第2話【2月19日】謎の店
日本に到着したものの、すぐに姉に会い
現実に直面する覚悟ができなかった俺は
とりあえず東京に一泊してから
向かうことにした。
1人でホテルの部屋にいても嫌なことばかり
考えてしまう自分に耐えきれなくなってきた
俺は下町のほうへ向かうことにした。
メジャーリーガーだというのに驚くほど
誰にも気づかれず、声もかけられない自分に
(オーラないんだな…)
と1人苦笑しながら、昔よく行っていた
下町の居酒屋へと向かう。
突然の俺の来店に、店主は
「いらっしゃいませ」と言った後
二度見をし、飛び上がる勢いで驚いている。
その様子が可笑しくて、
とてもありがたかった。
昔と変わらぬ態度で接してくれる店主。
美味しい日本の料理とビールは久しぶりに
頭の中から俺の悩みを消してくれた。
店主への感謝を丁寧に伝えると店を出た
俺は、久しぶりに東京の景色を見たくなり
周辺を適当に歩いてみることにする。
あったはずの店がなくなっていたり
数年の間にも目まぐるしく変化を遂げる街。
しばらく進んでいると、薄暗い路地の中に
【あなたの願い1つだけ叶えます】
という怪しい看板の店が見えた。
何だ?夢でも見ているのかと思いその店に
近づいてみると、中から50代前後のスーツを着たサラリーマン風の男が出てきた。
目があった俺に
「何かお困りですか?」
と声を掛けてきた男に俺は
「この看板はどういうことですか?」
と質問してみることにした。
男は質問には答えず
「店内へどうぞ」というと
ドアを開けて俺を迎え入れる仕草をする。
かなりの胡散臭さを感じながらも男の所作と少しだけ見えた店内の雰囲気に引かれ
素直に店内に入ってみることにした。
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