第40話 アップルと再会

「ブルーベリー、少し話をしたいんだが。いいか?」

「はい。どうぞ。アップル様。」

 アップルは、ストロベリーとの約束を果たすために、ブルーベリーとの話し合いの場を設けた。

「ブルーベリー、最近、あなたについて、悪い噂が聞こえてくるんだが。」

「それはどういうことでしょう?」

「お寿司屋で食い逃げをしたり、バック屋で万引きをしたというものなのだが。本当のことなのか?」

「オッホッホ!」

 突然、ブルーベリーが笑いだした。

「何がおかしいんだ?」

「あれは、お寿司屋さんとバック屋さんの、ご厚意です。別に私が求めたものではありません。オッホッホ!」

 ブルーベリーには、他人に危害を加えたり、罪を犯しているという罪悪感は、全くない。

「私のものを、私が好きに扱うことに何の罪があるというのですか?」

「え? 何か、仰いましたか?」

「いいえ、独り言です。」

 ブルーベリーが思い出したかのように話を切り出す。

「そうそう、私にもアップル様の噂話が聞こえてきますよ。」

「どんな噂ですか?」

「家族を食べた。」

「な!?」

 ブルーベリーの言葉に、アップルは一瞬、時が止まる。

「弟を食べ、姉を食べ、母親も食べたそうじゃありませんか?」

(な、なぜ!? それを!? あのことは、あの日の出来事は、私とジュライしか知らないはずなのに!?)

 アップルの心の中で葛藤が生まれる。

「どうなんですか? 本当の所は? アップル様。」

「た、ただの噂話ですよ。はっはっは。」

 笑って誤魔化すアップル。

「嘘おっしゃい!」

「!?」

 その時、ブルーベリーが大声を上げて、アップルを静止した。

「あの場にいたのが、自分だけだと思っているのか?」

 ブルーベリーの態度が高圧的に変わる。

「どうしたんだ? ブルーベリー?」

 アップルは、まだ事態を把握していない。

「おまえみたいな、ドジっ子、ダメっ子、使えない子、いらない子だったおまえが、実は権力欲を隠し持っていて、私たち家族を騙していただなんて。おまえはなんて恐ろしい子だ!」

「な、な、何を言っているんだ!?」

 アップルは、過去のトラウマも思い出し、顔に冷や汗が滲む。

「まだ分からないのかい? アップル? 私だよ! 私!」

「まさか!?」

 さすがの鈍いアップルも、どこか懐かしい話し方で気がついた。

「そのまさかさ! 私だよ! おまえの母親だよ!」

「ブルーベリーお母様!?」

 アップルは驚愕した。自分が食べて殺した、母親のブルーベリー王妃が目の前に現れたというのだ。

「アップル! よくも私を食べてくれたな! 絶対に許さないぞ!」

「なぜ!? ブルーベリーお母様が!? お母様は死んだはず!? それなのに、

どうして!?」

「分からないのかい? 復讐だよ、復讐。」

「復讐!?」

「おまえなんかに食べられて殺された私の恨みが、おまえに分かるか!? 私のカワイイ、ストロベリー王女も、メロン王子も、みんな、おまえみたいな出来損ないに食べられて殺されてしまった!? なんて可哀そうなんだろうね!? おまえに、この母親の悲しみが分かるものか!」

 ブルーベリー王妃は、悲しみの余り涙をボロボロと流す。

「お母様! 私だって、お母様の娘ではありませんか!」

「おまえなんか出来損ないは、私の娘なんかじゃない! 私の子供は、みんな優秀なのだ!」

「そ、そんな!?」

 例え、最低な母親であっても、子供は母親に必要とされたかった。母親に好かれていないと分かっていても、否定されたアップルの心は傷ついた。

「アップル、おまえを殺して恨みを晴らさないことには、私は死んでも死にきれない。その私の思いに、あるお方が私に恨みを晴らす機会を与えてくれたんだ。」

 亡きブルーベリー王妃の亡霊を助けている者がいるらしい。

「あるお方?」

「そうさ。邪神様さ!」

「邪神様!?」

 邪悪なるブルーベリー王妃の魂を現世に連れ戻した者の名は、邪神様だった。

「そうさ、邪悪な人間を次々と生み出していく、邪悪な神様だ。おまえみたいに、私だけは純粋で周りに合わせて、自分の手を汚す訳でもない、おまえのような者を嫌っている、偉大なる邪悪なお方だ。感謝しても、感謝しきれないね。ケッケッケ!」

 アップルが家族から嫌われていた理由がはっきりと分かった。

「アップル! 今度は私が、あなたを殺す番よ!」

 ブルーベリー王妃は、殺意に満ちた眼差しでアップルを見つめる。

「飛んで火にいる夏の虫ってね。もう一度、お母様を食べさせてもらいます!」

 アップルは、落ち着き緊張もせずに、母親に言い放つ。

「それはどうかしら? 私は、こんなものを持っている。」

 ブルーベリー王妃は、手に何かを持っている。

「そ、それは私の呪いの藁人形!?」

 ブルーベリー王妃が取り出したのは、アップルのDNA入りの呪いの藁人形だった。

「そう、これはあなたが必要なしと会議室に捨てたお人形。それを私が拾ったのよ。こいつの頭をデコピンします。」

「ギャア!?」

 誰にも触れられていないのに、アップルは誰かに頭を殴られた。

「どういうこと!? 誰もいないのに!? ま、まさか!?」

 アップルは何かに気づいた。

「そう、そのまさか。この呪いの藁人形は、あなたと連動しているのよ。この呪いの藁人形に長く伸びて鋭く尖った爪を突き刺すと、どうなるかしら? ケッケッケ。」

「キャアアアアアア!?」

 アップル、絶体絶命のピンチ。

 つづく。

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