第45話 岩石と護謨
「よし、俺が土の壁を作って電気球の起動を変えるから、お前らも援護してくれ。」
「りょーかいです、ジンナーさん!」
2ヶ月前のパーティー編成会のときのジンナーの取り巻きで、パーティーメンバーとなったのは、このロッソだけだった。
他の3人のメンバーもジンナーの地属性魔法という比較的希少性の高い選定への打算的な考えで仲間となった。
ジンナーは大都市アーメリアの首長の息子であり、確かに実力もあるが、逆にそのためか、傲慢な性格を帯び、パーティーリーダーを務めているにも関わらず、本当に慕っているのはロッソただ1人である。
ロッソも希少性という面では中々高い、ゴム魔法の選定だ。
岩とゴム
この2つが電気球に対してかなり有効であったことはこのパーティーにとって幸運であっただろう。
5人は左右からの攻撃に対処しやすいように、縦一列となって駆け抜けている。
攻撃の多さに苦戦しながらも、なんとか街道を進んでいく。
故にいけると判断したジンナーが油断をしたのは必然であった。
「よし、このまま一気に…」
「ジンナーさん!」
左方から放たれた電気球。
これは今までの物とは違った。2球が双子のように寄り添いあって向かってくる。
タチの悪いことに真横から見るジンナーには一球にしか見えない。
その一球を岩で防ぐと、もう一球が姿を表す。
「なっ」
しかしもう間に合わない。
そう判断したロッソが放ったゴム弾でジンナーの背を押したことをだれが責められるだろうか。
ジンナーは衝撃で前につんのめる。
顔が向かう先にまた別の電気球が迫ってきているのを知らずに。
そして…
「痛って!なんだ?何もないのにぶつかったぞ!」
そう目前に迫る電気球を見送るために、立ち止ったイオンの背にある弓にぶつかったのだ。
もちろん、透明化しているので見えないが。
(やばっ後ろに人が…ってジンナー!?いや、そんなことより早くいかないと。)
そしてジンナー、フロンが急に立ち止ったことによって、次に起こることは車の玉突き事故を想像すれば似ている。
「どわああっ!」
5人は雪崩れるように倒れ込んで、その勢いで街道を突破しきったのだ。
「おおーーっと、カルマたちに続いてここで2組街道を突破だーー!」
「2組?アスカ君たちだけに見えるけど…あっ」
「いててっ何だったんださっきのは。」
「ジンナー!なんでここに?」
「ん?イオン?ってことは…
アスカ!てめえ、まだ残ってやがったか。」
「ん?イオン、誰だコイツ。知り合いか?」
「アスカ!ジンナーだよ。編成会のときに絡んできた。」
「んー………ああー。地属性のか。お前もこの大会に参加してたんだな。」
「ああ。…じゃねえよ!とにかく!武器選定のお前らなんかに絶対遅れはとらねえからな!」
(かませ犬感がハンパじゃない奴だな。)
心の中で呟いたアスカだった。
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