第46話 因果と本戦
「しゅぅーーーりょぉーーー!今、行動可能なパーティー全組がゴールしたぜー。
ゴールした組は全部で64組。予定の100組を大きく下回る事態となったがこれが実力社会だ!
上位3着はいづれも8区出身の新米ベンチャー。とにかく今年は若手が熱い!
2つの予選を終えたので、少し休憩を挟んでいよいよ本戦に移るぜーー。本戦は正真正銘の力と力のぶつかり合いだ。気合い入れてけよー!」
今はカルマたちと一緒に本戦参加者控え室で談笑している。
「いやあー。10km走るというのは思ってたより疲れたね。」
「そうか?付与魔法つけてたんだし、俺はそんなに疲れは感じなかったな。カルマなら尚更かと思ったが。」
するとカルマは目を点にして、自分の体をペタペタと触り、そして無邪気な笑みを見せる。
「あはは。みんなにかけるのに夢中で、自分にかけるのをすっかり忘れてたよ。」
嘘だろ。
「ってことは、お前、素であの足の速さなのか?」
「うん。そうだね。昔から体を動かすのは得意なんだ。」
そんなレベルの話じゃないと思うが、こいつは本気でそう思っているんだろう。
「あんさん、あんさん!どうにかしてくださいよ〜ルイちゃん。」
「ちょっと!」
「ん?ルイズがどうかしたのか?」
「それがっすね、予選で全然活躍できなかったし、あんさんにも頼られなかったから拗ねてるんすよ。あんさんから何か言ってやってくださいよ。」
「す、拗ねてなんかないわよ!ただ、私だけ何もしてないのが、癪なだけよ。」
確かに、今回の予選は特殊な場面が多かったからな。でも、次の本戦は戦闘、ルイズの力は必ず必要になるはずだ。
「じゃあ、次の本戦で十分に活躍してもらおうかな。」
「の、望むところよ!」
「私もがんばるっすよー」
「そうだな。カルマとかをぶっ倒してどんどん勝ち上がるぞ。」
「アスカ君!?一緒に国選パーティーになろうとは言ってくれないのかい?」
そんな冗談を言う隣では、クロウがパインペイン姉妹になぜか気に入られて質問責めにあい、意外にもイオンとロイが意気投合して話こんでいる姿があった。
「さあ、いよいよベンチャー大会本戦だ。
内容はトーナメント形式によるパーティー対パーティーのバトル!!
8組ずつAブロックからHブロックに分かれて競い、各ブロックの一位が国選パーティーになれるぜー!」
「あと3回勝ったら、国選パーティーに……
アスカ。僕、夢でも見てるみたいだよ。」
国選パーティーになれるのは10組って聞いてたが、違うのか。
いや、予選通過者の少なさから見てもこの数への変更が妥当なのか。
まあ、どっちみち狭き門だしな。
「ここまできたんだ。なってやろうぜ。」
「うん!」
「今回のバトルは特殊だ。
一人一人に特殊な黄色のシールドを二重に貼らせてもらう。
そのシールドは攻撃を受けた際に肉体にダメージを通さないが、ダメージは蓄積される。
シールドはシールド保有者の体力を測定してそこから蓄積ダメージを引いていく。
保有者の体力のマックスを10とすると、体力が5削られる毎にシールドが破れる。シールドは破れそうになると赤く変色するからそれが合図だな。
肉体的ダメージは受けないが、どんどん体力が削られていくことに注意しろよ!
さあ、注目の組み合わせだ。
こっちで完全ランダムに決めさせてもらったぜー。こいつだー!
【Aブロック】
…
…
【Cブロック】
1回戦 (クラス/区)
第1試合
ゼロマジック(A/8区) vs アクアホルン(A/7区)
第2試合
アースクエイク(A/8区) vs 風刃(B/7区)
第3試合
聖なる光(B/7区) vs ミスリルの盾(B/8区)
第4試合
炎水の剣(A/8区) vs カルディア(A/7区)
…
…
…
【Hブロック】
… 」
こうして改めてみると、大仰な名前ばっかりだな。この世界の感性がそういうものなのかもしれない。
まあ、ゼロマジックも大概だが。
「えっと…俺たちは…」
「あっ…」
俺より先にどのブロックかを発見したイオンが悲痛とも言える声を漏らす。
「どういう因果だろうね。8ブロックもあるのに君たちと当たることになるなんて。偶然とは思えないよ。」
そう言いながらカルマの顔には薄っすらと浮かぶ笑みが見え隠れする。
「いや、もしかしたらとは思ってたがな。」
ただでさえ数が少ない8区出身の予選通過パーティー同士を1組しか残れない1ブロックでぶつけてきているのを見ると、おそらく、7区の運営側の意図があるのだろう。
やはり、同じ平民区であり、多くの人があからさまな偏見の目を向けていないとはいっても、この世界において1つの区の違いは大きな意味を持つのだ。
とりあえず、あの人外優男に勝たないと国選パーティーにはなれないってことか。
クロウに肩を叩かれた。
「俺はアスカさえいれば負けはないと確信してるが、俺や他の3人もいることを忘れるなよ。」
イオン、メグ、ルイズもこちらを見つめる。
「ああ、もちろんだ。」
まあ、大丈夫だろう。
こんなに頼もしい仲間もいるしな。
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「ジンナーさん!アスカのとこと同じブロックですよ!」
「ああ。アスカめ。俺と当たるまでにあっさり負けるんじゃねえぞ。」
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場所はアスカやジンナーたちとはまた別の控え室。
「予選で1位のパーティーか。」
「ええ。なんでも、全員が武器選定とか。」
「なら魔法をぶっ放しちまえば楽勝だろ。
警戒するならその攻撃力がバカでかいリーダーだけだな。」
「………」
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またまた別の控え室。
「一回戦はともかく、2回戦はあの混合魔法使いが相手か…」
「何かしら、事前に手を打っておく必要があるな。頼めるか?」
「はい。お任せを。」
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それぞれの思惑が広がる中、ベンチャー大会本戦の開始はすぐそこへと迫っていた。
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