窓、境界、憧れと不安

楠ノ葉みどろ

外の景色

 広い草原に、一軒の古い家がある。木造のそれはツタやコケに覆われているが、辛うじて廃墟ではない。生活のにおいが僅かに感じられる。

 その家に住む子供は、窓から外を眺めた。家屋の中の薄暗さとは対照的に、外の景色は燦々と輝く太陽の光に照らされ、背の低い緑が茂っている。


 子供はその景色に憧れた。そこへ飛び込みたいと思った。しかし、怖くて出られない。外に出たら、自分は弾けて消えてしまうような気がした。

 空を飛ぶ鳥も、咲き誇る花々も、遠くに見える山も、全てが美しくて、美しすぎて、手が届かない。


いつか窓から飛び立ちたい。いつか、いつか。

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窓、境界、憧れと不安 楠ノ葉みどろ @kusunohacherry

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