第2話  保護色

「桜子、悪いけど買い物行ってきて」

「はーい」


お母さんに頼まれた私は、買い物に出かけた。

近所のスーパーで、頼まれていた買い物を済ませた私は、

浜辺に行ってみる事にした。


「う・・ウソ」


私は眼を疑った。


この雨の中、彼は傘もささずに絵描いていた。

ただ、キャンバスを眺めているだけではない。

明らかに筆を動かしている。


「どうしたの?こんな雨の中」

「僕は、これを待って言ったんだ」

「これをって・・・」

「雨」


私は、愕然とした。


「でも、風邪ひくよ」

「構わない。誰も悲しまないし、心配しない」

「どうして・・・」

「なら、周りを見てくれ」

私は周りを見る。


「誰もいないだろ?」

「・・・うん・・・」

「僕は背景以下、誰も気にとめない。」

「どういうこと・・・」


「僕は、カメレオンみたいなものだ」

「カメレオン・・・」

「周りの風景に、自分を溶け込ませることができる。

つまり、保護色・・・

なので、誰も気づかない・・・」

彼は淡々と話す。


「なら、どうして私は・・・」

「眼のせいだろう・・・」


いや、私は極度の乱視。

コンタクトがないと、何も見えない。


「おそらく、君が今しているコンタクトが、僕を浮かび上がらせているんだ。

君の脳裏ではね」


彼の言葉には、それまで感じた事のない恐怖を抱いてしまった。


コンタクトが背景を浮かび上がらせる。

そんな理屈は通らない。


でも、彼の言葉には、なぜか説得力のある気がした。

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