第4話 怪物現る!?


 はあ、はあ、やっと、放課後だ……。

 疲れた。直接帰ろうかな……でも、なんとなくリフレッシュしたい。

 そういう時は、学校の近くの駅の屋上庭園にでも行こう。そこは、誰も来ないし。


 さて、屋上庭園に到着である。

 駅ビルの最上階が屋上庭園になっていて、僕は時々訪れては休んでいっている。

 青空をボーっと眺めてリフレッシュ。疲労しきった心を休めて修復する。

「はぁ~。空がきれいだな……」

「そうだね。心が洗われるみたいだ」

「だね……って! まだいたのか!」

 横にいたのはフェレットっぽいホモ淫獣であった。

「なんて失礼な!」

「はぁ、まあいいか」

 そこで、この生き物が横から僕の肩に飛び乗ってきた。

「よっぽどお疲れのようだね。どうだい、気持ちよくしてやろうか」

「何で?」

「せ」

「あ、結構です」

「……チッ、慣れてきやがって」

「何か言った?」

「なんでもないです」

 そういって、こいつが肩から降りる。

 そんな他愛もないやり取りをしていたときだった。


 突然、背中に来る“ぞくり”とする感覚。

 世界が一瞬にして変貌を遂げた。

 絵の具をぶちまけたような、不気味なほど鮮やかな“青い空”、そこに絵に描いたようなコントラストで不自然な存在感を放つ“白い雲”。

 色彩がおかしい。ありえないほど鮮やかに、変な色使いに、ところどころはありえない形に。

 僕はフェレットのようなものに聞いた。

「ねえ、どういうことなの!?」

「ああ、魔法界から化け物が現れたんだよ。ここは停止世界。化け物と、魔法の生き物と、魔法少女しかいない世界」

「はぁっ!?」

 一瞬、意味がわからなかった。だが、その一秒後にわかった。

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 突然、何とも形容できない、巨大な怪物が目の前に現れた。

 あれが、さっき言っていた“BLを狙う化け物”か!

 ……今ので一気に熱が冷めた気がするよ。

 何だろう、BLを狙う化け物って。BLって、ボーイズラブのBLだろう?

 わけがわからないよ。

「さあ、早く契約を!」

 しかし、僕はその化け物より恐ろしい存在を忘れていた。それは――


 契約S○Xを迫る、淫獣!


 淫獣が迫ってきた! そのまま僕の足をよじ登ってくる!

 ああああ、やめて! 僕のズボンを脱がさないで!

 ちょっ、パンツまで脱がそうとしないでよ! やだっ! 僕のアソコがっ! 丸出しになっちゃうぅぅぅっ!

 僕は、とっさにその淫獣をつかむ。正気は消えかけていた。

「えっ、ちょっ、やめっ」

「ならばその前に僕のパンツを脱がすなあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

「いやあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 僕はそれを全力でぶん投げる。それは、近くに来ていた怪物にぶつかったようだった。

 ぴとっ

「うほっ、こいつはこいつでいいかも」

「うがががが」

「ほら、強がらずに僕に身を預けてごらん? 気持ちよくしてあげるよ」

「うっ、ががっ、がが……」

 怪物が戸惑いながら「えっ、ちょっと、やめてください……」的なことを言っているのをなるべく見ないようにしながら、僕はズボンをはいていく。

「ほら、気持ちよくなってきただろう……」

「うがっ、ががっっ、がぁぁっ」

 いよいよ何かを始めてしまったらしい。僕はズボンをはき終わり、パンパンと埃を払いながら、この場所を後にする。

「おお、そろそろイきそうだ。さあ、いっしょにっ、絶っ」

「うがっ、がっ、がっっ! うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 屋上庭園から下の駅ビルに行く階段を下りているとき、爆発音が鳴り響いた。

「なんだったんだろう、今の叫び声。断末魔、というよりは……」

 いや、考えないほうがよさそうだ。


 爆発音が止んだ瞬間、世界は元に戻った。

 誰もいなかったはずのところに、一気に人が出現する。

 気がつけば、おかしくなっていた色彩も元通りになっていた。

 さて、僕はバスに乗って家に帰ろう。

 今日の事は忘れよう。何が魔法少女だ。何が停止世界だ。何がBLを狙う化け物だ。

 明日からは元通り、普通の生活に戻ろう。そうだ、これは、夢なんだ。

 帰って寝れば、元通りなんだ。

 きっと、そうなんだ。

 その……はずだ。


 心の底ではわかっていたのかもしれない。あれは現実だったことも、もう元には戻れないことも。


 **********


「おかしいわ。ここに巨大な魔力反応があったのに」

「気のせいだったんじゃねーか?」

「違うと思う。さっき、停止世界が現れたじゃん? あの時怪物とは別に感じたもん」

 三人の少女達が、駅ビルの上の屋上庭園で話している。さっき優樹がいた場所である。

「あ、そういえばシュークリームもいないわね」

「そうだな。ホモメロン、どこに行ったんだろ」

「転生騎士デス・フェレティーヌ、ここ最近見かけないよね。確か、新しい魔法少女を探しに行くって言っていたけど」

「そうね」

 彼女らが個性的なあだ名をつけて呼んでいるものは、すべて同じあのフェレットっぽいホモである。

「あ、もしかしてその魔法少女候補なのかもね! その魔力反応」

「ああ、仲間が増えるのか! 楽しみだな!」

「それな!」

 彼女らは、現役の魔法少女達だ。

「だけど、疲れたわ。早く可愛い少年を見て癒されたいわ」

「そうだな~。早く脱ぎてー! 今ここで脱ぐぞ!」

「駄目じゃん。ところでれーな、今日はうちでお泊りしてかない? 一緒に寝よ~。とゆーか、いちゃつこう? エッチなことしよう?」

 ……一人は、ショタコン。一人は、露出狂。一人は、レズ。そんな仲良し三人組女子高生魔法少女である。


 優樹ぼくはまだ、運命を知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る