第39話 受付と再会

「それでは、ベンチャーカードを提示してください。」


「はい。」


「Aクラスパーティのゼロマジックですね。

こちらの書類に各者サインをしていただければ、大会受付は完了です。あとは正午までにそこの転移ゲートから集合場所の7区のオンズまで直通なので、しばらく、ゆっくりしていっても、早めに行くのも自由ですので。」


書類には、ベンチャー大会における注意事項や詳細が書かれていた。


・意図的な殺害行為、又は倫理的に問題がある行為は厳禁とする。

・パーティーは原則5名。ただし、競技の際に欠員が出た場合は、減った人数での参加が可能。

・上位10組のパーティーが国選パーティーの資格が与えられ、同時に6区への昇格権を得る。

・参加資格はベンチャーであることのみなため、Aクラスパーティから、Cクラスパーティまで参加できるが、クラス別による便宜は図らない。


等々だ。


「アスカ、これからどうする?まだ少し時間があるが…」


クロウの言葉はパーティメンバー以外の者の声で遮られることとなる。


「やっぱりね。君は絶対に参加すると思っていたよ。」


鮮やかな赤色の髪をなびかせ、腰には立派な片手直剣、そこら中の女をおびき寄せそうな程美形な顔を持った優男。


カルマだ。


「久しぶりだな。カルマ。お前も参加するとはな。」


「当然じゃないか。僕も国選パーティーになりたいしがない平民だからね。

クロウ君も久しぶり。2ヶ月見なかっただけでも大きな変化があったのは感じるよ。」


「ああ、それなりに努力はしたつもりだ。」


他の人には分からないのにカルマは、クロウのマナの量に気づくか。


やっぱりあいつは只者じゃないよな。


「あ、そこのお嬢さんも久しぶりだね。元気にやれていて何よりだよ。」


「…ルイズよ。あなたのおかげでベンチャーになれたとも言えるし、改めて感謝しておいてあげるわ。」


「ルイズか、いい名前だね。僕はカルマ、よろしくね。」


強気な態度をとったルイズだったが、純真なカルマの笑顔を受けて、気が引けているようだ。


ルイズも優男には敵わないか。


「ああ、ちなみにこの2人はイオンとメグ。この5人でパーティーをやってる。」


「よろしくね。そうだね。僕の仲間も紹介しよう。彼女が……


あれ?」


「はぁー。女どもなら受付が終わるや否や買い物に行ってくるって、姿眩ましましたよ。荷物持ちと一緒に。」


あちゃーと手を額に当てる様もなぜかカルマがやるとファッション雑誌に載ってそうなほど様になる。


「僕は、カルマのパーティーのフロンです。よろしくです。」


「お互い、勝ち上がれるといいね。アスカ君と戦いたいっていう気持ちもあるけど、まあお互い頑張ろう。

じゃあ、僕たちは姿を眩ましたメンバーを探してくるよ。また会おう。」


カルマたちは商店街の方へと歩いて行った。


「さて…」


武器や防具の手入れはこの日に備えて万全だ。生活品や食事は大量にマジックポーチに収納してある。


つまり時間までやることがない。


「あんさん、あんさん。お菓子出してくださいっす。」

「メグ、竜車の中でも食べてたじゃないか。あんまり食べると太るよ?」

「む?イオンうるさいっすよ。私は太らない体質だから大丈夫っす。」


発言からしてメグの将来の体系が心配になったが、昼食がまだだったことを思い出して、みんなでとってから転移ゲートへと向かうことにした。



「転移ゲートなんて、初めて使うっす。あんさん、ワクワクするっすね。」


「ああ、そうだな。」


俺は2回目、クロウは3回目なのだが、それを言えるはずもないので、ただ2人で目を合わせて苦笑した。


やがて視界は白く包まれていく。

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