第22話 白杖と近道

オリバーの店はなんとも不思議な外装だった。元の世界の言葉で表すなら、魔女の家だろうか。


どこか怪しく、不気味な雰囲気を漂わせている。

こんなんで客が来るのだろうか。


「いらっしゃい。」


優しい声が出迎えてくれた。店主は白髪やシワに相応した歳を感じさせないたくましい老人だった。


「あなたがオリバーさんですか?」


「ああ、そうだが、なんの用だい?」


「俺はシーラス村から来たアスカと言いますが、南西の村のダラス村長にお礼をしてくれると言われてこの店を紹介されたのですが。」


「ああーあのジジイか。あいつは滅多なことでは名乗らんから、お前の言葉は誠だろう。して、何をしたんだ?」


「村が盗賊団に襲われていたのでそれを……」


「おい、アスカ見ろよ。珍しい武器がいっぱいだぜ!」


はしゃいだギーブに言葉を遮られた。

しかし、意外にもオリバーさんの注意はギーブに向かったようだ。


「小僧、その背に掛けているもの。どこで手に入れた?」


「あ?ああ、この相棒はロンド村で買ったんだ。相性バッチシだぜ。」


「そうか…それはワシが作ったものだ。」


「ワシが作った槌の中で最高の出来だったが、その変わった形から使い手がおらんと言われ、分かるやつが現れるまで保管しておこうと思っていたが、留守の合間に盗まれてしまった。

まさか廻りまわって戻って来るとは…」


「これ、返した方がいいか?」


「いや、お前が使ってくれ。良さが分かるやつが使ってくれた方が嬉しい。」


「それで、何か礼だったな。各々よい武器を持っているようだが、その娘の杖だけ粗末だな。」


ああ、ゴブリンの杖か。たしかに、自分は炎鳥の剣を使って、シャルルにずっとあれを使わせていたのは何か罪悪感があるな。


それも杖はただの棒というだけではなく構造が複雑で、作れる人が少ないからだが。


「それでは、シャルルの杖をお願いできますか?」


「ああ、少し待っておれ。ちょうどいいのがあったと思う。」


そういって差し出されたのは綺麗な純白の杖だった。

「それは聖属性のスケルトンメイジの骨から作った杖だ。見たところその娘は聖属性だろう?

杖にも属性があり、同属性の魔法はマナ循環の効率が上がり、威力も上がるんだ。」


「かっこいい〜。よかったね、シャルル。」


「オ、オリバーさん!ありがとうございます。」

「おう。」


そういって杖を手に取ったシャルルは何も言わずに俺の方を向いた。

何だ。


「に、似合ってるよ、シャルル。」

「あ、ありがと。」


そういってそそくさとケイトの後ろへといってしまった。


「全員に何か魔道具をやりたいところだが、財政難でな、すまん。」


「いえ、とんでもないです。こんないい物を、十分です。

ですが、1つだけ聞いてもいいですか?」


「何だ?」


「俺たちは今からここからずっと北西にある、冬の山脈っていう所に行きたいんですが、普通に行ったら山道ってだけあって何ヶ月かかるか分かりません。とにかく早く行きたいんです。何か近道とかありませんか?」


するとオリバーさんは俺たちをジッと舐め回すように見た後、言った。

「お主の剣に使われている炎鳥。それは自分で倒したのか?」


「…はい。」


「そうか…なら、大丈夫だろう。央都の北にある雑木林に1つの洞窟がある。

そこを通れば、冬の山脈まで1日もかからんだろう。」



え?

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