第32話 優男と結成
困り果てているとクロウが俺の肩を叩いて顎を突き出す。
その方を見ると鼻水女のプレートには、
【格闘】と書いてあった。
格闘選定は、大きく分けると武器選定に入るが、ほとんどが武器選定である9区でも見たことがない。
クロウが10区にいた頃に仲間の1人にいたらしいが、かなりできるらしい。
9区ですらあまり知られていないのに8区では見向きもされるはずもない。
故のこの目の前の鼻水なのだろう。
そう考えるととても興味が湧いてきた。どんな戦闘をするのか気になる。色々難はあるが、俺たちにも拒否する余裕があるわけじゃない。
「じゃあ、宜しく頼むよ。俺はアスカだ。」
すると、女は目を輝かせ抱きついてきた。
これ以上俺に鼻水をつけないでほしいんだが。
「ほんとっすか?もう言質とりましたからね。やったーありがとうございます。アスカさ〜ん。私はメグと言います〜」
感情の起伏が激しいな。
まさか、さっきの泣き真似じゃないよな?
まあ、いいか。
最後にカルマを誘って登録できればいいんだが。
するとカルマだかりからカルマが出てきた。
「あ、アスカ君!やっと見つけたよ。
メンバーを揃えていたみたいだね。レイピア、双剣、弓師に格闘!?
面白いパーティ構成だ。あとは中衛がいれば戦術も非常に立てやすそうだね。」
やはり、カルマは偏見だらけの他の8区の人間と違って、戦術についても分かってるみたいだ。ぜひ、加わってほしい。
「あと1人空いてるよね?
僕はまだ1人なんだ。是非僕を君たちのパーティに---」
「アスカ!パーティに入りに来てあげたわ!」
もう少しでカルマに加入してもらうところで不意に声をかけてきたのは、青い長髪をなびかせる、区落ち女だった。
「あの、お嬢さん。僕が先にアスカ君にお願いしたんだけど---」
もう2度も言葉を遮られたカルマは落ち込んでいるようだ。
意外と繊細だな。
すると、女はカルマのプレートを目にして俺を見ると、体がプルプルと震え出し、顔は赤くなり、みるみる内に目に潤いが溜まっていく。
片や何十組からも勧誘が来ている、混合魔法使いの優男。片や槍使いで態度のデカイ女だ。
俺がどちらを選ぶかなんて目に見えている。
この残り人数では彼女はもうパーティには加われないということを自身でも分かっているのだろう。
「だって、ヒック、さっきは仲間になってくれって、言ったじゃない。」
「参ったなぁ。
とても残念だが、というか僕が言っていいのか分からないけど、お嬢さんに譲るよ。
泣いている子をパーティ登録の日に一人ぼっちにして突き返すわけにもいかないしね。
ということでアスカ君。勝手ですまないが、彼女を入れてあげてくれ。
君の実力なら近い内にまた会うだろうしね。その時には一緒に組もうじゃないか。」
俺と握手するとカルマはカルマだかりの中に戻っていった。
俺もカルマと同意見だったが、俺のセリフを持っていかれた気がする。
この優男め。
振り返ると、既に泣き止んでいた区落ち女がいた。
「ルイズよ。入れてくれて、感謝するわ。」
「ああ、よろしくな。」
こうして俺たちの期待ある?新生パーティが結成された。
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