第33話 親睦と目標

とても長く感じた交流タイムも終わったのは昼過ぎだった。


おそらく、俺たちとカルマだかりが最後の結成パーティだ。

危なかった。


今日1日はパーティの親睦を深め、翌日パーティ名を決めることで正式にベンチャーパーティとして認められるようだ。


宿は役所から与えられている。サービスがいいな。

今は宿で5人で自己紹介も終えて軽く話をしている。


俺の印象で言うと

イオン: 臆病、弱気、心優しい

メグ : 気さく、めんどくさい、鼻水

ルイズ: 態度がデカイ、意外と気が弱い


と言った感じだ。ちょっと性格に難がありそうだが、まあ悪意のある奴は1人もいないし、一緒にいる内に慣れるだろう。


俺とクロウは8区出身ということにしておいたが、能力については、一部を除いて大体は話しておいた。

これからずっと一緒にやっていくパーティメンバーだからな。


「ってことは、アスカさんは何属性でも魔法使えるってことっすか?それズルすぎです。」


「アスカでいいよ、メグ。正確には倒した上位魔物の使える魔法だけどな。」


「じゃあ、兄さん(あんさん)って呼ぶっす。ウチの地元じゃ尊敬する人はあんさんって呼ぶんですよ。」


「---まあ、好きにしてくれ。」


「クロウさんはクロウあんさんって呼ばしてもらうっす。」


俺を見て笑っていたクロウも不意を突かれ、バツが悪そうに頰をかく。


「それにしても、魔法選定の構成パーティより、武器選定の構成の方が勝手がいいって本当かしら?」

「ぼ、僕でも戦えるのかな。」


「ああ、ルイズやイオンたちみたいな選定にクロウの強化魔法や付与魔法によって補助を行なった戦闘の方が戦術は飛躍的に増える。


とりあえず、俺たちはこのパーティで脱平民、6区到達を目指す。」


俺の突然の宣言に、新メンバーは目を点にしたが、クロウは強く頷いた。


ベンチャーとしての6区への到達はすなはち国選パーティとなることを意味する。この世界においてのヒーローとも言える役職である。


6区への昇格の資格は8区民も7区民もまとめて、7区の央都が管理している。


国選パーティになる手段は2つ。


ベンチャーは1人1人がベンチャーカードを支給されており、そのカードに自身のマナを通すことで予め決められている基準を基に個人単位でクラス(階級)が表示される。


マナを介して選定や身体能力などの熟練度などを測れるそうだ。


階級は上から順にAクラス〜Cクラスまでがあり、パーティとしてのクラスはメンバーの最低クラスとなる。


ちなみに後で分かったことだが、

アスカ : Aクラス

クロウ : Aクラス

イオン : Cクラス

メグ : Cクラス

ルイズ : Bクラス


パーティ : Cクラス

だった。


さて、肝心の国選パーティになる手段だが、まず1つ目がAクラスパーティとなって、7区の央都主催の試験に合格することだ。

試験は年に一度行われており、この試験の門の狭さはAクラスパーティの数の多さに表れているだろう。


2つ目はこれも年に一度、夏の終わりに8区、7区合同で戦闘などによる、ベンチャー大会で勝ち上がることだ。


膨大な数のパーティから勝ち上がった10組のパーティが国選パーティとなって6区への資格を得るのだ。


先述した試験とこの大会は半年おきで行われており、昇格希望者に寛大なように見えるが、実際、昇格できているのはほんの一握りで、下位区に厳しいこの世界のシステムを如実に表している。


現に、Aクラスベンチャーとして生涯を終えるものが多いしな。



今年の大会は2ヶ月後でベンチャーなりたてのパーティは参加するはずがない。


が、俺たちは当然参加する。

今年は勝ち残れないかもしれないが、次に繋がる何かが掴めるかもしれない。


できる限り早く上へ駆け上がるために、あいつらと別れたんだからな。


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