第20話 アップルとジャニュアリー
「空飛ぶお城如きが調子に乗ってんじゃないわよ!」
「グオオオオー!」
空飛ぶ城は大きな口から拡散される怪光線を吐き続ける。
「キャアアア!」
「助けてくれ!」
怪光線が街の住人を、建物を次々と破壊していく。
「アップル!? このままじゃ、首都が壊滅しちゃうよ!? 何とかして、空飛ぶお城を倒さないと!?」
「方法が無い訳じゃないよ。」
「あるの?」
「あるわよ。とっておきのヤツが。」
アップルは、大きな神の使徒を倒す方法を思いついた。
「ねえねえ、ジュライ。」
「なに? アップル。」
「私たちの愛は何があっても永遠よね。」
「そうだよ。僕は、いつも君の側にいるよ。死ぬ時だって、いつも僕たちは一緒さ。」
「ありがとう。ニコ。なら一緒に死にましょう。」
「え?」
アップルは、勢いよく空飛ぶお城を目掛けて突撃を始めた。
「ええー!? アップル!? このままじゃ食べられちゃうよ!?」
「そうよ。食べられに行くのよ。エヘッ。」
「ええー!?」
「昔からデカ物の弱点は、腹の中って、相場が決まっているのよ!」
「食べられたとしても、アップルと僕の愛は永遠に不滅です!? ギャアアアアア!?」
ゴックンとアップルは空飛ぶお城の神の使徒の神の口に飛び込んで食べられてしまった。
「ここがデカ物の中?」
「うわあ!? なんだか自分の精神空間を見ているみたいだ。」
「神様が作ったんだから、基本構造は、ジュライと同じでしょ。」
「そうだね。アッハッハッ。」
ジュライは、困った時は笑って誤魔化すということを覚えた。
「君たちは誰? どうして私の中にいるの?」
そこにチェスの駒のキングの姿をした神の使徒が現れた。
「私はアップル。」
「僕はジュライ。同じ神の使徒だよ。」
「私の名前は、ジャニュアリーだ。ジュライ、君も神の使徒なんだね。」
「そうだよ。僕たちはチェスの駒だったけど、神様に命を与えてもらったんだよ。」
「元気そうで何よりだ。ところで君には、生命反応を2つ感じるんだけど、どうなっているんだい?」
「僕は神様がおっしゃったように、人間を食べたんだ。」
「なんだって!? 人間を食べた!? 君は人間を食べたというのかー!? お腹痛くならなかった?」
「だ、大丈夫だよ。この通り僕は元気にピンピンしているだろ。」
「本当だ。じゃあ、人間って食べても大丈夫なんだね。良かった。ほう~。」
「どうして神の使徒って、純粋で良い子ばかりなの!?」
アップルは自分の心の方が邪悪に汚れていると感じてダメージを受けた。
「僕は人間を食べて、顔と口と、結婚相手を手に入れたんだ。」
「結婚相手!?」
「ジュライのフィアンセのアップルといいます。この国で女王なんかやってます。ちなみに私とジュライの婚約は、神様公認です。キャア、恥ずかしい。エヘッ。」
ちょっとブリッ子風に説明するアップル。
「どういうことだ!? 神様は邪悪な人間を食べろとは言ったが、全く理解できない!? 確かに顔と声も人間を食べて手に入れていいよとは言ったが、ふざけるな! どうやったら結婚相手が見つかるんだ!?」
「アップルを食べてみたら、顔と声が手に入って、気が付いたら僕の精神世界にアップルがいて、僕たちは出会ったんだ。お友達から始めてみたら、いつの間にか愛が芽生えちゃって、神様に紹介しに行ったら、OKもらっちゃった。これが二人の馴れ初めってやつかな。アハッ。」
「要するに、私は神様公認で、物事を神の名のもとに行う権限を与えられた人間ってことよ。神様も私のことを純粋種と呼んでいたわ。」
「なに!? この人間の女は、神様の代理人とでもいうのか!?」
「そう! それよ! 私は神様の代理人! 私の言葉は、神の言葉だ!」
「ははあ~!? 神様!?」
遂に神と名乗るアップルと、それを信じてるアップルを拝む、神の使徒ジャニュアリー。
「女王アップルが神の名の元に命じる! 直ちに地上に災害を降らせるのをやめなさい!」
「ですが、神様は人間の数を減らせと仰いました!?」
「たわけもの! 神様が仰ったのは、世界を滅ぼす邪悪な人間を減らせと言ったのであって、この世界に優しい人間を殺せと言ったのではない!」
「ははあ~!? 申し訳ございません!?」
アップルの神の怒りがジャニュアリーに炸裂した。
「まずはあなたの大きな体を何とかしないとね。小さくなれないの?」
「無理です!? 気がついたら、この大きさになってました。」
「小さくなりたいと願いなさい。さすればあなたの体は小さくなります。神様は言いました。全ての出来事で想像できることは、全て実現可能だと。」
「や、やってみます。」
ジャニュアリーは、小さくなあれ! 小さくなあれ! と願います。しかし体は小さくなりません。
「ダメです!? 体が小さくなりません!?」
「困ったわね。こうなったら仕方がない。あれをやるしかないわね。」
アップルには何か秘策があるみたいだった。
「まさか!? アップル!? あれをやるの!?」
ジュライもアップルの秘策に気が気ではなかった。
「ジャニュアリー、私を食べなさい。」
アップルの秘策は、神の使徒ジャニュアリーに自分を食べさせることだった。
つづく。
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