第9話【2月22日】最後の晩餐

いよいよ残り時間も約六時間。

高速道路に乗ると、ある場所へと

向かう為、急いで車を走らせた。


途中一番大きなサービスエリアに立ち寄り

そこで最後の晩餐を食べることにする。


店に入ったのはいいのだが、中々注文を

決めることができず、ひたすら迷い続ける。テレビで芸能人が

「最後の晩餐にするならこれ!」

みたいな番組をやっているが、

あれは本当にその状況に追い込まれた者で

ないから言えることなのだ。これだけ

決まらないのであれば、もういっそのこと

食べないほうがましだとさえ思えてくる。


結局俺が最後の晩餐に選んだのは

前沢牛ステーキの和定食。

やはり生粋の日本人としてはご飯と味噌汁

少しの漬物と和牛で終わる!

そう思ってしまった自分の単純さに

本日何度目かの一人笑いを浮かべていた。


最後の晩餐を終えた俺は、引き続き

夜の高速道路を走り続ける。

高速道路を降りコンビニで缶ビール2本と

好きなつまみを買い目的地に

到着したのは21時を回った頃だった。


俺が人生の幕をおろしたいと思った場所

それは高校三年生の夏、県大会を勝ち抜き

決勝の試合が行われた県営野球場である。


姉に買ってもらったグローブと

メジャーで初勝利をあげた時の

ウイニングボール、先ほどコンビニで

買った缶ビールをバッグにいれ

球場から出る職員に紛れて中に侵入すると

完全に電気が消えるまで暗闇に

身を潜めることにした。

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