第7話 密会でございますか、お嬢様

 ドアの取っ手がカチャカチャと鳴ってますが、器用にというか賢いと言うか、お嬢様がカギをかけてしまったので開きません。女中が呼びかける声もしますが、お嬢様は気に留めてないようです。女中が合いカギを探し出すまで、ドアは開かないでしょう。

 部屋は納戸のような場所で、一応掃除はされてますが、明かり取りの小窓があるだけで薄暗いです。部屋はそれほど広くなくて、入り口を除いた三方の壁にはいろいろなものが雑然と積まれています。


 困ったことになりました。可愛い女の子と、部屋に二人っきりです。いえ、わたくしには体がありませんし、そもそもお嬢様以外には見えていないので、その点は問題ありません。

 問題なのは、お嬢様の喋る猫語のほうです。

 床にぺたんと座り込むと、私の方に目を向けて、お嬢様は喋り始めました。


「にゃあ、みゃあ」

 いえ、わかりません。

「ごろにゃん」

 ほんとうに、わからないのです。申し訳ありません。


 やがて飽きてしまったのか、お嬢様の頭がこっくりこっくりと揺れ出しました。


 ……お嬢様、寝てしまう前にカギを開けないと。


「ふみゅー」

 こてん、と床に横になると、お嬢様は熟睡なさってしまわれました。

 どうにも寒々しい部屋の様子なので、風邪でもお召しになってしまわないでしょうか、心配です。

 と、またも体……は無いので視点が、お嬢様に引き込まれて行きます。あっという間に視界は暗転し、私はお嬢様の中で目を開き……ませんでした。


 眠るお嬢様の中で、私は意識を持ったまま。何ともややこしい状況に悩んでいると、頭の中に声が響きました。


 もちろん私のではなく、お嬢様の頭です。

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