⁂ 0~1章 登場人物
----------0章-----------
【カイン=ジャンティー】
◇身長181cm。14歳。
ラリャンザ町の外れで墓守をしている少年。年齢の割に大人びていて、初対面の人物からはよく二十代手前ぐらいに間違われる。
妹が生まれた頃に、両親の気を引こうとして“墓守の約束事”を破った事で妹が精霊に呪われてしまい、高額な薬が必要になった事で両親が出稼ぎに出た為、一人で家業と妹の面倒を見ていたが重荷に感じていた。
罪悪感や自責の念から教会に入りびたり、信仰深くなっており、不思議な力を持ったアオバを最初に“御使い様”と呼んだ。両親が戻って来てからは、子供らしい面も少し戻って来た。
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20歳になる少し前に、遠方から引っ越してきた女の子と仲良くなり、結婚。自分の子どもに御使い様の素晴らしさを語り聞かせ続けた。そのおかげか、子どもの内一人が中立協会で働くことになった。
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【フロワ=ジャンティー】
◇身長125cm。11歳。
カインの妹。元々体が少し弱く、風邪などにかかりやすい体質だった。カインのせいで呪われの身になったことを薄々知っていながら、甲斐甲斐しく世話をする兄を神様のように思っており、自分のせいで兄が苦しいのならいっそ見捨ててくれて構わないとすら考えていた。
兄から「生きてくれ」と願われたことで、そんな自己犠牲的な考えは捨て、呪いが解けてからはよく動きよく喋る、元来の明るい性格が出るようになった。また、墓守の才は無かったものの、料理の才に目覚め、宿屋の食堂で働き始めた。
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残念ながらアオバとの約束である「かけっこをしよう」というのは出来なかったが、町を再訪したアオバの案内を買って出て、サリャの花畑を見ることはできた。
馬車の前に飛び出した子どもを助けようとして、若くして亡くなった。享年34歳。
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【メア・ルル=ケア】
◇身長155cm。44歳。
ラリャンザ町の宿屋を切り盛りしている女将。周囲からは“メア”と呼ばれている。夫と子どもを6年前のフラン・シュラ襲来事件で亡くしており、同じ立場にあるロレイヤを気にかけていた。
子供好きで、両親と離れて暮らしているカインたちの食事の面倒も見ている。
*
アオバが正式に御使い様と認められるや否や、『御使い様が泊った宿屋』として大々的に宣伝をし、自らの宿屋の一室を観光資源の一つにした。60を過ぎたころに宿屋を閉めて隠遁しようかと考えていたところに跡を継ぎたいと言う人が現れた為、その人に宿を譲った。尚、その人物はロディチェ礼会の者である。
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【シャルフ=タランシャ】
◇身長171cm。38歳。
ラリャンザ町の役人だった男性。前々から異動要請をされており、0章終了後に王都の役所に異動。そこで関わった事件で加害グループに目をつけられた為、一時的な避難目的でサルスィオ村の役所に異動し、6章終盤で王都の役所に戻り、御使い関係の書類手続きなどを担当している。
真面目を通り越して融通が利かず、また町内でも人気だったリノと結婚した事から町では嫌われ気味。仕事は優秀だったので、職場では重宝されていた。精霊からは苦手な何かがあるのか距離を取られており、気配が読みづらいとのこと。
教会の存続をめぐって妻と口論になっていた。その矢先にフラン・シュラ被害で妻を失い、以降、彼女の亡骸の幻覚が見え続けていたが、アオバとの出会いで幻覚と別れを告げた。
*
アトラティスカとは中立協会を訪れた時に再会しており、その時に当時労わりの言葉をかけられなかったことを謝罪した。
アオバの欠損部位が妻であるリノの死に姿と似ていた為、若干過保護気味。アオバと顔を合わす度にトラウマが刺激され、リノの幻覚が再び現れるようになったが動じず、七十過ぎの最期までアオバにくどくど言っていた。
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【リノ=オルク・タランシャ】
◇身長151cm。享年28歳。
ラリャンザ町の宿屋の隣の店で生まれ育った女性。看板娘と呼ばれる程に人気で、いつでも人に囲まれていた。優しく気さくで愛嬌のある人柄だったが、その実、一人になりたいとも思っていたようで、周囲から浮いていたシャルフの家に度々訪れ、ぼうっとする時間を提供してもらっている内に、なんとなく彼と一緒にいることを選び、結婚した。
生まれ故郷であるラリャンザが大好きで、信仰深かった彼女は、聖職者の撤退と老朽化を理由に教会の取り壊しが検討されたのが我慢ならず、シャルフと口論になり家を飛び出した。タイミング悪くフラン・シュラが押し寄せて来たその日、逃げ込んだ教会で出血多量で死亡した。残された遺体は、顔の左半分、右腕、両足が溶けて無くなっていた。
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【ロレイヤ=サユー・ジェヌ】
◇身長156cm。32歳。
ラリャンザ町に住む女性。ディオルの妻。子どもが二人いたが、長男を6年前のフラン・シュラ被害で亡くし、依存するような形で長女・ユアラを守り生きていた。彼女が行方不明になっても諦めきれず、町の隅々から近隣の町々まで捜し歩いていた。
ユアラの死を受け入れた後、カイン、フロワの両親が帰ってくるまでの間、彼らの面倒を見た。
*
カインたちの面倒を見ている内に“自分の子ども”を諦めきれずに妊活を行うが上手くいかず、養子を取ることを決めた。しかし、養子にかつての我が子のようであれと押し付けている事に再訪していたアオバが気づき、ひと悶着の末、距離を置きつつどうにか家庭を築き直した。
晩年は復建した教会で子どもらに読み聞かせをしたりして過ごした。
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【ディオル=ジェヌ】
◇身長164cm。31歳。
ロレイヤの夫で、隣町からの移住者。骨董屋を営んでいる。
自分の考えと違う事に対しカッとなりやすく、他者への共感より自分の話がしたいタイプ。ロレイヤからは「意志が強くて、優柔不断な自分を引っ張ってくれる素敵な人」という評だが、町の人からはやや面倒くさがられている。
子どもが好きで、当然自分の子にも多大な愛情を捧げていただけに失った事を受け入れられず、何よりも愛した女性であるロレイヤの悲しみをどうにかしてあげたくて毎日のようにユアラを探していた。
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養子を取った後に起こった問題で「思えば自分本位で妻と向き合ってこなかったのではないか」と思い直し、少しずつロレイヤとの関係も見直した。周りからはああだこうだ言われながらも、最期まで夫婦仲は睦まじいものだった。
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【ユアラ=ジェヌ】
◇享年8歳。
ロレイヤ、ディオルの子。5歳の誕生日に親戚から貰ったタッタン人形がお気に入りで、どこに遊びに行くにも持ち歩いていた。好奇心旺盛で、入れそうなところにはどこにでも足を踏み入れており、フラン・シュラの巣窟となっていた洞窟の奥へと入ってしまい溶けて亡くなった。
葬儀の鐘が鳴るまではペルルの中におり、中の人達が言葉が分からないと知るとお姉さんぶって、この世界の言葉を熱心に教えていた。
ちなみに、アオバがユアラの名を出しても精霊が怒らなかったのは、ペルルの中にいるのが精霊には見えていた為である。
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【ジルディス=ロガナ】
◇身長168cm。74歳。
ラリャンザ町唯一の病院で医師をしている男性。腰が丸まってしまっているため、実際の身長よりも小柄に見える。
アオバから貰ったお金で新たにユースリニッタ薬堂の解呪薬を購入し研究したものの、結局どうして効果があるのかはよく分からなかったそう。
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【カスタ=ロョル・ミテヲ】
◇身長131cm。10歳。
ラリャンザ町に住む農夫の少年。フラン・シュラを飼おうとして怒られてしょんぼりしていたが、アオバの手により子犬になったので、その辺で拾ったと言って「まあ、フラン・シュラよりかは……」と両親の説得に成功した。犬には“フーリャ”と名付けて、天寿を全うする日まで可愛がった。
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成人後もたまに“神様の物”が見えており、一人でぶつぶつ喋っているところを町民に目撃されて引かれ、婚期が遅れたと本人は主張しているが、遅れて結婚した妻いわく、「変な虫とか見つける度に一度家に持って帰る癖のせいだと思う」とのこと。
----------1章-----------
【ドライオ=シェジェン】
◇身長168cm。43歳。
ゲーシ・ビルにある小さな教会の聖職者の男性。妻を出産の際に亡くしており、彼女が残した子の世話だけを目的に生きていた。
かつては教会で託児所のようなことをしており、子どもたちに教えを説き、読み書きを習わせたりとしていた事から、特に子持ちの親からは慕われていた。
十五年前、自身の子が贄に選ばれた。教えに従い笑顔で子を送り出したドライオだったが、その五年後に神の正体が人食いの怪物だったと知らされると日に日に落ち込み、素面でいると自分のしたことに死んでしまいたくなる程の精神状態になり、酒に溺れる日々を送るようになった。日々の生活も疎かになっていき、周囲の人間からも見放され始めていた頃、アティと出会った。
*
アオバが出て行ってから少しずつ身の回りのことをするようになり、翌年には聖職者としての活動を再開。また、御使いになったアオバが恐る恐る顔を出した時には拳骨をしようとして周囲に止められた。
十年以上の不摂生が祟って、活発な動きはできなかったものの、細々と長く聖職者として教会で教えを説き続けた。
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【コワムゥ=カル・シェジェン】
◇身長82cm。享年4歳。
ドライオの子、男の子。明るく元気いっぱいな、子どもらしい子ども。とかくじっとしていられないタイプだったが、ドライオに聖書を読み聞かせてもらっていた影響か、読み書きが既に出来ていた。
十五年前の土贄の儀で最初に贄に選ばれた。友人たちとしていた約束事を思い返し、連れられる道中で本当は誰が連れていかれる予定だったのかに気づき、父に向けて告発と謝罪の手紙を出した。
友人らとの約束通り、贄の神を倒す為に毒を作製し、少しずつ摂取していたが、食事の際に口にしたソリュの花の蜜がサリャの花の毒と相互作用を引き起こし、中毒症状で保護区にたどり着く前に死亡した。
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【レベゾン=アンリョ】
◇身長173cm。41歳。
濃い紫色のタレ目が印象的な、気弱な男性。役所に勤めており、ガシェンの隣の部屋に夫婦で住んでいる。
幸の薄い雰囲気を持っており、自己主張が弱く諦めやすい性格。ドライオを中心とした我の強いタイプによく振り回されているが、本当に嫌な事ややりたくない事を前にすると周囲が本気で心配するほど顔面蒼白になる為、然程無理はさせられていなかったりする。
自暴自棄になっていたドライオを心配して、よく様子を見に行っていた。特に町に聖騎士が来る日などは足止めも兼ねて顔を見せに行っていたのだが、ほぼ毎回ガシェンに出し抜かれていた。
*
これまでは性格もあって、重要な役職には選ばれなかったが、アオバやアティ、テルーナといった十代の少年少女らの活躍を見て感化され、見送られ続けていた昇進にこぎつけ、最終的には町長にもなった。
彼の就任中は商いの町として印象が強かったゲーシ・ビルが、子育て世代にも住みやすい街としてPRされ、人口も増えて賑わったとか。
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【ファラウ=アンリョ】
◇身長91cm。享年5歳。
レベゾンの子、男の子。引っ込み思案でインドア派だが、よくコワムゥに引っ張りまわされていた。心優しく、周囲への気遣いから自分の意見を言えない事も多かった。読み書きはまだまだで、何も見ずに書けるのは自分の名前ぐらい。
十五年前の土贄の儀で二番目に贄に選ばれた。
友人らとの約束事である、『贄の通告書に友達の名前があったら書き換えよう』にも、己の名前しか書くことができなかった。コワムゥと同じくサリャの花の毒を作製し所持していたが、連行役の聖騎士に取り上げられている。
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【ガシェン=ダドゥル・キリヒグルエ】(姓は「ダドゥル町の教会」の意)
◇身長179cm。享年45歳。
ゲーシ・ビルで守衛をしていた快活そうな男。職場では新人育成や現場マネジメントなどを担当していた。元々はリヴェル・クシオン連邦出身で、とある事情からサネルチェ公国に移り住んでいた。
子を“罪無き子”として育てられなかった事を後悔し、呪詛のようにその言葉に縛り付けられていた彼は、憎しみを抱いていた聖騎士を巻き込むことで子の罪を自らのものにしようとしていたが、よりにもよって選んだ相手が毒に耐性を持つテルーナだった為に失敗し(なんなら、テルーナに発した台詞は、「どれもこれも経験済みですけどぉ? 自分ばっかり不幸だと思ってるんですかね、このおっさんは」とか思われてました)、手紙の細工にアオバが気づいたことで計画は成し遂げられずに終わった。
毒殺未遂の罪で投獄されていたが、旅商人フィル・デの語る声がうるさいという理由で脱獄を決め、保護区に身を投げた。当てもなく吹雪く雪原を歩き、小屋にたどり着き眠りにつこうとしていた彼とカルドが出会い、カルドの知らせを聞いたラドーによって看取られた。
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【ルファ=ジェスタ】
◇身長148cm。14歳。
ゲーシ・ビルにある一つの宿屋の娘。暗い紫色の髪をサイドテールにしている。明るい性格で、人懐っこい笑顔が特徴的。幼い頃から宿屋の手伝いをしており、宿内の事なら何でも手慣れている。許可さえあれば狩りも行い、猪ぐらいなら一人で捕ることができる腕前の持ち主。
植物系の精霊と波長が合い、墓守の素質が無いにも関わらず(かつての聖女ほどではないが)祈りの力でオーディールを呼び出すことができる、稀な才能の持ち主。宿屋の倉庫にオーディールがいたのも、ルファが“理想の兄”を妄想していた事が祈りの力となっていたことが理由だが、本人に自覚は無い。ラピエル(特に聖女の残滓)と波長が合っており、器に選ばれていた。
人攫いに遭い、精神的に追い詰められていたことで救いを求めて“理想の兄”を夢想し過ぎたことがきっかけとなり“黒い霧”が体内にたまり始めてしまった。吐き出して以降は時折意識が混濁しかけることもあったが、一年ほどかけて元に戻った。
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一見して元の生活に戻ったルファだったが、ラピエルに狙われた事、聖女と近しい才能を持っていた事でロディチェ礼会から監視対象とされている。
19歳の頃に見合いで結婚した相手が礼会員であり、先手を打って住居兼職場の宿内に術式符を張り巡らせたおかげで“黒い霧”を体内にため込むこともなく、平和に過ごした。
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【ラオ=ジェスタ】
◇身長103cm。享年8歳。
ルファの兄。コワムゥやファラウたち友人らの中で一番年上だったこともあって、リーダー的な立ち位置だった。やや生意気な物言いをするものの、既に読み書きが出来ており、物置の奥にあった書物も読破済みと、かなり秀才寄り故の自信家だった現れでもある。
十五年前の土贄の儀で三番目に贄に選ばれた。改竄の為に通告書を盗み見し、先の二名では儀式が終わらなかった理由を察した。ガシェンの子の分の毒を作製して手渡し、連行役の聖騎士の目を欺き毒を摂取したが、保護区を周る道中で中毒症状で倒れ、意識はあったものの最期は聖騎士に抱きかかえられて中央に連れて行ってもらった。
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死後、魂は両親の下へ。生まれてきた妹を見守り続けていたが、保護区中央で大量の“黒い霧”と接触し、破損の末、取り込まれてしまい、ルファを連れ出す餌になってしまった。
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【ガーネット=ライ】
◇身長152cm。13歳。擬態ラバ族(自覚無し)。
女神ユ・ティアの転生体。
赤毛のショートボブに、金色の目を持つ少女。頭に小さな角のような突起物があるのがコンプレックスで、赤いリボンカチューシャで隠している。
シャニア王国の王都にある寄宿学校の裁縫術師科に通う生徒であり、有名デザイナー・ガーネットその人。身バレ防止の為、普段はクラスメイト達からも“ネティア”と呼ばれ、護衛もつけられている程だが、当の本人はうっかり本名で自己紹介をしようとしたり、魅力的な人を見つけては声をかけてモデルにさせてくれと頼んだり、良い生地があればあっちにフラフラ、こっちにフラフラと落ち着きがない。
素直で信じやすい性格をしている反面、裏切られたり手ひどい目に遭った相手や事態には疑り深くなる。特に、家族との連絡手段を絶った上に売り上げを搾取した学園や、自分を攫おうとした人攫いなどの大人に対して警戒心が強く、長らく護衛を務めているグランには大きな信頼を置いている。
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グランの夢を妨げないためにも、グラン離れをしようとしていたが、グランから「今は近衛騎士になることよりも、君の身を守る事の方が優先事項になっている」と告げられてからは、改めて彼と契約を結び直し、完全専属護衛になってもらった。
16歳の時に自らの店を持ち、これまで以上に活躍をするようになり、常に最先端を行くデザイナーとなった。アオバやセイラとの交流も続け、式典の度に新たな衣装を提供していた。晩年は後継育成をしようと思っていたが、あまりにも感覚的で教鞭をとるのに向いていなかった為、コンテストの審査員などをしていた。最期の最期までファッションの事となると嬉々としてマシンガントークをするおばちゃんだったそう。
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【グラン=バディレッカ】
◇身長178cm。18歳。
年齢の割に筋肉質で、がっしりとした体形。目つきが鋭く、冷たい印象を与えるが、常識的でしっかり者であり、よくガーネットに振り回されている。上司からの評価はそれなりに高く、近衛騎士の試験でも面接で落ちてしまったものの、王都の衛兵にスカウトされたぐらいには良い成績を残した。
*
自分の夢の為にガーネットが無理をしているのを見て、「(試験にも落ちたし)今は近衛騎士になるよりも(次の試験までは)君の身を守る事の方が優先事項(というか仕事)になっている」と伝えたところ、何かしら互いに違う解釈をしてしまい、何故かガーネットの店を手伝う運びになっていた。本人は「こんなはずではなかった」とのことだったが、「まあお金が出るならいいか」と途中で考えることを止めた。
店の手伝いをし始めた辺りからガーネットがラバ族であると薄々気づき始めたが、特に伝えることもなく、ガーネットの弟(普通に人間)の面倒も見て過ごした。近衛騎士になる事はなかったが、本人曰く「小説よりも愉快な毎日だったよ」とのこと。
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【フィルス=ジャンティー】
◇身長167cm。35歳。
カイン、フロワの母親。信仰深く、お人好し。
夫婦で出稼ぎから帰る途中、精霊荒れにより帰途を阻まれ、回り道の途中で迷子になってしまったのが悲劇の始まりだった。親切にも道案内をしてくれた人をまるっと信じてしまい、金目のものを持っていると思われ人攫いたちに捕まってしまっていた。その際に足を挫き、逃げ出すこともままならなくなった。
諸々事情が重なり家に帰られなくなって一ヶ月。すでにフロワも呪いで死んでしまっただろう。……と考えた時、すぐ近くで怯えてうずくまる子供達だけでもせめて助けようと、正義感の強い夫に被害者たちを任せ、自身は牢に残る事を決意した。
逆上した人攫いに暴行され瀕死の状態だったが、アオバの治癒により回復。その際に、婚姻の印である刺青(足首に入っていた)が消えてしまったので、町に戻って諸々落ち着いてから入れ直した。
他の被害者を優先して帰ってもらっていたので時間はかかったものの、無事にラリャンザに戻り、カインとフロワの下へ帰った。ほぼ直後にラピエルとリコルの最終決戦が始まっているので、空気が“黒い霧”で淀む中へろへろになって帰宅し、再開を喜ぶ間もなく町民もろとも倒れたが、無事生還し、平和な日常を手にした。
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出稼ぎの必要が無くなったので、墓守の夫を支えつつ近所の子に読み書きを教えたりする生活に戻った。町で誰よりも御使い信仰をしていたとか。
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【ゾルディア=オーンヌッキ】
◇身長188cm。52歳。
人攫いのボス。長身かつ体格の良い巨漢。元々はリヴェル・クシオン連邦のダドゥル町にあった大教会の聖職者だった。十年前の土贄の儀の神が打倒された事で聖職者の地位が危ぶまれると、多くの人間を些細な理由で処刑台に送って来た事から町民に殺されると怯え、他の聖職者らを連れて夜逃げした。
信仰を捨て、生きる為に悪事に手を染めたゾルディアたちに「罪悪感を覚える必要などない」と囁き近づいて来たエイーユにいいように操られた。途中までは良好な関係だったのだが、ゾルディアが精霊に愛されている事を知ったエイーユに裏切られ、失敗する悪事をするよう誘導され、それらを知らぬまま人攫いを決行してしまった。ちなみに、攫った人間は目ぼしい才能があれば生きたまま欲しがる人に売り渡し、才能がない者は宝石にして売る予定だった(保護区内の出来事は、王家の耳に届かない)。
アオバを本物の御使いだと認識した瞬間から、かつての信仰心が蘇り、彼のしたことを天罰として受け入れた。
*
怪我が治ったゾルディアたちは、聖女セイラの監視の下、ボランティア活動からはじめ、少しずつ社会復帰を始めた。ゾルディアはこれまでの罪を償う為に処刑を望んだが、許可は下りず、アオバが面会に来るその日に自ら首を掻き切って死亡した。享年54歳。
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