第26話 アップルと第3の神の使徒

「退避! 全軍、退却しろ! 人々を守りながら退却だ!」

 アップルは瞬時に危機を察知した。それ程、第3の神の使徒はヤバイと感じたのだった。

「アップル2!? あなた、キングでしょ!? あいつより強いのよね!? 何とかしなさいよ!?」

「無理です!? チェスでは、キングよりも、クイーンの方が強いんですから!?」

 アップル2、神の使徒ジャニュアリーは、神様がチェスの駒のキングに命を与えたものであった。

「アップル様は、避難民と一緒にお逃げください! ここは我々が!」

「キウイ、クリ、キワノ。無駄死にはするなよ。」

「お任せください。グアバ、早くアップル様を連れて逃げろ。」

「分かった。さあ、アップル様。」

 しんがりを軍部に任せて、アップルは逃げるのであった。

「大砲で一斉砲撃を仕掛ける。撃て!」

 ドン! ドン! っと、大砲が第3神の使徒を攻撃する。

「化け物か!? ビクともしないだと!?」

 命中するも大砲如きでは、神の使徒にダメージを与えることはできなかった。

「科学班! レーザー光線発射!」

 続いて科学班がレーザー砲で、神の使徒を攻撃する。

「避けた!? 何というスピードだ!?」

 クイーンの移動性能はチェスの駒でも1番の存在である。

「どけい! どうせ初級のファイヤーやブリザードは効かないだろうから、新魔法を食らわしてやる! 貫通魔法! ペネトレーション!」

 光の矢のような魔法が飛んで行く。しかし、クイーンは高速移動で、光の矢を簡単に避けてしまう。

「かわされたぞ!? どうするんだ!?」

「大丈夫。ペネトレーションは、追尾型だ。」

 光の矢がブーメランのように、背後からクイーンを襲う。

「やったー! 命中だ!」

 しかし光の矢は、神の使徒の体に当たると同時に折れてしまった。

「そんな!? バカな!?」

 大砲、レーザー、魔法、ありとあらゆる人間如きの攻撃では、神の使徒にダメージを与えることはできなかった。

「ドドドドドドドドド!」

 クイーンの攻撃が始まった。四方八方にエネルギー破を打ちまくる。

「ギャア!?」

「うわあ!?」 

 パンジャ国の兵士から、アリコの避難民まで、無差別に攻撃を神の使徒。

「このままでは!? こうなったら最後の手段、アトミックボムで!?」

「波動砲のエネルギー充電を始めろ! 撃たずして、死ねるか!?」

 軍部と科学班は、最後の禁じ手を行おうとしていた。

「ダメよ! アリコの人々が避難するまでは、環境汚染のある攻撃は禁止します!」

 その行き過ぎた行動を止めに入る女王アップル。

「しかし!? このままでは我々は全滅してしまいます!?」

「それでも待つのよ! 人の命は尊いものなのだから。」

 アップルは、心を通わせたアリコの人々を救いたいと願った。

「みんな! 早く逃げて!」

「アップル様! 一大事です!」

 参謀のグアバが慌ててやって来る。

「どうしたの?」

「大変です!? アップル様!? あの神の使徒は、大国ナイチャを襲ったのと同じやつです!?」

「なんですって!?」

 大国ナイチャとは、人口13億、首都はイハンシャである。世界でも1,2を争う経済と軍事力を持った帝国である。

「ナイチャは、奴のために人口10億人以上が死亡!? 首都イハンシャは、跡形もなく吹き飛んでいます!?」

「なんですって!? しか言えないじゃない!?」

 これにより、異世界キュウチの人口70臆人のうち、分かるだけで10億人は減らされて、世界人口は60臆人になった。

「世界を滅ぼす邪悪な人間が10億人も減ったのか、きっと神様も喜んでいるだろう。うんうん。」

「私たちも滅ぼされるわよ!?」

「私たちは神の使徒だから、殺されることは無いと思うんだけど?」

「それもそっか。心配して損しちゃった。アッハッハッハ。」

「どちらもアップルの意志が入っているから、似たり寄ったりの性格だね。」

 アップルとアップル2の、のんきさに呆れるジュライ。

「こうなったら、私が出るしかない!」

「ダメだよ。アップルが守らないと、アリコの人々が殺されちゃうよ。」

「クソッ!?」

 アップルは動くに動けなかった。

「大変です!? アップル様!?」

「今度は何!?」

「アリコ人が多過ぎて、全員が船に乗ることができません!?」

「なんですって!? 3発目!」

 パンジャ国の船では500万人位しか乗ることができなかった。このままではアリコ人1000万人を見捨てていかなければいけない。

「乗せてくれ! 俺は死にたくない!」

「おまえ降りろ!? 助かるのは俺様だ!」

「お母さん、私たちは船に乗れないから、ここで死ぬの?」

「これも運命だよ。死んだらあの世でも親子しようね。」

 パンジャの船に乗り口は、避難してきたアリコ人でパニックになっていた。人とは、他人を犠牲にしてでも、自分だけは助かりたい生き物であった。

「私にはできない! 罪のない人たちを見捨てることはできない!」

 態度の悪い邪悪な人間は、後でおやつ代わりに食べようと思ったアップル。

「やはり! ここでクイーンを叩くしかないわ! いくわよ! ジュライ!」

「おお! アップルのためなら、相手がクイーンでも怖くないよ!」

「これが愛の力ってやつよ。」

 アップルとジュライは、強敵の神の使徒クイーンに戦いを挑む覚悟をする。

「ちょっと待った! あるわよ。全員を助ける方法が。」

 その時、アップル2が声を上げる。

「そんな夢みたいな方法があるというの?」

「じゃーん! ノアの箱舟です!」

 アップル2は、神様にもらった救助艇、大型客船のノアの箱舟を出す。 

「あるなら最初から出さんかいー!!!」

「ヒデブ―!?」

 アップルの神の左アッパーが、アップル2に炸裂した。

「どうして殴られるの? 私は助け舟を出しただけなのに。クスン。」

「さあ! みんな! ノアの箱舟に乗ってちょうだい!」

 アップルは、アリコ人を全員、ノアの箱舟に乗せることができた。

 つづく。

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