第5話【2月20日】大宴会

焼肉屋に到着した俺様一行は

店主への挨拶と注文を済ませると

店内の好きな場所に座る。


勿論、スーパースターの俺様は

座敷の上座だ。

この場所に座ると入口からトイレまで

全て見渡せるから都合がいい。

姉の為に、仕切りを借りて座敷の

奥のほうに座布団を並べ、いつでも

寝れるように準備もした。


いよいよ人生最後の大宴会が始まる。


大人はもちろんビール、子ども達には

各々が好きなソフトドリンクを

注文し皆で乾杯をする。

肉は注文するのも大変なので

店にあるものをバイキングのように

並べてもらい、なくなりそうになったら

補充という形にする。

これで店主とアルバイトは

ドリンクオーダーに専念できるのだ。

姉にはノンアルコールビールを用意した。


自分の好きなものをひたすら食べている者

肉は食べずにつまみとアルコールばかり

流し込んでいるおじさん達、食べること

そっちのけで遊び回り怒られている子ども達皆の喜ぶ顔、久しぶりに会って談笑している姿を見ると、やはり家族とはいいものだな

と心の底から思った。


後3日もしたら、ここにいる皆は

俺のことを忘れてしまうんだなと思うと

死ぬことが少し怖くなってきた。

人は死んでも心の中で生き続けるなんて

言葉もあるが、俺にはそれすら許されない。

何て理不尽な契約をしてしまったのだろう

と思うが、自分が選択したこと。

もう後戻りはできない。


店にきて二時間ほど経っただろうか。

夜9時をすぎ、そろそろ眠くなってきた

子ども達や酒を浴びるほど飲み

気持ちよくなって、うとうとしている

おじさん達の様子が目につくようになる。


そろそろお開きと言わないと

いけないのはわかっているのだが

この宴が終わった瞬間に、俺の死が

また一歩、近づいてくるのだと思うと

言い出せない自分がいた。

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