第5話 怪物と魔法少女


 ふぁ~。おはよう。

 ……朝になっても暗いアパートの部屋の中、虚空に声を出さずに挨拶。答える者はいな――

「おはよう、ユキちゃん。気分はどうだい?」

「ああ、おはよう。そのあだ名はやめてくれるかい? 女の子っぽいから……。――……んえっ!?」

 こいつ、死んだはずじゃ!?

「……そんなに驚かなくてもいいのに」

「いや驚くよ! 昨日死亡したはずの生き物がここにいたら!」

「あれは痛かったなー」

「ごめん! 僕も昨日反省してたから!」

 ……いや、そこじゃなくて!


 昨日の出来事は、もしかして、夢じゃなかった!?


 これも夢なら、早くさめてよ!

「残念ながら夢じゃないよ。これは現実さ。どうだい、ほっぺたをつねろうか?」

 ……マジかよ。

 って、ちょっと待て! 今モノローグと会話しなかったかこいつ!

「うん、テレパシー能力も完備なスーパーインテリジェント使い魔だからね」

 なんてことだ!

 それだったら昨日なんで僕は声に出して会話してたんだよ! 周りから痛い目で見られてたじゃないか!

「って、問題はそこじゃなくて! 何で昨日爆死したはずの君がここにいるの!」

「あ、昨日よりも二人称がマシになってる」

「そこじゃなくて!」

「はいはい。僕の体には、大量のクローンが存在しててね。一つの体が死ぬと、別の体に乗り換えられるのだよ! それが、僕の蘇りの真相さ!」

「恐ろしいよ!」

 ヱヴァ○ゲリヲンの綾○レイかよ!

「そーだよ(便乗)」

「モノローグに便乗しないで。……だが、何度でも蘇るのか。本当に怖いなぁ」

「それがボクSA☆」

「さーて、学校の準備」

「無視しないで(泣)」

 制服を着て準備する。パンツは――今日はあった……。よかった。

 着替えて、パンを食べ、出かける。

 何回か電車を乗り継ぎ、バスに乗り換え、おおよそ合計1時間30分。

 8時ごろに学校に着いた。

 ふう、今日はついてきてないはず……。

 そう思いつつリュックを開けると、案の定というか、なんと言うか……白いもふもふが入っていた。

「おはよー。また会ったね」

「正直もう会いたくなかった。というか、完全にデジャヴだこのシーン」

「そうだね。さあ、や」

「やらないよ。全く、何度言わせるんだ」

「せ」

「変態なのはよくわかっているから、そういうことは自主規制する方向で頼む」

「あ~、うん。まあ、わかった。もうセ○クスは控えよう。さて、ホ○セッ○スをやらないか?」

「もうだめだ、こいつ」

「らんらんるー」

「Dナ○ドのネタはやめようか! 著作権の人とニコ厨が暴走しかねない!」

「ぱらっぱっぱっぱー、アイラブニート」

「マ○ドナル○のCMみたいに変なこと言わないで!」

 そんな風に、他愛も無いアホアホな会話をするのだった。


 **********


 さて、もう放課後である。いま、帰りのバスに乗るためにバス停に向かっている最中である。

 まあ、今日は何も無く帰れそうだ――と思った瞬間、世界が変貌する。

「え、また!?」

「そーみたい。はやく、ヤろう」

「この淫獣!」

 とにかく逃げよう。そう思ったとき、目の前に怪物が出現した。

 巨大な、やはり何にも形容しがたい何か。それでいて、昨日とはまた違う。

 ちょうど、僕たちを見下ろす。そして、昂たかぶったかのように、叫び声をあげる。

「ウガアアアアァァァ! ヲトコドーシダァァァァァッッッ!」

 色々とやべええええええ!

「そーだよ! ボクらは男同士! いまから」

「何もしないから気にしないで!」

「チッ」

 いま舌打ちしやがった! 何をしようとしてたんだよ一体!

「ヲトコドーシ、サイコー! ソノママ! ア○ルニ! アレヲ! ち×こヲ!」

「なにこいつ!」

「これこそが、化け物最大の恐ろしさ、ボーイズラブ愛。男性が二人で並んでいるだけで18禁なシーンに脳内変換される」

「いやぁぁぁぁぁ!」

「ま、ボクはそれでもいいんだけど! むしろ大歓迎だけど!」

「こっちがいやだよぉぉぉぉぉ!!」

「さあ、はやく、魔法少女に!」

「ああ、そうし……いやだめだホ○セ×××なんてしたくない!」

 いろんな意味で、選択肢は「死」か「死ぬか」のDEATH or DIE!!!

「一応何か役に立ちそうなものは出しておこう! まともに殴られればめっちゃ痛い! あとキミは復活不可能だ!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 怖すぎる! やばっ! それって、両方とも死ぬってことか! まだこの年で死にたくなんて無いよ!

 僕は慌てふためく。その脇で、フェレットっぽいホモが虚空から何かを出す。

「なにこれ、ファンシーなステッキ?」

「さあ、はやく、それをおまたに当てて、オ○ニー」

「ああ、やめて。そう言うのは自主規制の方向で」

「ショタッ子ォォォォ! オナ○ィィィィ!」

「黙ってろ変態怪物」

「アアン! シンカンカクゥ」

「この世界はどうして変態ばかりなんだ!」

 みんな頭のねじがぶっ飛んでる。残念ながら僕には止められない。なんだか色々な意味でつらくなってきたよ。

 はやく誰か助けて……。


 そんな時、少女たちが颯爽と現れた!


「大丈夫!?」

「ア、ハイ」

「それはよかった! みんな! 一気に片付けるわよ!」

「ああ!」

「りー」

 そういって、そのアイドルのような衣装を着た少女たちは飛ぶ。

 オレンジのショートカットの少女は、体に不思議なオーラをまとわせて、怪物を殴る。

 緑髪のポニーテールの少女は、その本来人間に出せないようなスピードで、怪物を撹乱し、刀で攻撃する。

 そして、さっき僕に声をかけた青髪ロングの少女は、不思議な力を氷にして、怪物にぶつける。

 僕はそれを見ているしかなかった。

 目の前で巻き起こる不思議な現象。あれが、魔法……!

 あっという間に、怪物は衰弱した様子を見せる。

「いまだ! 行くぞ!」

『YES!』

 そういうと、三人は飛翔し、三人で光線を放つ。

 異口同音で――

『必殺!』

「怪☆光☆線!」

「デストラクション☆ビーム!」

「昇竜! 天☆牙☆烈☆波!」

 バラバラの必殺技名を言った。

 なんだこれ、いろいろとずれているような気がする! まず聞き取れない! そして、聞こえたものがどれも魔法少女と言うよりかは少年漫画の必殺技名だ! 特に最後のやつは幽遊○書に出てきていそうだ!

 放たれたものはどれも同じ魔法の光線。個性的過ぎる魔法少女達が放ったその光線は、意味不明な怪物の巨大な体を貫いた。

 ボゴォォォォォォン!

「モット、ヲトコドーシ、ミタカッタ、セ」

 チュッドォォォォォン!

 怪物はそのまま爆死した。


 なにこれ。


 僕の頭に浮かぶのは、それだけだった。

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