第21話 アップルと天空の女王
「ええー!? 私に神の代理人である、アップル様を食べろというのですか!?」
紙の使徒ジャニュアリーは、アップルの提案に驚いた。
「あなたが自分で体を小さくできないというのであれば、私があなたに食べられて、あなたの中から神の願いとして、体を小さくすることを願います。そうするしか、ジャニュアリー、あなたを救済する方法がありません。」
「でも!? それではアップル様の身が!?」
「そうだよ!? アップル!? もし失敗したら消化されて死んじゃうよ。」
アップルの秘策に、ジュライとジャニュアリーはアップルの身を心配する。
「私の命と引き換えに地上の人々が助かるというなら、喜んで私の命などくれてやる! これが神としての私の覚悟よ!」
「ま、眩しい!? 正に神の光だ!?」
アップルの覚悟を空にいる神も支持しているかのように温かい光を放つ。
「分かりました。いいんですね? 本当に食べて?」
「いいんです。さあ、私を食べなさい。煮るなり焼くなり好きにすればいいわ。」
アップル自分の体に塩を振り始める。
「あの、アップル様、何を?」
「美味しく食べられるように塩を振りかけてます。あ!? 塩より、ジャムとか、はちみつの方が良かった? 甘党なの?」
「そういう問題では!?」
「ジュライ、食べられる時は一緒よ。」
「僕たちは食べられる時も一心同体だ。」
ジャニュアリーがアップルを食べる準備が整った。
「それでは、いただきます。」
大きな口を開けてアップルを食べようとする。
「いやー!? 痛いのはいやー!? せめて痛くないように丸飲みにしてー!?」
「いやだー!? 死にたくないよー!? せっかく命をもらったのにー!?」
もちろんアップルとジュライは見苦しい命乞いをする。
「食べるの止めましょうか?」
「いえいえ、た、た、た、た、食べて下さい!?」
「うえ~ん!? 僕の人生は、ここで終わりなのか!? 食べられて死ぬぐらいなら、チェスの駒の方がマシだった!?」
「どうも食べにくいんですけど?」
「いいから! 丸飲みにしちゃって!」
「は~い。」
「ギャアアアアア!?」
パクっと、ジャニュアリーは、アップルを丸飲みにした。
「うおおおおおー!? 私の中にアップル様が溢れてくる!?」
アップルとジャニュアリーの精神が一つに交わっていく。
「落ち着きなさい。ジャニュアリー。」
「アップル様!?」
「私の意志が、あなたに話しかけています。」
「意志!?」
「そうです。私の地上に住む生きとし生けるものを救うという神の意志が、ジャニュアリー、あなたに話しかけているのです。」
「そ、そんなことができるなんて!? アップル様は、やはり神様なのですね!?」
「私如きは、ただの神様の代行者でしかありません。さあ、ジャニュアリー。まずは、あなたの体を小さくしましょう。」
「はい。でも、どうやればいいのですか?」
「私が願います。神の名の元に命じる! ジャニュアリーの体よ! 小さくなれ!」
「うおおおおおー!? か、体が小さくなっていく!?」
大きな神の使徒ジャニュアリーの体が、徐々に小さくなっていく。
「ジャニュアリー。」
「はい、アップル様。」
「私がジュライに出会ったように、あなたもあなたの出会うべき者に出会いなさい。」
「私の出会うべき者?」
「そうです。あなたを必要とし、あなたを受け入れてくれる純粋な者に。」
「きっと、いますよ。あなたが、あなただけが出会わなければいけない運命の者が。」
「運命の者!?」
「それまで私が、あなたをサポートします。今から私たちは友達よ。」
「と、友達!? そんな畏れ多い!? 私とアップル様が友達だなんて!?」
「大丈夫よ。私とジュライを見て。仲良く暮らしているわ。」
「は、はい。宜しくお願い致します。」
アップルと神の使徒ジャニュアリーは友達になった。
「ああー!? もうおしまいだ!? アップル様も食べられてしまった!?」
「この世の終わりだ!?」
「お母さん!? 私たちは死んじゃうの!?」
女王アップルが、ジャニュアリーに食べられたのを見た人々は、自らの死を覚悟した。
「ま、眩しい!? なんだ!? 光り!?」
「大きな化け物が光を放っている!?」
ジャニュアリーの全身から神々しい光が放たれる。
「空飛ぶ城が消えていく!?」
大きなジャニュアリーの姿が光に見込まれていく。
「あれを見ろ!? アップル様だ!?」
光の中心に人影が現れる。空飛ぶお城に呑み込まれたはずのアップルだった。
「もう魔物は天の神の光に消滅しました。これも女王の私を信じて祈りを捧げてくれた皆さんおかげです。ありがとうございます。ニコッ。」
アップルは上空から地上にいる国民に呼びかける。
「おお! 俺たちは助かったんだ!」
「アップル様が助けてくれたんだ!」
「お母さん、私たち助かったのね!」
「そうだよ! 私たちは生きていていいんだよ!」
「神だ! アップル様は神様に違いない!」
「天空の騎士・・・いや、天空の女王様だ!」
「アップル様は、お空で黒タイツに仮面をつけて鞭を打ってロウソクを垂らすの?」
「アップル様! 万歳! アップル様! 万歳!」
国民は自分の命が救われる奇跡を目の辺りにして、女王アップルを神の様に拝み倒すのであった。
「人間とは、私が右と言えば右を向き、左と言えば左を向く、従順な生き物だ。飼いならしてやるぞ! 我が国民共! 人間如き! 私に従っていればいいのだ! ワッハッハー!」
神の使徒ジャニュアリーの侵攻から、パンジャ国を救ったアップルの心の声は、国民たちの希望や期待にかき消される。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。