第10話 迷宮と炎鳥
子供たちは白烏クロウというらしいが預かって貧民街へ帰って行き、翌日クロウの家に集まって、クロウと俺たちの5人で迷宮に入ることになった。
今はそこへ向かう道中だ。
「ねえ、あんな目つき悪いやつホントにパーティに入れる気?まだ小さいじゃない。」
ケイトにはそうとうな言われようだ。
俺は夜に宿でギーブから聞いたから彼が同い年だと知っている。
もちろん驚いたが。
「ああ、あいつはチビだがメチャクチャ強えぞ。それに、大事なもんのためになんでもできるとこが気に入ったのよ。」
「私も…見た目は怖いけど、悪い人じゃないと思うよ。」
「おおーシャルルはわかってんじゃねえか。」
俺もシャルルと同意見だ。ホントに悪人なら昨日もあのまま話も聞かず逃げてしまえばいい。まあ、今日で多少人となりも分かるだろう。
ちなみに、昨日宿でシャルルから青いバンダナをもらった。この世界に来てプレゼントをもらったのは初めてで嬉しい。
今日からさっそくつけることにした。
「まあ、いいわ。」
ケイトも渋々納得したようだが、彼女もああ見えてとても優しい。心の中ではもうほとんどクロウを受け入れているだろう。
そうこうしているうちに貧民街へ着いた。
何かが腐った匂いが充満し、所々に死体や汚物が落ちていた。
同じ村の中なのにまるで別世界だ。
左手の奥の木でできた小さな小屋の前に銀髪の少年が立っていた。
クロウは3か月前ほどから迷宮に入っており、徐々に道や構造を覚えていったようだ。
地図も何もなしで1人でやったのだからすごいものだ。
迷宮は1フロア毎に迷路のようになっており、ボス部屋にいる上位の魔物を倒すと階下への階段が現れるんだそうだ。
外見はシーラスの森にあった遺跡と同じで石造り。ただし大きさは桁違いだ。それが地下へと続いていくのだから尚更広いだろう。
クロウは既に3層まで攻略している。4層まで降りたらかなり上位の魔物がいて、命からがら逃げて来たらしい。
彼が逃げるほど強力な魔物とはなんなのだろうか。
まあなんにせよ、そんな迷宮に新生シーラス防衛団(仮)?はついに足を踏み入れた。
迷宮の中はシーラスの森よりも瘴気がずっと濃いように思われる。その分魔物にも注意が必要だろう。
1層や2層の魔物はスライムやネズミなどの見慣れたザコばかりだったがスライムの中には毒を持ったものもおり、油断していたらイアンとかいう子供の二の舞になっただろう。
3層に入ると、ゴブリンなどの魔物も現れ、シャルルがトラウマからか少し怯えていたのでレイピアで串刺しにしてやった。
やはり階層を下る毎に魔物の強さも上がっていくのだろう。
3層のボス部屋まではクロウの案内でスラスラ来れた。4層へと繋がる階段に足をかけたクロウが言った。
「ここから先は迷路もクソもねえ。やるかやられるかだ。油断すんなよ。」
全員がコクリと頷くとクロウに続いて5人が階段を降りていく。
4層に着くとそこは小さな四角い空間だった。ただし正面には鉄の扉がある。
この奥に最後のボスがいるらしい。おそらくその魔物の魔石が資格の鍵だろう。
全員が目線を合わせてから、ギーブとクロウがゆっくりと扉を開ける。
さあ、迷宮攻略の闘いの始まりだ。
扉が開くとそこは広い広い何も無い空間だった。
そう、“何も無”かった。
「バカ!上だ!逃げろ!!」
クロウの叫びに反応して上を仰ぐとそこには赤い羽を全身にまとった巨大な鳥が急降下してこちらに迫って来ていた。
咄嗟に体を転がして横に回避したが鳥の着地の風圧でさらに遠くへ吹き飛ばされる。
クロウはうまくいなして躱し、ギーブはケイトとシャルルをかばって、吹き飛ばされたようだ。
「それにしても…炎鳥か…」
あの魔物は図鑑で見たので知っている。
ゴブキンほどでは無いが、上位に入る魔物で口から火を吐く炎鳥ファイアーバードという飛行型の魔物だ。
その羽は見た目とは打って変わって硬質で、肉まで刃も通りにくく、武具の素材にも使えるらしい。
シャルルは除いてアタッカー4人が全員近接系の武器のこの集団では相性最悪じゃないか。
まあ俺は魔法使えるけど。
魔法が使えるとギーブたちに話したら、驚かれはしたが、選定が魔法系でない人も修練次第で使えるようになる人も稀にいるとのことで、納得していた。
まだしばらくは本当のことは黙っていよう。
「うぉぉぉぉーー」
クロウが物凄い気迫で着地した炎鳥に斬りかかる。両手に持った双剣を舞うように降り続け、硬いはずの羽の傷はどんどん増えていく。
「キィェェェェーーーー!!」
炎鳥は雄叫びを上げ、羽ばたいて浮上し、距離を開けてからクロウとギーブたちに向けて大きな火の粉を2発放つ。
ギーブたちは距離があるため大きく下がってこれを躱すが、浮上の風圧で体勢を崩したクロウにそれを回避する術はない。
そこで俺は操縦闇弾を使う。合計3発。
1発をクロウへ向かう火の粉へ。もう2発を炎鳥の両翼へと放った。
闇弾とぶつかった火の粉は衝撃とともに霧散したが、炎鳥の方は体を翻し、1発を避けて片翼に風穴をあけるにとどまった。
だがこれで終わりじゃない。
空を切って通り過ぎた闇弾を操作しUターンさせ、炎鳥の胴体にぶち込んだ。
「ギャャァァー」断末魔の叫びとともに炎鳥は落下して動かなくなった。
あれ?なんか思ってたのと違う。
やっぱゴブキンの力はすげえや。
ゴブキン 万歳
炎鳥が火の粉を放ってから、その間僅か7秒。
4人は呆気にとられていた。
特にクロウは目つきの悪い目で睨むように俺を見ていた。
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