第13話 アップルと他の使徒

 神様の世界からの帰り空。アップルとジュライは大空を降下しながら会話する。

「驚いた。」

「何が?」

「アップルが神になるって言い出したから。」

「ああ~あれね。人は、神様すら騙す生き物なのよ。クスクス。」

「ええー!? 酷い!? 神様を騙したの!?」

「騙してないわよ。私とジュライが幸せに暮らすためには、神様の言った通り、神様を目指した方が良いと思ったんだから。」

「そうだね。でも、そのためには、残りの11人の神の使徒よりも多く、邪悪な人間を食べなくっちゃ。」

「11人の神の使徒?」

「そうなんだ。僕たちは元々、神様の遊んでいた神様のチェスの駒だったんだ。」

「いい趣味してるわね、神様。」

「だから、他の神の使徒よりも多く食べなくっちゃ。人間。」

「なんだか楽しそうだね。アップルと同じ人間なのに。」

「もう何人も食べてるんだから、そんなことは、もう気にしないわ。それより美味しい人間の食べ方を考えなくっちゃ! 人間に会う調味料は、塩!? 砂糖!?美味しい人間の料理方法は、油で揚げる!? それとも炭火焼きでじっくりと焼く!? まとめて本を出版したら、きっと人類で初めての本になるわよ!」

「すごい! アップル! そこまで考えているんだ!」

「だって人間を食べることは神様公認よ。頑張らなくっちゃ。エヘッ。」

 こうしてアップルは地上の自分のお城に舞い降りたのだった。


「お帰りなさいませ。アップルご主人様。」

 アップルがお城に戻って来ると執事のアンズ、メイドのアセロラとアボカドが出迎えてくれた。

「ご主人様!?」

「はい。私たちの主は、今やアップル様です。ご主人様とお呼びする方が良いかと。」

「アップルご主人様。」

「いよ! アップルご主人様!」

「なんか恥ずかしいから、今まで通り、アップル様とか、アップルお嬢様って呼んでください。」

「かしこまりました。それではお客様のいる時だけ、ご主人様とお呼びします。」

「ありがとう。」

 一先ず、アップルご主人様は回避された。

「本日は、午後からスイカ国王様とご家族の国葬が行われます。アップル様は喪主を務めていただきます。」

「喪主?」

 もちろんアップルが喪主などという言葉を知る由もなかった。

「特に難しいことはございません。私たちでアップル様をサポート致します。」

「受け付けは、私にお任せを!」

「あなたは香典を盗む気でしょ!?」

「バレたか!? ウギャア!?」

 クソ真面目な執事のアンズ、お金大好きメイドのアボカド、気が優しいメイドのアセロラたちは、アップルにとって頼もしい見方だった。

「翌日には、王族の間で、誰を次の国王にするかという会議が行われます。順調にいけば、スイカ国王様の娘であるアップル様が、次の女王様ということになります。」

「これがエデンへの第一歩ね。」

「何か、おっしゃいましたか?」

「いいえ。疲れたので少し休みます。アンズさん、アセロラさん、アボカドさん、ありがとうございます。ニコッ。」

「はい。喪服を用意しておきます。」

「私、アップルお嬢様についていく!」

「あんた名前を呼んでもらえるだけで、そんなに嬉しいの?」

「だってブルーベリー王妃とか、ストロベリー王女は、メイドのことなんて、ゴミみたいな存在だと思っていたもの!? 名前を呼んでいただけるだけで、アセロラは幸せです!」

「はいはい。」

 アップルは自分の部屋に向かった。


「ああ~疲れた。今までに経験したことがないことが、次から次へと押し寄せてくるから何かと疲れちゃった。」

「大丈夫? アップル。」

「ありがとう。心配してくれて、シャワーを浴びて昼まで寝るわ。」

 アップルが鎧を脱ぎ始める。

「おお! 私の体がちゃんとある!」

 顔だけではなく、アップルの体も神の使徒ジュライに食べられて移植されていた。

「ジュライ、後ろを向いていて。」

「え? 別にいいじゃない。僕たち一心同体だし。」

「いいけど、神の使徒でも殺すわよ?」

「ヒイイイイ!? 後ろを向きます!」

 ふと、アップルに女心のスイッチが入る。覗きを撲滅しようというアップルの殺戮のオーラを感じ、ジュライは後ろを向く。

「ああ~極楽、極楽。」

 アップルは鎧を脱ぎ捨て、シャワーを気持ち良さそうに浴びる。

「少しだけなら。」

 ジュライは、出来心で少しだけ後ろを振り返ろうとする。

「死ね。」

「ギャアアアアア!?」

 油断などしていなかった。アップルはシャワーヘッドを鞭のようにジュライに投げつける。命中したジュライは気絶して倒れ込む。

「人とは、恥じらう生き物である。私は結婚するまで純潔を守り抜く。」

 この後、アップルは昼までグッスリと深い眠りについた。

 つづく。

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