第31話 落語女子 其の1
冬馬から、俺の一糸まとわぬいやらしい絵を回収した後で、ひとしきりネットの危険性をレクチャーした後、俺は一人で高校に戻ることにした。
実際のところ、今日の朝、高校に着いた途端に冬馬となんだかんだあったので、学校を見て回るどころではなかったのだ。正直、俺の懐かしい母校を全然見て回っていない。
と言うわけで、再度俺の母校をぶらぶらしているところだ。なにせ、今日西暦千九九九年の五月二日は日曜日なので、全くと言っていいほど人がいない。冬馬と出くわしたこと自体奇跡みたいなものだ。
そんなことを考えながら、俺が階段を登っていると、階段の踊り場で、誰かとぶつかってしまった。
「きゃっ」
俺がぶつかった相手は、やっぱりと言うかなんと言うか女の子だった。それにしてもなんでこんなことばっかり起こるんだ。
「ごめんね、でも、あまり動かないでくれる。ちょっと、足がしびれちゃってて。やだ。だからじっとしててってば。お願いだから」
俺が事態を把握するまもなく、その女の子は悲鳴を上げ続ける。
女の子にのしかかられて、その上悲鳴を上げられると言うのは、非常にまずい状況だ。仮にもここは学校ときてる。だが、女の子に股がられていること自体は、大変素晴らしい状況だ。そんなふしだらなことを考えていた俺だが、ようやく女の子から解放される。
「あっ、もう大丈夫かな。足のしびれもだいぶ治まってきたみたいだし。本当ごめんね。そっちは大丈夫? 結構激しくぶつかっちゃったみたいだけど」
「ええ、大したことないです。階段を転げ落ちちゃったら一大事ですけど、幸い踊り場から落っこちることもありませんでしたし」
そう、俺と、俺とぶつかった女の子は、衝突した結果踊り場で、二人仲良く倒れ込んだものの、そこから階段を転げ落ちることはなかった。
もし階段から転げ落ちたら一大事だ。怪我では済まないだろう 。都合よくラッキースケベな展開になるはずもないし。
そうホッとしていると俺だが、女の子も同意見のようだ。
「そうね、“落ち”なくてよかったわ。これでも受験を控えている身だからね。“落ち”るなんて、縁起でもないわ」
となると、昨日和香さんに、首を素敵な
「確かに受験に“落ち”るのは勘弁してもらいたいですね。受験ってことは、三年生の先輩さんですか」
「いや、二年生だ。でも、受験を意識しなければならないことに変わりはないだろう?」
「それもそうですね」
なんだか持って回った言い方をする女の子だなあと、俺が思っていると、その女の子は自己紹介をしてくるのだった。
「それよりも、迷惑かけちゃってごめんね。あたしは“
「ああ、俺も二年生で、名前は、“
「ああ、そちらがあの有名な。一度会って話したいと思っていたの」
「そうですか。それはどうも」
どうやら、このしやと言う女の子も、俺のことをご存じだったようだ。歴史の修正をする必要もなさそうで俺は安心する。それにしても、『会って話したい』とまで言われるのは、名前が“平成一”と言う、わりかしインパクトのある名前の俺でもそうそうあることではない。
大抵は、少し離れたところで、『ほら、あの人が……』『ああ、あれが
そんな、名前だけは特徴的になってしまったが、それ以外に、たいして目立つ所のない俺に会って話したいなんて、ずいぶん物好きな女の子がいたものだ。そんな驚いている俺に、しやが話を振ってくる。どうもメモ帳に何か書きなぐっていたようだが、まあ気にしないでおこう。
「成一君とかけまして、藤原純友と同時期に朝廷に対して関東で反乱を起こした武将とときます」
そんなことを意味ありげに言ってくるしやである。なるほど、謎かけか。だったら、別に何か用事があるわけでもないし、ここはその謎かけに乗っかることにしよう。
「そのこころは」
「まさかどうせい、たいら」
こんなふうに答えるしやである。同時に、さきほど何やら書きなぐっていたメモ帳を俺に見せてくる。それには、こう書かれていた。
まさか!同性、たいら
将門 性、たいら
俺の名字が“
しやが、俺で上手く“落と”してくれた。
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