第21話 告白と意外
宝箱にはお金と珍しい魔道具が入っていた。
通信用の、2つで1組の電話のようなもので、離れていてもマナを流すと通話できるようだ。
お金はカンギス区長に渡して、電話の魔道具は俺とケイトが持つことにした。
今は宿の一室に全員が集まっている。
「で、大事な話ってえのは何だよアスカ」
そう、2つ目の魔石を手に入れた今、俺とクロウの秘密を3人に打ち明けるのだ。
本当は3つ全てを集めてからにしようと思ったが、必要なことだと思う。
もう迷いなどなかった。こんな秘密、大したことないと思えるほど、俺は彼らを信頼していた。俺ほどではないにしろ、クロウもそうだろう。
そう思い打ち明けたのだが、予想外にも3人の反応の顔色が優れないので不安になる。
最初に言葉を発したのはシャルルだった。
「じゃ、じゃあ、元の世界に帰る方法が見つかったら、アスカはどこかに行っちゃうの?」
潤んだ目でそう言った。
これもまた予想外の反応だった。
俺自身最近はそのことはあまり考えていなかった。
俺は、帰りたいのだろうか?勿論、元の世界に会いたい人もいるが、それを少し薄れさせるほどこの世界の人々と深く関わりすぎた。
それに、この世界の上を見てみたいという好奇心もある。
「まあ、寂しくねえって言ったら嘘になるが、アスカが帰りてえってんなら、全力で協力するぜ!」
ギーブはいつも通りニヒヒと笑ってそう言ったが、その心中までは測れない。
「そうよ。アスカにだって故郷があるんだから、私たちが止める権利なんてないわ。
でも、そんな大規模な転移魔法?かな、そんなもの王都ぐらいにしか使い手がいないんじゃないの?」
王都、すなわち1区の都、この世界の中枢である。
この区とはかけ離れた環境・技術・水準に囲まれた人々の住む世界。
「ああ、だからすぐにみつかるわけじゃない。たとえいつか見つかっても、帰るかどうかも今の俺には分からない。俺はお前たちが大好きだ。だからこれまで通り、仲良くしてくれるか?」
その後の全員の肯定に俺は心が温かくなった。
「チビの妹もぜってー助けてやろうぜ!」
「おい、俺はそれだけか!?もっと色々言うことがあるだろ!」
おそらく、10区出身のことだろう。知り合いというだけで忌み嫌われる称号だ。3人の反応に拍子抜けしているようだ。
あいつら自身も9区の、その最果ての村出身だからそういうの気にしないからな。
「まあ、変なこと気にしてんなよ。チビも俺たちの仲間だかんな。」
「チッ…アスカといいお前らといい、拍子抜けだぜ。」
こうして俺たちのパーティは今日初めて、本当の意味でのパーティになったのだった。
「そういえばアスカ、盗賊団を倒したときに、村長に言われたよね。お礼してくれるって。」
ケイトが思い出したように話す。
「あ、ああ。ダラス村長が言ってたオリバーっていう人の店にいけばいいらしいが、何の店だろう。」
俺たちは期待を寄せながら、オリバーの店を探した。
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