第50話 決着と計画
魔法には属性がいくつもあり、火と水といった対を為す属性もいくつも存在する。
対を為す属性の魔法がどう威力でぶつかったとき、2種類のマナは完全に相殺しあい、霧散する。
今起こったことを説明するなら、つまり、奴の攻撃は水魔法。
超高圧噴射による水の刃だ。
「アクアホルンのリーダー、ハーミッド!猛追を仕掛けてきた、ゼロマジックの前衛を退け、ついにリーダー対決だー!」
クロウもあの現象を理解したのか、双剣に『火』の付与をかける。
そして、2人でハーミッドに剣を斬りつけるが、すんでのところで弾かれる。
「どうやらバレてしまったみたいだが、俺の魔法は攻撃一辺倒なだけじゃないんだぞ。」
地面と水平に放っていた水刃を自身の眼前に、地面と垂直に生み出して即席のシールドにする。
厄介だな。
油断しているとは言わないが、できればこの試合はレイピアと炎弾だけで勝ちたかったんだが…
よし、終わらせるか。
「クロウ!正面から攻撃を頼む!」
「任せろ!」
「2人で来てもムダだ。水刃の初速度ならどちらも捌ける。」
そして、ハーミッドの目の前に到達すると隠密を発動させて姿を消す。
「何っ!?」
「うぉらっ!」
「くっ」
クロウの双剣による連続斬撃はいずれも水刃により弾かれるが、攻撃がくるとは思ってもいない背後からの刺突には対処できない。
「どこへ行った!」
その問いに答えるはずもなく、背に三段突きを放つ。
「ぐっ…なんて…威力だ…」
『痛覚』の付与されたレイピアによる突きにより、あっという間に第1シールドは破られ、衝撃で前につんのめる。
当然ながらその倒れかかる正面には既に剣を構えたクロウがいるわけで-------
「しょ、勝負ありーーー!こんな結果を誰が予想したでしょうか。7区のベテランパーティーが8区の新米パーティーにあっという間に敗れ去りました!
2回戦進出は、ゼロマジックーーーー」
試合が終わり、ハーミッドが歩み寄って来た。
「アスカ、とか言ったか。お前、最初から全力出してなかっただろ。いや、最後まで…
いや、変な追及はしない。悔しいが、お前たちの実力は認めるよ。
俺たちみたいにベテラン、ベテランって騒がれてても、結局は何年も留年してるってことだ。
お前らはこのまま、国選パーティーになっちまえよ。少しは俺たちの顔をもたせてくれ。」
ハーミッドは頰をかきながらそう言った。
「はい、そのつもりです。」
来年はアクアホルンも国選パーティになれるといいな。
こうして、無事に一回戦を突破することができた。
「でも、カルマ君たちは勝つとは思ってたけど、ジンナーたちも勝ち上がってくるとは僕は思わなかったよ。」
2回戦進出者の控え室。
初戦の緊張もとれて、イオンはくつろいでいた。
俺たちは次の作戦を立てるべく話し合っている。
「だが、あいつはあれでも地属性魔法の使い手だろう?」
「ああ、クロウの言う通り、予想のときに使ったと思われる地形操作。あれをあの森のフィールドで使われて足場を取られたら厄介だ。
だから、次は短期決戦に持ち込む。」
「あんさん、というと…」
「ああ。俺が真っ先にリーダーであるジンナーに突っ込んで勝負を決める。」
「簡単に言うが、敵パーティーの陣形の奥に単独で突っ込むのは少しリスクが大きくないか?それこそ地形操作を使われたら…」
「ああ、そこのところも考えてある。それはそれとして…
俺が再前衛に出るということは、もしリーダー襲撃がうまくいかなかったときのための、後衛のイオンを守る奴がいなくなるってことだ。」
俺はゆっくりとルイズを見つめる。
「ルイズ。頼めるか?お前の力が必要だ。」
「ふん。私を誰だと思ってるのよ。アスカなんていなくても余裕に決まってるじゃない。」
「そうか。なら、みんなは4人の足留めを頼む。」
やっぱり頼もしいな。
そうしてもう一度、俺たちは森のフィールドへと入っていくのだった。
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