第24話 ウホッ いい腐女子 其の3
そんなこんなで、なんとかして冬馬に、自作のいやらしい絵を見させてもらうことができた。
思った通り、男と男が抱き合っている。なかなかに、いや、かなり上手だと言っていいレベルだ。これならば、
まず第一に、男の裸には、モザイクをかけなければならないものがついているが、それがはっきりと描写されているわけではない。これならば、年齢指定をつける必要もないだろう。男子高校生である俺にも安心だ。
かと言って、一回は具体的に描写したものを、法律に触れないように、うまいこと何かで隠しているわけでもない。男二人のうち、受け役であろう方の男が、大股開きにさせられて、股間をあらわにしているのだが、そこに何か光り輝くものがそそり立っている描写になっている。
しかし、股間のものを、あたかも後光が差しているかのように、神々しく演出されるのも、男として気恥ずかしい。色気むんむんの立派な大人の男の股間には、サイズだけはやたらと大きい子供状態のものが付いているというのも、子供のものを見たことはあるが、大人のものを見たこたはないという女性が描く、男同士の絡み合いによくあることらしいが、冬馬の絵はそれすらでない。
おそらく、男性器自体、まともに見たことがないのだろう。そんな実体験に乏しい女の子が、やたらと妄想だけを爆発させて、男への性衝動を発散させた結果が、
だが、それ以上に問題となる部分がある。その、光り輝くものをおったてている男に、もう一人の男が自分の股間のものを突っ込んでいるみたいだ。それも根元まで入れちゃっているようで、そちらの方が光っている様子はない。それは問題ないのだが……
入れられている方の男には、しっかりとお尻の穴が描かれている。どうも、その少し上の方に、突っ込まれているようだ。この部分にはモザイクやぼかしもないし、光っているわけでもないので、確実に、突っ込まれていることは明らかなのだが、果たして、男の体の股間に、お尻の穴以外に突っ込まれる場所があるのだろうか。
俺だって、別に他の男の股間をじっくりと見て回ったり、触って確認してことがあるわけではないので、全ての男がそうだと言えるわけではない。
だが、少なくとも俺の股間には、お尻の穴以外の穴は空いていないし、それが異常だというのであれば、令和元年までに、人並みの医療行為をお医者さんにされてきたのだから、とっくの昔に、そのことをだれかが知らせてくれただろう。
となると、冬馬だって女の子だ。小学生や中学生の時に、俺たち男の子が、体育の時間にサッカーしている間に、それなりの性知識を保健も女の先生に教わってきたはずだ。
赤ちゃんのできるメカニズム、女の子の体の仕組み、お尻の穴以外の穴、そんなこんなの性知識が生み出したものが、あの、本来ないはずの穴に突っ込まれている、股間をきらびやかに輝かせた男なのだろう。
そんな風に、俺が冬馬の実体験が伴わない、妄想が生み出したファンタジーに脱帽していると、冬馬がおずおずと尋ねてくる。
「その、どうかな」
「えっ、そうだね、絵はすっごく上手いと思うよ。法律を犯すこともないみたいだし。なんかこう、衝撃的だったよ。こんなの初めてだ。新しい世界を見た気分だよ」
「そ、そうですか。ありがとうございます。わたしも、そんなことを言われたのは初めてです」
俺は、冬馬の絵を、とても手放しで称賛することもできずに、『今まで見たことのないものだ』と、褒め言葉とも、悪口とも取れる言い方をしたのだったが、冬馬は、素直に褒め言葉と解釈してくれてようで、無邪気に喜んでくれる。
だが、このまま放置して良いのだろうか。俺が冬馬の無知を指摘しなかった結果、冬馬がこのファンタジーを、全世界に向けて、ネットの
「うは、男に無視され続けた結果、股間に四次元ポケットを作り出してしまいました」
「処女が、男を夜な夜な求めた結果がこれか」
「これにはコウノトリさんも呆れ顔」
「キャベツ畑からやり直せ」
「雄しべと雄しべで十分だろう」
そんな、
ひょっとしたら、冬馬がこの先も、男にはお尻以外にも、股間に穴があると信じ続けていることが、正しい歴史の流れかもしれない。
しかし、俺が冬馬にとっての、初めての同好の士となった結果、冬馬がネットのモニュメントを作り出してしまったとなれば、これこそひどい歴史改変に他ならない。
となると、一刻も早く、冬馬に正しい性教育を
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