第20話 黒幕と子虎
大きな白虎がそびえ立っていた。
知らない魔物だった。
コイツがボスの魔物だろうか。何か引っかかる。コイツもさっきまでの魔物と同じなような…
「ヴォオオオオオ」
すると虎が爪を立てて襲いかかってくる。飛翔を使って回避。
よけた場所を見ると金属の床が削れていた。
「アスカ!ここはアスカは手を出さないでくれ!いつもアスカに頼ってばっかじゃ、いけない気がするんだ。」
みんなも同意と言わんばかりに武器を構える。
「ああ、分かった。だが危なくなったら加勢するからな。」
それだけ言って俺は後ろに下がった。
大丈夫だろうか。確かにギーブたち、もちらんケイトやシャルルも14歳にしてそこら辺の大人なんかよりもよっぽど強い。
だがあの虎はぱっと見だが炎鳥にも引けをとらない戦闘力があると思う。
あいつらを信頼しているが…
まずシャルルが聖魔法: ホーリーシールドを全員にかけ、物理・魔法ダメージを軽減させる。
そしてクロウがとんでもない速さで虎の周りを駆けて虎を翻弄し、左脚をケイトが右脚をクロウが切り裂く。
「グァアアアアア」
怯んだ虎の体を駆け上り、ギーブが棒で虎の目を突く。
ギーブがあの武器を買ってきてから、よく突き技を教えてくれと言われて教えてやった。きっと自分でも必死に練習したのだろう。
キレイな突きだった。
振り払う腕に巻き込まれてギーブが飛ばされた。血が出ていたが、ホーリーシールドのおかげで大きなケガはないだろう。
あれほどの援護魔法を同時に3人も維持するのも相当な技術がいるはずだ。
虎も大きく怯んだが、右手を上げて叫ぶ。
すると右手には青白い光が集まって…
氷の刃になった。
それをギーブに放つ。
しかしシャルルが前に出て腕を掲げる。
氷が霧散した。
退魔の腕輪だ。
虎は続けて氷の刃をいくつか放出してくるが、シャルルはそれを無効化し、ケイトは剣でいなしながら、前進し、先刻切りつけた脚の部分をもう一度突き刺す。
さすがの虎も体勢を崩して屈む。
ギーブがそれに合わせ大きく振りかぶるが…
虎が急に立ち上がり、ギーブを吹き飛ばす。
「ぐっ」
おかしい。足にはかなりのダメージがあるはずばのに無理をして足を引きずる様子も見せない。
先の魔物といい、まるで“操られている”ように立っている。
!!
自分のもつ、テイム(従魔)の魔法を思い出した。魔物を使役する魔法だ。別の何かがそれを使っているのかもしれない。
そう思い、部屋の奥へと向かう。
柱が立っていた。
覗き込むが何もいない。
「おい、待てこら!どこ行きやがる!」
突然虎がこっちに向かってきた。まだクロウたちが攻撃を仕掛けていたのに。
これで半ば確信した。ここに虎を操っている何かがいるのだ。しかし、目視できない。そういう魔法なのだろうか。
自分の確信に少しの疑問を浮かべながらも、柱に向かって闇弾を放つ。
すると突然スケルトンが“見えた”。
何もないところから突然その場に現れたのだ。
スケルトンは叫び声を上げて部屋のさらに奥へと駆けていく。
すごいスピードだ。
「なんだ!アスカ、何があった?」
さすがクロウだ。虎よりも先に俺のところまで来たようだ。
「あいつが、あの虎を操っているんだと思う。」
「そうか、あいつが…」
ローブを纏ったガイコツが、人間を超えるスピードで駆けていくのは不思議な光景だった。
それもクロウが追いついてしまう前までだが……
結論から言うと、あのスケルトンがこの遺跡のボスだったらしい。魔石も魔臓も回収した。
今回俺が反省すべきことは、パーティの仲間をみくびっていたことだろう。みんなも陰ながら努力し、日々成長しているのだ。連携もすごくとれている。
俺はゴブキンや炎鳥を一人で倒したからといって調子にのっていたのかもしれない。
4人対俺で戦ったらどうなるだろうな。
今は遺跡の最奥の宝箱の前に全員で集まったんだが…
「「かわいいーー」」
「モフモフだぜ!」
3人の注目は1匹の子虎?に集まっていた。
そう、先の白虎である。スケルトンに操られていたときには許容を超えるマナを送られ、体が変質していたのだろう。
これが元の姿ということだ。
虎というより、まるで猫だな。
スケルトンを倒してから、危害を全く加えなくなったので、シャルルが治療したのだ。
「ねーねーこの子、飼いましょ!
ちゃんと世話するから!」
ケイト、犬や猫じゃないんだぞ、虎だぞそれ。
しかし、ギーブシャルルの後押しで、俺も折れ、この虎をパーティで飼うことになった。
「じゃあこいつも今からパーティの一員だな!」
ギーブがいたずらっぽくニヒヒと笑う。
白虎は俺らに向かって軽く会釈した。言葉の意味などが分かるのだろうか。
なるほど、可愛いじゃないか。
それにしても、この白虎、感謝しているようにも見えるけど、どこか違う所を見ているように感じる。
どこか遠い所に気がかりがあるような…
「あっ待って!」
「おい、待て、俺のモフモフ〜!」
感謝らしき会釈を済ませると、突然子虎は走り出した。
ケイトやギーブが必死に追いかけたが、壁の小さな隙間に入っていってしまい、完全に見失ってしまった。
ケイトとギーブはあからさまに落ち込んでいる。
「ま、まあどう生きるかはアイツの自由なんだからケイトもギーブもそんなに落ち込むなって。
とにかく遺跡を攻略できたんだからよかったじゃないか。」
それにしても、あの虎はなんだったんだろう。
図鑑にもあんな魔物はどこにも載っていなかったし。
魔物ではない何か---なのか。
まあ、考えても仕方ないか。
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