第22話 アップルとアップル2

「アップル様が2人!?」

 アップルの居城、フルーツ城に女王アップルが2人現れた。

「どういうことだ!? どちらが本物のアップル様だ!?」

「アップル様が2人!? どちらもカワイイです。」

「ご主人様が2人ということは、私のお給料も2倍ですか!?」

「なる訳ないでしょ!」

「クスン。」

 アップルが2人いることに、執事のアケビ、メイドのアセロラとアボカドは驚いて戸惑った。

「どちらが本物の私か分かる?」

「当てたら、お給料2倍でもいいわよ!」

「本当ですか!? こっちです! こっち! 左がアップル様です!」

「その心は?」

「きっと心の優しい純粋で清らかなアップル様はメイドの私が選んだ方を正解として下さるはずです!」

「せ、正解。」

「やったー! これで給料4倍だ! イヤッホウー!」

 アボカドのお給金は4倍になった。

「いいんですか? アップル様。」

「あそこまで私を信じて言ってくれているのだから、無下にはできない。」

 褒められることに慣れていないので、少しアップルは照れていた。

「ということで、この子は、アップル2。私の影武者よ。」

「影武者ー!?」

「そう、最近、私も有名になり過ぎて、命を狙われる可能性もあるかもしれない。そこで思いついたのが影武者です。」

 影武者といっても、神の使徒のジャニュアリー、アップルのエキス入りである。

「初めまして。アップル様の影武者のアップル2と申します。アップル2号、プル2、好きな呼び方で呼んでください。エヘッ。」

 ジャニュアリーは、アップルのおかげで、アップルの姿と声を手に入れた。

「執事のアケビです。宜しくお願い致します。」

「メイドのアセロラです。シャドウウォリアーですね。カッコイイ。」

「同じくメイドのアボカドです。お金以外の相談にはのりますよ。」

「皆さん、ありがとうございます。」 

 アップル2と執事とメイドの挨拶が終わった。

「あなたが私の運命の人ですか?」

「ええー!?」

 いきなりアップル2が執事のアケビを見つめて質問する。

「ちょっと!? いきなり何を言い出すのよ!?」

「だって、アップル様が言ったじゃないですか? 私の運命の人がどこかにいるんだって。だから私は運命の人を探します。」

 アップル2こと神の使徒ジャニュアリーは、自分の出会うべき運命の人を探していた。

「そんな運命の人だなんて。私は由緒正しき代々フルーツ家に仕える執事の家系の者。そんなアップルお嬢様と、あんなこととか、こんなこととか想像したこともありません。エヘへッ。」

「このエロ執事!? 執事如きが、お嬢様である、この私と、あんなことや、こんなことを想像していたというのか!? 許さん! 断じて許さんぞ! 死をもって償わせてやる!」

「ギャアアア!?」

 執事アンズは、アップルの攻撃を受けて、ピクピクしていた。

「じゃあ、あなたが私の運命の人ですか?」

「わ、私ですか!?」

 今度は、アップル2はメイドのアセロラに問いかけた。

「やめい! 運命の人は探すんじゃなくて、必然に出会うものなの!」

「そうなんですか? 知りませんでした。」

 アップル2は、運命の人とは出会う時には出会うものと知った。

「あの、私なんかでいいんですか?」

「え?」

「別に女性が好きということはないのですが、アップル様に言われたら、言いつけに従ないとメイドをクビですよね。私、ノーと言えない女なんです!?」

 アセロラはメイド服を脱ぎ出そうとする。

「この変態メイドが!? メイド如きが、ご主人様である私と同性愛を楽しもうなどと100年早いわ! 私を小百合ちゃんにするんじゃない!?」

「ギャア!?」

 メイドのアセロラは、アップルの攻撃を受けて、ピヨピヨしていた。

「まったく、うちの執事とメイドには、普通の人間はいないのか!?」

 アップルは執事とメイドにお怒りだった。

「アップル様。」

「今度は何?」

「ついに私の運命の人と出会ってしまいました!」

「どこにいるの?」

「ここです。この人。」

「え? ええー!? アボカド!?」

 アップル2が指さしたのは、楽しそうに4倍になった給料を数えているメイドのアボカドだった。

「どうしてアボカドなのよ!?」

「出会いました。エロと変態を乗り越えて。あの人は私の目の前に現れたのです! これを運命の出会いと言わずして、何と言いましょうか!?」

「それは、この城に執事とメイドが3人しかいないからだと思うわよ。世界は広いのよ。きっと、この世界のどこかに、あなたを待っている人がいるはずよ。」

「いいえ! あのお金を数える笑顔が素敵なメイドさんこそ、私の運命の人に違いありません!」

「やめなさい! あんなのと付き合ったら、借金を背負わされて、キャバクラや風俗に売り飛ばされるに決まっているわ!」

「酷い。アップル様。普段から私のことをそんな目で見ていたんですね。ショック。」

「ご、ごめんなさい!? アボカドさん!? 別にそんなつもりで言ったんじゃなくて!?」

「私なら、アップル2ちゃんを芸能事務所に売って、人気アイドルか、人気AV女優にしてみせます!」

「人身売買かよ!? メイド如きがご主人様を売り飛ばすことを考えていたとはいい度胸だ!? おまえの給料は半額しか払わないから!」

「それだけはお許しを!?」

「言語道断!」

「ギャア!?」

 メイドのアボカドは、アップルの攻撃を受けて、クルクルしていた。

「どいつもこいつもよくしゃべる。粛清してやる。再教育が必要だな。」

「どこにいるのかしら? 私の運命の人は。」

 どこまでも広がる青い空を眺める、アップル2であった。

 つづく。

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