第13話 予期せぬ訪問者

 ガチャンという塾の入り口のドアが開く音がした数秒後、恐ろしい音をたてて教室のドアが蹴り開けられた。

 そこには身長180センチ以上ありそうな男が立っていた。顔を確認して言葉を交わす暇もなくその男は座っている私の顔をめがけてサッカーボールでも蹴りこむように思い切り脚をスイングしてきた。

 顔だけしか避けきれずに、思い切り上半身でその蹴りを受け、自分の身体が吹っ飛び、端っこに置いていたテーブルの脚の部分に前頭部をぶつけて、額から血がふきだした。

 すぐにこの男が章子の旦那だということが分かった。

「お前嫁に何してんだよ」

 わめきチラシながらその男は、自分の手で身体を防御する私に、何回も何回も固い靴で蹴り、上から拳で何度も殴った。

 私は、初めて自分の鼻の骨が折れる音や血が流れる音を聞いた。

 妻が縛られ、ローソクをかけられ、よだれだまを吸わされている状況を見て、男の怒りは頂点に達していた。両腕で頭を覆い、血を流しうずくまっていると、ようやく殴りつかれたようで男の動きが止まった。

「女をたぶらかして、500万円恐喝して! 人間の屑だなお前は!」

 言うや否や顔面に向かって至近距離から蹴りを入れた。

 まったくもって真実ではなかった。が、しかし、章子は口枷をされ目隠しもされて、何も言えないし動きがとれない。

 もし身体の自由があったとしても。この状況ならば何もできないだろう。

 とにかく男は異常で何をするかわからなかった。

「殺す!」

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