第61話 大賭と決着

アスカは手から2個の闇弾を放つ。一方は先に着弾するようにカルマの剣を持つ手首へ。


もう一方は、少し遅れて反対側の手へと。


「何を今さら、そんなの分かりきって…」


カルマの腕輪を着けた方の手は、急速に闇弾に反応し、不自然にその方に動いて迎撃。


続く2発目も手を戻して迎撃。


カルマは自分の手が邪魔で剣を突き出すことができない。


「なるほどね。腕輪を着けていたら僕の腕の動きを君の好きなように操れる。かといって外したら魔法の餌食ってことか。


考えもしなかったよ。こんな便利なマジックアイテムがこんなにも邪魔になるなんて。」



「アスカ回避成功!3-2攻守交替です。」




「やった!やったっす、逆転っすよ!」

「アスカ、僕、信じてるからね。」

「………」




「それでは3セット目裏

はたしてここで決まるのでしょうか。

攻撃 : アスカ・守備 : カルマ

開始!」


開始早々つっこんだアスカは先ほどと同様、闇弾を、今度は3発放って、狙いを定める。


カルマの腕はそれに引き寄せられるわけで。


「ぐっ…おおおおらぁあああ!!!」


一瞬誰の声かと思うほどの怒声は、カルマのものだった。



カルマは引き寄せられる腕をもう一方の腕で力づくで引き戻し、バックステップで間合いをとる。


「ハァ、ハァ、負ける…訳には…行かないんだよ。」


(決勝戦が始まってから、時折見せるカルマの余裕のなさ。

上区に対して、冷静でいられないような何かがあるのか…

いや、集中しよう。長引く前に、ここで決めないと。)


もう一度、闇弾を放ち、距離を詰める。


すると今度はカルマは腕を戻そうとはしなかった。なぜなら、もう腕輪をしていなかったから。


「結局オートマよりマニュアルの方がいいってことか!」


自分の反射能力と魔法で闇弾を撃退したのだ。


そうすれば、多少の不自由はあるが、完全に動きを操作されることはない。



(アスカ君の魔法は強力だが、少しの間なら剣と合わせても凌げないものじゃない。


あと20秒弱。セットを重ねれば、完全に彼の足場を塞げる。そうすれば僕の勝ちだ。)



(なんて反射能力だ。同時に3球だぞ。ここで決めないとまずい。何かないか、何かまだ使ってない武器か魔法か…………!)


この土壇場でアスカが思い出したのは、ダンジョンの最下層で手に入れたマジックアイテム。

マナガン。

自身のマナを弾丸として放つことができる。


(使ったことないけど、俺の知ってる銃と同じくらいの弾の威力で、思っている通りにできたら…)


セット終了まで残り7秒。ここでアスカは賭けに出る。


今はアスカが間合いをつめ、カルマが後ろに下がってそれを離すという、一定の間合いを保っている。


そこで、アスカは片手を後ろに下げ、カルマの死角でマジックポーチからマナガンを取り出し、詰め込めるだけマナを注ぎ込む。


そして大地を踏み切る瞬間、銃を、放つ。


とんでもない爆音とともに、その反動でアスカは自分でも動きを制御できないほどの爆風に背中を押されながら、一気にカルマに近づく。


「なんだ!いったい何を…」


驚愕するカルマの目の前まで飛んできたアスカは、バランスを崩しながらも、なんとか、そのままレイピアでカルマを切りつけたのだった。



「しゅ、しゅうりょーーーう!

アスカ攻撃成功!よって勝者、アスカ


そんでもって、Cブロック優勝は、

ゼロマジックーーーーーーーー!」


「ウォオオオオオオオオ!!!」



カルマはうつむき気味に深刻な顔で歯を食いしばった後、いつもの爽やかな顔に戻って俺に喋りかける。



「正直、まだ悔しくて冷静じゃいられないけど、あんなことをやってのける君に負けたと思えば、すぐに納得できると思うよ。

いい戦いをありがとう。」


「ああ、こちらこそ。」


そういいつつ、自分がしたことよくがわからなかったアスカは自分の後方、マナガンを撃った方角を見てみると、空間魔法によって創られたこのフィールドの壁をぶち抜いて、外側の、試合を見ていたクロウ達が見えている。


「予想以上の爆風だと思ったら、あそこまで…これはしばらく封印だな。」


「最後のって、その手に持ってる…銃かい?

自分のマナを撃てるのか。ははっ君が持ったら、鬼に金棒だね。

今度使わせておくれよ。」


「ああ、かまわな…」


「あんさーーーん!」


後ろからマナガンの衝撃を思い出す痛みを感じると思ったアスカだが、それはすぐにメグが飛びかかってきたのだと気付いた。


「こいつもしばらく封印したいところだな。」



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