第8話 お嬢様、女神でございます。
(……聞こえますか……聞こえますか……私は今、あなたの頭に直接、語り掛けてます……)
このフレーズ、確かどこかで。
ああ、前世でわたくしがお世話したお嬢様が、若い時に夢中になっていた少女漫画ですね。確か、タイトルは「寺へ」とかおっしゃっておりました。多分、仏教をテーマにした高尚なお話しなのでしょうが、なぜか表紙にはヘッドフォンをした金髪の美少年が描かれておりました。
お嬢様は「ジョニーすてき!」と連発されていたので、きっと西洋に仏教が伝来して、禁欲的な環境での純愛を――
(ちゃんと頭の中に響いてるはずです。答えてください)
おっと、これは大変失礼いたしました。
ただそれは、わたくしの頭ではなく、お嬢様のものですから。
(その辺は、誤差の範囲と言う事でお願いします)
左様でございますか。
ところで、あなたはどちら様でしょうか?
(私は、どこにでもいる平凡な女神です)
なるほど。
魔法がある異世界ともなれば、女神も沢山いらして、至る所にいらっしゃるのですね。
(……一応、謙遜して申しておるのですが)
そうでしたか。重ね重ね申し訳ありません。
……しかし、その女神さまが、一体どのようなご用件で?
(そこなる、猫の事です)
猫、でございますか?
お嬢様の中に引き込まれる前を思い起こす。
……いえ、この部屋にはおりませんでしたが。
(おります。このままだと不便なので、半分ほど目覚めてもらいましょう)
すると、真っ暗だった視界に、丸くなって寝ている白い子猫が現れました。
子猫はすぐに目を覚まし、伸びをすると私の方を見ました。
「……んみゃあ?」
お嬢様の声でした。
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