第25話 アップルと植民地政策

「これがアリコ!? ルウソが無くなっている!? まさに首都壊滅ってやつね!?」

 アップルたち、パンジャ国は、人道支援を名目に、海を渡り隣国のアリコにやって来た。

「それほどでも。」

「別に褒めてない!」

「アハッ。」

「笑って誤魔化すな。おまえ、どんどん人間化しているな。」

 アリコが滅んだのは、アップルの影武者、神の使徒ジャニュアリーであり、アップル2の仕業である。

「それでは、皆さん。食料の炊き出しと野営テントの設置、仮設のお風呂も作っちゃってください!」

「おお!」

 アップル女王の指示の元、パンジャ国の被災して困っている人々を助けるという名目のアリコ占領作戦が始まった。

「ああ!? 食料だ!?」

「うまい! こんなに美味しいご飯を食べたのは初めてだ!」

「キムチもありますよ! キムチですよ!」

「キムチだ!? ありがとう! 本当にありがとう!」 

 餓死しかけのアリコの人々は、久しぶりのご飯を食べて、生きている喜びを涙を流しながら噛みしめた。

「テントができましたよ! さあ! これで家族のプライベートもバッチリですよ!」

「ありがとうございます! これで雨風を凌げます!」

「困った時はお互い様! 気にしないで下さい!」

 アップルも人道支援のお手伝いをする。

「お姉ちゃん、ありがとう。」

「こら!? 女王様に向かって何という口を!? 申し訳ありません、パンジャ国の女王様。」

「いいんですよ。私なんて、ただのお飾りですから。もう少しでお風呂もできるから、ちゃんと順番を守って入ってね。」

「お姉ちゃん、ありがとう。」

 子供から見ると、アップルは女王ではなく、ただのお姉ちゃんに見えた。

「それにしても、戦争って、酷いんだ。」

 アップルは、破壊された街並みを見て実感していた。きっと栄えていた街が戦場になったことで、一瞬で滅んでしまった。そして救いを求めることしかできない人々。

「私の国は、私が守らなくったちゃ。」

 アップルは改めて固い決意をする。その姿には、かつてドジっ子、ダメっ子、使えない子、いらない子と家族にバカにされていた姿はなかった。

「それにしても、こんな地上で私とジュライのエデンを築けるのかしら?」

 ちょこっと不安になるアップルであった。


「首尾はどうだ?」

 その夜、アップルは家臣たちと会議を開いていた。

「どうもこうもありません。我々の完全勝利です。」

「敵は戦意無く、白旗をあげています。」

「文化が無くなるというのは、こういうことなんでしょな。」

「アリコの建物を解体する手間が省けたというもの。直ぐにパンジャの建物を建てて土地を占拠してしまいましょう。」

「これこそ植民地制作。人とは自分で生きるより、他人に従って生きる方を選ぶ、楽したがる生き物である。」

 家臣たちは不戦勝を喜んでいました。この時、アリコ人1000万人をアップルは支援していた。他に支援が届かない、支援を知らない人、誰からも支援を受けたがらない人が、1000万いた。

「アリコの人々は、パンジャの民になってくれるだろうか。」

 この時、アップルたちは他国を占領することしか、頭にはなかった。


「出ていけ! ここはアリコ人の土地だ! よその国の者は出ていけ!」

 案の定、支援を受けないアリコ人たちの抵抗を受けることになった。

「ちょっと!? 私たちは困っているあなたたちのために、あなたたちを助けようとやって来たのよ!?」

「それがどうした! おまえたちは国の侵略者だ! おまえたちの思い通りにさせるものか!」

「そうだ! そうだ!」

「アリコの国は、アリコ人で復興させる!」

「帰れ! 帰れ!」

 無支援のアリコ人から石や瓦礫を投げつけられ、アップルたちの建物建設は、順調には進まなかった。

「なかなか手強いわね!? 退け! 全軍撤退だ!」

 アップルたちは、撤退を余儀なくされた。


「困った。どうすればアリコ人は抵抗をやめてくれるだろうか?」

 アップルは、女王として困っていた。

「一層のこと、抵抗する邪悪な人間は食べちゃおうか?」

「それがいい。たまには血と肉を補充しなくったちゃ。」

「そうだな。神様は食べて人間の数を減らせと言っていたが、殺して減らすのも同じだからな。」

 その時、参謀のグアバがアリコ人を連れてやって来た。

「アップル様。」

「なんだ? グアバ。」

「はい。我々が生活支援しているアリコ人たちが、現地に残っているアリコ人をを説得したいと申し出てくれています。」

「おお! まことか! それは助かる!」

 アップルが人道支援している親子もいた。

「お世話になっているのは私たちです。少しでもご恩を返したいと思います。」

「お姉ちゃん、いつもありがとう。」

「どういたしまして。こちらこそ、ありがとう。」

 アップルは、人に優しくすれば、人種の壁を超えて、人から優しさが帰って来ると実感する。


「ま、参りました。同胞が言うから女王様を信じてみよう。」

「ありがとうございます。」

 アップルは、アリコ人の助けを借りて、アリコ人の抵抗を抑えることができた。

「さあ! 食べ物も住む所もあるわよ! お風呂にも入ってちょうだい!」

 降伏したアリコ人の胃袋をしっかりと掴みにかかるアップル。

「なに!?」

 ドドドドドドドドド-! その時、大地を引き裂くような破壊音が聞こえてくる。

「あ、あ、あれは!? クイーン!?」

「あれも神の使徒だというの!?」

 現れた神の使徒は、四方八方にエネルギー破をバラ巻いていた。

 つづく。

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