第7話 決戦! レッドドラゴンとの激闘②
「なんじゃ? あれだけの攻撃を受けながらまだ動けるというのか? なんとタフな奴じゃのう………。
しょうがない。このままでもどうせ魔力を喰らわれるだけじゃ。ならすっからかんの状態でもよかろう。
儂のありったけの魔力を奴にくれてやるわい。雷の状態でな!」
ファテマの最初の雷の攻撃は確かに効いている。まだ湖で混乱しているようである。ファテマは集中して魔力を溜め込む。
「唸れ雷よ!」
先ほどは閃光だったが、今度は大きな玉状の雷をドラゴンに向けて投げつける。まさにサンダーボールである。
『バンッ!!』
『バリバリバリバキバキバキッッバリバリッ!』
サンダーボールは着水とともに大きな破裂音を放ち、その後は爆竹のように水の中を跳ねていた。
爆裂の中心にいたドラゴン。もちろん激しく感電している。通常の生物なら間違いなく即死である。ドラゴンとて例外ではなかったらしい。動きを止め湖に沈んでいった。
「こっ、今度こそ打ち取ったかのう。どっ、どのみちもう魔力がすっからかんじゃしこれ以上は戦えんがのう………。」
ファテマはひっそり独り言を言いながらフラフラと地上に降りてくる。地上に降りた瞬間に幼女の姿になり地面に倒れ込んだ。
そこへ比呂貴が駆け寄ってくる。
「ファテマ! やったよ! めっちゃ凄いよ!」
フラフラのファテマとは対照的に比呂貴のテンションはマックスであった。そして倒れたファテマを抱いてそのままグルグルと回る。
「ロキよ。や、やめんか。こっちはフラフラなんじゃ。目が回ろう。」
「何言ってんの! ドラゴンをやっつけたんだよ? これって伝説なんでしょ? もうめっちゃかっこよかったよ! もうキュンキュンに惚れちゃったよ!」
「ヘヘッ。そうじゃろうて! というか、いい加減回るのやめんか。」
ファテマの言葉に比呂貴はそっと下ろす。ファテマは湖に向かってちょんと座った。比呂貴もその横に座った。
二人の戦いで来た時よりずいぶんと地形が変わっている。この風景だけで壮絶さを物語っていた。
「儂、ホントにあのドラゴンを倒したのじゃのう。」
ファテマが感慨にふけつつボソッと呟く。
「そうだよ。ファテマが倒したんだよ。下から見てたけど本当に凄かったよ。こんな可愛い子があのドラゴンと戦っているんだもん。オレ感動しちゃったもん!」
「ん?」
「ん?」
すっかり変形した湖だが、二人は水が盛り上がってくるのを感じた。
その盛り上がりはどんどんと大きくなって水しぶきとともに物体が現れた。もちろん先ほどのドラゴンである。
「えええええぇぇぇ!?」
「えええええぇぇぇ!?」
二人は声をハモらせて叫ぶ。
「も、もうこれ以上儂はダメじゃ。残りかすほどの魔力も出んぞ?」
「そんな! ファテマがダメならオレもダメに決まってんじゃん!!!」
二人は抱き合いながらドラゴンと対峙する。
「………。」
一瞬ドラゴンと見つめ合う。その後、ドラゴンは凄い勢いで飛び立っていった。さも、
『今日はこれくらいで勘弁してやる!』
のような捨て台詞を吐いていたかのようであった。
「ロ、ロキよ。これはどうなったんじゃ?」
「わっ、わからんが、ドラゴン行っちゃったね?」
「たっ、助かったぁぁぁぁ!」
「たっ、助かったぁぁぁぁ!」
またもや二人の言葉はハモり、そのままその場で崩れ落ちてしまった。
「もう腰砕けでガックカクだわ。異世界に来ていきなりドラゴンにやられてゲームオーバーとかどんだけやねんって思ったけど、なんとかこれからもやってくことができるんだね。」
「儂も人生いろいろとあったが、生まれて初めて『観念した』というのを感じれたわい。」
「でもまあ、ドラゴンもかなり懲りたでしょう? 当分は安心できるんじゃない? 良かったねファテマ!」
「たっ、確かにな。そう言われると、倒すことは叶わんかったが退けることはできたのじゃな。こ、これは我が一族的に歴史に名を残せる偉業じゃよ!
段々と実感が沸いてきおったわい!」
『ギュルルルゥーー。』
『ギュルルルゥーー。』
ここで二人のお腹がなる。
「ハハハハ! もうオレたちすっかり仲良しだね! ドラゴン退治に次いでお腹がなるのも一緒だし!」
「バッ、バカ者! これはちが………。」
「まあまあ。とりあえずお昼にしようよ。もうすっかり日も高いしね!
そういやファテマ。あっちの方に果物が成ってるの見たんだけど食べられるのか確認してもらえる?」
「くううぅ。ロキのペースなのは納得いかんが、まあ、確かにお昼を食べるとするかな。
その果物が成っているというところへ案内せい。」
そして果物を食べ軽く昼食を取った二人。その後、木陰で食後の休憩をしていたらいつの間にか寝ていた。二人とも昨日はあまり寝ていないし、ファテマにしてみては大激闘の後である。
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