第38話 アップルと呪いの藁人形
「それではアップル女王様の新商品開発会議を始めます。」
「おお!」
気がつけば、アップル世界征服対策会議は、アップルのキャラクター商品開発会議に変わっていた。
「はい。アップル様、鉄アレイはどうですか? 軽いものであれば子供でも遊べます。」
「私は子供にも絶大な人気を誇るからな。」
「こんなのもどうですか? アップル様、シックス・パッド! これで子供たちの腹筋も割れます。」
「私は子供たちに絶大な人気を誇るからなって、おい!? どうして筋肉ムキムキ商品しかないんだ!?」
キウイ軍部隊長は、筋肉を鍛えることしか思いつかなかった。
「こんなのはどうですか? アップル様、ペンライト。これなら可愛く、アップル様のイベントやコンサートでファンがライトを光らせて盛り上がることができますよ。」
「さすが科学班だ! 私はこういう商品を待っていた! 現実に楽しめて、実用性があり、利益も出そうだからな。」
「おまけに口を開けば、アップル様の口からレーザー光線が飛び出します。ビビビビビッー!」
「それもいいなって、おい!? どこでレーザー光線を使うんだ!?」
「魚を焼く時とか、スマホの充電もできますよ。」
「それいいなって、おい!? レーザー光線は外しとけ!」
こうしてイベント用のアップル様ペンライトは定番商品として、商品化が認められた。クリ班長は、1アップルをゲットとした。
「どいつもこいつもダメですね。」
「キワノ魔法部隊長は自信がありそうだな。」
「これです! 私の自信作! アップル様の呪いの藁人形です!」
「カワイイ! って、おい!? 誰が喜んで呪いの藁人形を買うんだよ!? 子供が泣き出してしまうじゃないか!?」
「冗談です。本命は、こちらです。アップル様のカワイイぬいぐるみです。」
「カワイイ! これなら売れるぞ!」
「小さな携帯ストラップは300円で、子供が買いやすく広がりやすいように、ぬいぐるみの小を1000円、中を5000円。大は売れないので、特別受注生産で1万円です。」
「さすが、キワノ! 伊達に魔法の呪文を詠唱していないな。」
「お褒めに頂きありがとうございます。ですが、本当のアップル様のカワイイぬいぐるみの威力は、ここからです。」
「まだ何かあるのか?」
「実は、パンツを履いていません!」
「死ね! キワノ! この変態! パンツくらい履かせてあげて下さい!」
「ギャア!」
こうしてアップルのカワイイぬいぐるみは、パンツを履くことになった。
「このアップル様のカワイイぬいぐるみにはアップル様の爪の垢が練り込まれています。」
「本当に爪の垢を練り込んだの!?」
「遺伝子、アップル様のDNAを練り込んだとしておきましょう。このぬいぐるみを大砲やレーザー、魔法の杖、ランドセル、カバンなんかに着けます。すると、神の使徒にもダメージが与えることができるという、優れものです。」
「素晴らしい! これで私のカワイイぬいぐるみの販促計画も完璧で、発売すればバカ売れの大ヒット間違いなしってことね。キワノに2アップルを与えましょう。」
「ありがとうございます。」
アップルは、アップルポイント制を楽しんでいる。
「ということで、アップル様のDNAを組み込んだ、ロボットを作りましょう。」
「グアバに、3アップル!」
「ズルい!? グアバのやつ、美味しい所を持っていきやがった!?」
「参謀の特権です。」
グアバは、3アップルを手に入れた。
「りんごの栽培でも始めようかな?」
アップルはポイントを払う代わりに、りんごを栽培しようと考えた。
「アップルロボを製作する段階で、パイロットの育成をキウイに。ロボットの作成をクリに。ロボットにアップル様のDNAを注入する作業をキワノにやってもらいます。」
「アップルロボ! なんて良い響きなのかしら!」
「どうしてもというのなら、パイロットを鍛えてやろう。」
「ロボットを作るのは、科学班しかできないでしょうからな。」
「呪いのかわいいアップル様ぬいぐるみの特許は我々が持っているのだ。」
「話がまとまった所で、会議を終わります。」
「みんな、よろしく頼んだわよ!」
「アップル女王様! 万歳! 万歳! 万々歳!」
参謀のグアバが各出席者の自尊心を守ったところで、無事にアップル新商品開発会議は終わって、会議室から全員が去って行った。
「あ、あ、アップル女王様だと!?」
そこに謎の女の声の主が怒りの形相で現れる。
「あのドジっ子、ダメっ子、使えない子、いらない子と言われて、蔑まれてきたアップルが女王様ですって!? 有り得ない! 絶対にあり得ない!」
なんと謎の声の主は、アップルに食べられて亡くなったアップルの母親、ブルーベリー王妃だった。
「私を食べ、愛する娘のストロベリー王女とメロン王子まで食べたアップルが、なぜ女王をやっているの!? 絶対に許せない! これでは安心して成仏もできないわ!」
ブルーベリー王妃の亡霊は、会議室の床に追っている何かを拾う。
「これでアップルを懲らしめてやる。エイ! ケッケッケッケ!」
ブルーベリー王妃は、規格外で忘れ去られていたアップルの呪いの藁人形を拾い、足を一本折ってみた。
「キャアアアアアア!?」
階段を下りている時、アップルの足に激痛が走り、バランスを崩したアップルが階段から転がり落ちる。
「アップル様!?」
「大丈夫ですか!?」
「医者を呼べ!?」
家臣たちは階段から落ちたアップルの元に駆け寄る。
「いたたたたたっ。だ、大丈夫よ。ちょっと足を踏み外しただけよ。」
「良かった。何事も無くて。」
「私は女王よ、階段から落ちたって平気よ。オッホッホ!」
「ハッハハハ!」
アップルが平然としているので家臣たちは安心した。
(危なかった!? もし私が神の使徒でなかったら、今頃、死んでいたかもしれない!? もう自己修復しているけど、確かに階段から落ちる前に、いきなり足の骨が折れた!? いったいどういうこと!?)
アップルも少しづつだが、自分の周囲に何かが起こり始めていることに気づき始めた。
つづく。
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