第60話 奇策と奇策
「2セット表、攻撃 : カルマ・守備 : アスカ
開始!」
(ダメだ。どれだけフェイントをいれようが、全部寸での所でかわされる。
先に2勝されるとまずいぞ。)
カルマも珍しく刺突を組み入れた攻撃をしかけ、アスカを徐々に後ろに追い詰めながら、話し出す。
「このゲームはねえ。ある程度の回避力があれば、武装してない守備側が圧倒的に有利なんだ。
普通に狙って当てようとするのもいいけど、中々難しい。
だから勝敗は、奇策を打って、相手の虚をついて、先に攻撃を当てた方に…傾くのさ!」
最後の刺突によりまた一歩後ずさったアスカ。
その一歩の先には小さな小指の先ほどの大きさの石があり、それは本来ならば蹴り飛ばされて終わりのものである。
『固定』の魔法
カルマの固有魔法であるこの魔法は触れた物を一定時間その場に固定することができ、解除されるまでは、何があっても動かない。
よって、引いた足がその小石に止められたことの反動で、アスカの体の重心は前にかかり、当然それを見越していたカルマはそこを突くわけで…
「カルマ攻撃成功! 2-1 攻守交替です。」
「さっきまでの間に仕掛けてたってことか。」
「他にも、ね。悪いけどこれからは常に足元を意識して戦ってもらうよ。」
「優男のくせに、似合わないことするよな。」
「僕は勝ちたいんだよ。僕だってときには非常にもなれるさ。」
(その通りだ。剣技が拮抗している以上、戦略や策で勝つしかない。)
「マズイな。」
「クロさん、どうしてっすか?」
「このストラグルというゲームは表裏を2セット行い、その後はサドンデス。だから、相手に先に2勝をあげられたら、こっちの勝ち数が奇数では終わらない。
それに、カルマが言うように、攻撃側は不利。それなのに、負けてる側は勝つためには2連続の勝利が必須になるから…」
「回避成功してるだけだと…負け?」
「イオン!クロさんも!あんさんが負けるって言うんすか!」
「いや、俺もあいつが負ける所なんか想像できない。ただ、次をとらないと厳しい状況になるということだ。」
(ここで取られたら、負け。出し惜しみしてられないな。)
『隠密』
「!?やっと使ったかい。ホントに気配も感じない。すごいよ。最初からこれで来られてたら負けていたね。」
しばらく様子を見た後姿を現し、それと同時に剣先でカルマの靴を後ろからつつく。
「アスカ攻撃成功! 2-2ここから、サドンデスに入ります。」
「次からは実質、攻撃に成功した方が勝ちだね。」
「3セット目 攻撃 : カルマ・守備 : アスカ
開始!」
(隠密は使えるか。いや、使えなさそうだな。セットを重ねれば重ねるほど奴が固定する物が増えていく。
できるだけ、早く決着をつけたいが…チッまた石が。
そもそも魔法も使わずに………いや、使えばいいのか。)
「そこの足場はもう行き止まりだよ!
これで、僕の、勝ちだ!」
「まだだよ!」
生憎、ここまで来て負けるなんて結果、俺もアイツらも受け入れられるほど忍耐強くないんでね。
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