第12話 人間と神
「エデン!? 地上に楽園を築くというのか!?」
「はい。」
神様は、ジュライとアップルの想像以上の発言に絶句する。
「僕は神の使徒で、アップルは人間です。神の使徒と人間でも愛し合える世界を、僕とアップルが幸せに暮らせる世界を作ります!」
「教えてください! 神様! どうすれば、私とジュライは幸せになれますか?」
ジュライとアップルは、自分たちの幸せを願って純粋な心で神様に問う。
「間違いない!? この人間の娘は純粋種だ!?」
神様は、興味が湧いてきたアップルに手を伸ばす。
「例え、ドジっ子、ダメっ子、使えない子、いらない子といじめられてきて、怖かったとはいえ、他人に仕返しもしていない!? まだ暴力や陰口などの愚かな行為をしていない純粋種だ!?」
神様は、一瞬でアップルのこれまでの人生を垣間見る。
「ワッハッハー! これは愉快だ! まだ本来、神の望んでいた人間が地上に生きていたとは! これは愉快だ!」
「神様?」
「さらに神の人間と神の使徒が出会い愛し合うとは! さらに愉快だ! ワッハッハー!」
神様は思いもしなかった展開に気分が良くなった。
「どうしたの? 神様。」
「分からない。持病が悪化したのかも?」
「人間の娘よ。さっきの質問に答えよう。おまえとジュライが幸せに暮らす方法が一つだけあるぞ。」
「本当ですか!? 教えてください! 神様!」
神様は、アップルの質問に答える。
「それは人間を食べることだ。」
「人間を食べる!?」
「正確には、増えすぎた邪悪な人間を食べて減らすということだ。」
「増えすぎた邪悪な人間!?」
「身に覚えがあるだろう? ドジっ子。」
「ギク!?」
「ダメっ子。」
「グサ!?」
「使えない子。」
「グサグサ!?」
「使えない子。」
「ギャアアアアア!?」
アップルは、家族や友達から浴びせられてきたトラウマの言葉を浴びせられ、断末魔の叫びをあげて倒れ込んだ。
「アップル!? アップル!? 大丈夫か!?」
ジュライは、アップルに駆け寄り体を支える。
「神様!? アップルに何をしたんですか!?」
「心の傷だ。」
「心の傷?」
「その人間の娘は、心に傷を受けるのと引き換えに神の望む人としての純粋さを保ってきたのだ。」
「そ、そんな!?」
「身に覚えがあるだろう? 人間の娘。」
「はい。神様。」
「アップル、大丈夫か?」
「大丈夫よ、ジュライ。」
「家族、友達、教師、メイドでも通りすがりの人間でも何でもいい。この娘は他人を妬み、嫉妬する自分の弱さを誤魔化すために他人を傷つける、邪悪な人間たちにドジっ子、ダメっ子、使えない子、いらない子と言われ続けて、もう心は壊れ果てていたのだ。この娘が自ら命を絶たずに生きて来られたのも、神の使徒と出会えたのも、神のご加護、神の救済としか言いようがないだろう。」
「クスッ。神様って、意外とロマンチックなんですね。」
「ロマンチックでなければ、人間が純粋で心の優しい生き物だと、信じ続けることはできんよ。ワッハッハー!」
「ハッハハハ!」
「すごい!? アップルが神様と分かり合えている!?」
アップルは、人間嫌いだった神様と笑い合うことができた。
「面白い! これだけ笑ったのは久しぶりだ!」
「私もです! 今までの耐えるだけの時間が嘘の様です!」
「気に入った! 娘よ! もっと私を楽しませろ!」
「といいますと?」
「神様になれ。」
神様は、ジュライとアップルに神になれと言う。
「私たちが神様に!?」
「ジュライ、覚えているか? 私の次の神様を、おまえたち神の使徒の中から決めると言ったことを。」
「はい。確か、多くの人間を食べた者を神にするとか。」
「その通りだ。この世界は増えすぎた邪悪な人間のために、戦争の絶えない世界になってしまった。このままでは世界は滅んでしまう。だから私は言った。多くの邪悪な人間を減らした者を、次の神にすると。どうだ? 神を目指してみないか?」
「ど、どうしよう? ジュライ。」
「どうって言われても。」
「これは神の試練だ。私がおまえたちの望みを叶えてやることは簡単だ。人間の娘を生き返らせることも、ジュライを人間の男にすることも。だが私がおまえたちの願いを叶えても、何も面白くない。おまえたちが神になれば、簡単におまえたちの願いは叶うぞ。」
「なります! 私は神様になります!」
「アップルがなるなら、僕も神様になります!」
「面白い! そうこなくてわ! 作ってみせよ! 人間と神の使徒が幸せに暮らせる地上の楽園を!」
「私はエデンを作ってみせる! そのためなら、神の名のもとに、私は人を食う!」
アップルとジュライの冒険が始まる。
つづく。
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