第6話 決戦! レッドドラゴンとの激闘①

 翌朝。

 とりあえずぐっすりは寝れない二人であったが、眠い目をこすりながらもまずは比呂貴の作戦のため近くに湖が無いか探した。

 川を下っていくと程なくして大きな崖があった。川は滝になっており下は大きな湖となっているところを発見した。


「なかなかいい場所があったね。森の木もここまで来てなくて見晴らしも良いから魔法も使いやすいでしょう?

 決戦には持って来いのステージじゃん。じゃあここで作戦を実行しようか?」

 そして比呂貴はファテマに作戦の詳細を説明する。


「んじゃあ、後はよろしくね!」

「本当にこんなことするのか? というか、ドラゴン相手にこんなことうまく行くと思っているのか? 無謀じゃ!」

「大丈夫! ファテマなら余裕でできちゃうよ!」

 そう言って比呂貴は笑顔でそそくさと去っていった。


「くっ。ロキの奴め。作戦と言っても実行するのはすべて儂ではないか。言いたいことを言ったらとっとといなくなりよってからに。まさに丸投げじゃのう………。

 とは言っても流石に力仕事は人族では無理なのはわかる。でもなんじゃ、か弱き女の子にこんな重労働を課せよってからに。容赦の無い奴じゃのう。

 でもしょうがない。このひと月、散々ドラゴンに苦しめられて何の手も打てんかったんじゃ。どうせこのままだといつかはドラゴンの餌食じゃからな。うまく行くかはわからんがロキの作戦に乗ってみるのも良いじゃろう。

 さて、愚痴ばっかりこぼしとおらんで儂も働くとするかのう。」


 ユニコーンの姿になり空を駆ける。そしてドラゴンを探すファテマ。

 程なく空を駆けていると下の森のほうから否応なく感じる強大なプレッシャー。漏れ出る魔力だけでも周りは焼け爛れるようである。

 もちろんドラゴンである。何の迷いもなくファテマに向かってくる。ファテマもその魔力には気付いており肝が焼けそうであるが粛々と作戦の実行に入る。


 そしてファテマは比呂貴の言葉を思い出す。

『まずはドラゴンに見つかって、そのまま誘導されているとわからないようにここの湖に連れてきて!』

 ファテマはドラゴンに気が付き逃げるようにして例の湖に駆けていく。


『ふう。儂もなかなかの役者じゃのう。人族の国で芝居でもやるかのう。

 って呑気に言っておる場合ではない。ちょっとロキの呑気さが移ってしまったわ。』

 スカイドラゴンならともかくそれ以外の竜族ではユニコーン状態のファテマに追いつけない。

 ファテマは一度風を起こしてドラゴンを挑発する。少し風に煽られるが引き続きファテマを追いかける。


 さて、ファテマとしてもここからは一瞬たりとも気を抜けない状態となる。それはそのまま死に直結となるからだ。

 例の湖まで駆けてくるファテマ。ドラゴンも一緒に付いてきている。ここまでは順調に作戦を遂行している。そしてファテマは再び比呂貴の言葉を思い出す。


『湖まで来たら風の魔法で湖の水を使ってドラゴンに被せて! 或いは一度雷の魔法でドラゴンを驚かせて湖に突き落とすのでも良いよ。目的はドラゴンの身体に水を被せることね。』

『ロキは簡単に言うがそれが一番難しいぞ。でもここがチャンスじゃ。』


「風よ唸れ! そして捻じれよ!」


 ファテマの言霊に反応し、風が舞い上がりそして竜巻が起きる。湖の水も一緒に巻き上がりそしてシャワーのように周りに降りかかる。ドラゴンにも降りかかっていた。

「よし、成功じゃ! 早速雷を。」

 と思ったファテマだがここで想定外のことが起きる。



『グググルルゥゥ………。』

 空気が唸っている。ドラゴンが大型のファイアボールを吐こうとしていた。


「えっ? 嘘じゃろう?

 儂を真っ黒にしてしまっては魔力吸収もないじゃろ。今までこんなことは無かったのに。ドラゴンめ。とんだ短気を起こしよってからに!」

 焦るファテマをよそにドラゴンはファイアボールを放つ。



『ゴゴゴゴォォ!!!』



 空に轟音とともに火球が向かってくる。

「まっ、マズいぞ!」

 そう言ってファテマは上空へ駆け逃げなんとか直撃を免れる。

 その後火球はそのまま滝に向かっていき盛大に破壊する。


『ドカーーーン!』


 爆発音と爆風が吹きファテマはさらに上空へと吹き飛ばされた。

 さらに滝を吹き飛ばしたおかげで水しぶきを派手に撒き散らした。これによりドラゴンは水浸しになっていた。

「なっ、なんじゃ。突然のファイアボールでとても焦ってしまったがドラゴンの奴め、結局我がしたかったことを自らやってくれただけじゃのう。

 この好機を逃す儂では無いぞ! 今度はこちらの番じゃ。」


 そしてファテマは比呂貴の最後の言葉を思い出し自分に言い聞かせる。

『ドラゴンが水を浴びたらそこへありったけの雷をブチ込め! コツとしては水をかぶっただけならドラゴンに向かって放つ。ドラゴンが湖に落ちたならその周りに落とす感じだな。

 そう! ビリビリの感電だ!

 空気感電では不十分かもしれないけど、水を介した感電なら皮膚が固かろうが鱗があろうが伝導するからね。

 これはドラゴンだってかなりダメージになるはずだよ!』


「そういうことじゃしな。奴に特大の雷をくれてやろう!」

 ドラゴンも体制を立て直し、再びファイアボールを打とうとする。しかし、


「遅いわ! 稲光よ! ドラゴンを打て!」


 ファテマの言葉に空に閃光が走る。怒号とともに稲光はドラゴンに直撃する。


『ギャシャァァァーーー。』


 ドラゴンの何とも言えない悲鳴が響きそのまま下の湖に落ちていく。

「やっ、やったぞ! ドラゴンを倒したぞ! アイリ! みんな仇はとったぞ!」

 ファテマは興奮して空で地団駄を踏んでいたがそう甘くは無かった。

 湖に落ちたドラゴン。頭も身体もフラフラしていたが、湖に漬かった身体を何とか起き上がらせて体制を整えようとしていた。

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