第6話 少女たちの本性
なんだったんだ、今のは。
それしか言いようがない。
あぜーん
なんてありえなかったような擬音をつけたとしても違和感がないような気さえする。
元通りになる世界を傍観しながら、ボーっとするしかなかった。
ということで。
いま僕は、美少女たちとともにファストフード店にいるという、男子校の男子高校生にあるまじきことをしてしまっている。
幸い、今の時間だと部活中で、部活のない生徒はとうに帰っているような時間帯なので、誰とも遭遇しなかった。見られていたら明日は大炎上確定だ。
え? 何が“ということで”なのか分からない? 僕も知らん。
とりあえず僕は三人の美少女に囲まれて、ケ○タッキーのテーブル席に座っている。
こんな非常時でなければ大興奮していたであろうシチュエーション。しかし、それどころではなかった。
「さっきはありがとうございます」
「どういたしまして。聞きたい事がいっぱいあるんだけど、良い?」
「はい、良いですよ。でも、まずは自己紹介しませんか?」
チキンをかじりながら答える。
「それもそうね。私は、
どこか深窓の令嬢のような雰囲気を持つ青髪ロングの少女が答える。
「あ、僕は北原 優樹といいます。同じく高二です」
「あたしは
僕が自己紹介すると、どこか男っぽいオレンジ髪ショートカットの少女が言う。
「あ、私は
最後に、どこか……いや完全に典型的なおしゃれJKな緑髪ポニーテールの少女が自己紹介する。どこかおかしいところがあった気がするが、先に進めるとしよう。
「で、聞きたい事って何ですか?」
「いっぱいあるんだけど……まず、そもそもなんであそこにいたか、かな」
「え、どういうことですか?」
「ああ、そこからね。それは」
そこで、陽香が話し始める。
「あ~。あたしが説明するよ。ユウキ、だっけ? あそこには、魔法少女と化け物、魔法の生き物しか入れないって事は聞いたか?」
「う~ん、聞いた事があるような……」
「ああ。それなら良い。だが、お前は魔法少女じゃないだろう」
「あ……」
「お前は、何者なんだ」
「……」
そうだ。僕は魔法少女じゃない。だからといって、魔法の生き物でも、化け物でもないのは明らかだ。今まで疑問にも思わなかったけど、不自然だ。
僕は、一体、何者なんだ?
「……わかんないよ。何か、不思議なことでもあるのかな」
「そうか。まあ、謎は時間が解決するものと決まっている」
「そうなんですか?」
「多分」
「あー、この子かっこいい台詞言いたかっただけだわ。でも、確かにこれは誰にもわからないから後回しにしておくべきね」
「そうなんですか」
「そうなの」
僕は少し呆れながら、「はい。分かりました」と答えた。
「で、もう一つ。これは個人的な頼みごとなんだけどね」
玲奈が多少息を荒くしながら、話しかける。少しいやな予感がするのは気のせいだろうか。
「何ですか?」
「ちょっと、hshsしても良い?」
「はい?」
「あなたを見たときから、ずっと我慢してたの……」
「ちょっと、よだれが垂れてますけど……」
「うふふふふ。合法ショタだ……。hshsさせてぇ」
「えっ、ちょっ、まっ、やめっ」
深窓の令嬢のような雰囲気を放っていた彼女は、幼さを感じる少年が変態的に好き――つまりショタコンだったようだ。
「ちょっと、れーな。やめなよ、こんなところで。その子嫌がってるじゃん」
そこに今まで何も言わなかった凛が玲奈に話しかける。ブレーキ役か。
「助かったよ。ありがとう」
「いいのいいの。それよりれーな、後で映画館に行こっ! それでさ、一緒に帰って、いっぱいエッチなことしよっ!」
「うん……そうね……」
当の本人は困惑している。この凛という娘は女性相手の同性愛者――レズだったのか。
「もうあいつらは止められねぇや。好きなだけ愛し合え。お幸せに」
そんなふうに言う陽香。
「そうなんですか」
「ははは。ところでさ、あたしの裸見たい?」
「え? どういう意味……」
「というか、あたしの裸を見てくれ!」
「は?」
「あたしは変態な露出狂だ! 大衆の面前で剥かれる姿を想像したら、もういてもたってもいられなくってな! そして挙句には、こんな可愛い男の子に『うわあ、このお姉さんきもっ』とか言われて引かれるの! ああっ、もう我慢できない!」
「うわあ、この人やばっ」
「ああんっ! 最高っ!」
そういって彼女は、ブラウスのボタンをはずし始めた!
この人はマゾっ気のある露出狂だったらしい。
やはり全員変態とは、恐れ入った! これを作った作者は病気なのかな!? いや恐らく病気だ! 病院が逃げるレベルの!
これ出版不可能だ! たぶんメディアミックスも不可能だ! 夢見ていたのに! 〈物○〉シリーズじゃないけど! とりあえず投稿サイトさん垢BANしないでぇ!
本能が「逃げなくては」と急かしてくる。理性も「逃げろ」と叫んでる。
よし、逃げよう。
ケン○ッキーの店内から出ると、ちょうど友人と鉢合わせた。
今ちょうど部活が終わる時間帯だったのか……!
「ユウキじゃん。どうしたんだ? そんなに慌てて」
「変態が! 変態が!」
「本当にお前どうしたの? 頭打った? クトゥルフの神にでも会った?」
「イヤアアアーッ!」
「正気はどこ行った……って!」
振り向くと! さっきの変態JK三人組が!
「ショタァァァァ」
「エッチィィィィ」
「裸見てェェェ」
それを見た友人は僕の肩に手を置き、慰めるような口調で言った。
「グッドラック」
ビュンッ
そのまま駅のほうに走り去ってしまった。
「アゲオォォォォォ! 貴様ァァァァァ!」
僕は全速力で走ってバス停に行き、ちょうど止まっていたバスに飛び乗る。
「定期券で!」
「はいよ~。発車いたしま~す」
僕は定期券のことを言わなくてもいいのに、わざわざ言った。直後、バスのドアが閉まる。
そのまま発車。
僕は直帰した。
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