは昔から乙女と小童と相場が決まっておるからな。大変ありがたいんじゃから感謝して乗るが良い。」

「えええ? それってロリとショタってことじゃん。ファテマさんもえらく面食いですなぁ。」


「う、五月蝿いわい! お主のような変態と一緒にするでないわ!

 ほれ! 四の五の言わず、とっとと背中に乗れ!」

 ファテマはユニコーン状態になり、比呂貴に催促する。

「ほれ、しっかりと捕まっておれよ。振り落とされても知らんからな。」

「うぎゃーー、待ってファテマさん! これってどうやって捕まって良いかわかんないよー!」


 途中、何度か休憩を取りながらも比呂貴とファテマはファテマの妹がいるところへ向かった。

 そして夕方。

 いくつか宿屋が並んでいる小さな街に来た。都市と都市の間の要港となる街のようである。

「ふぁ、ファテマさん。運転っていうか移動が雑だよ。ううぅ。気持ち悪い………。

 暫くはユニコーンのファテマさんには乗りたくないよ………。」

「何を言っておるか。情けないのう。かなりゆっくり走ってやったというのに。」

 そう言いながら宿屋の一つに入っていき、フロントで部屋の確認をしてその部屋に向かっている。


『ガチャッ!』


「アイリ! 今帰ったぞ!」

「お姉ちゃんおかえり! もうめっちゃ心配したんだから!」

 部屋が開かれてそして感動の再開となる。


 感動の再開のはずだったが、


「で、宿の入り口からも見えてたけど、そのおっさんは誰? お姉ちゃん可愛いから変質者に襲われた?」

 早速アイリと呼ばれた少女によって洗礼を食らっていた。

「えっとまあ、そうなるよね。

 オレは絶対に怪しくないけど、人間のおっさんだったら怪しいと思われちゃうよね。」

 比呂貴は苦笑いでボソッと呟いた。


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