第11話 加入と別離
最初に沈黙を破ったのは、ギーブだった。
「前からすげえすげえとは思ってたけどよ。底が知れねえぜ、アスカよ。俺たちなんもしてねえじゃねえか。」
「ホントよ、剣も強いのにあんな魔法が使えるなんて反則じゃない。もうシャルルなんかいらないぐらいよ。」
「もう!ケイト!酷いこといわないで。」
「冗談だってば〜」
なんとか納得してくれたようだ。むやみやたらに魔法は使わないようにしよう。
「お前、選定は何だ?」クロウが睨みながら聞いてくる。
「いやあ…選定っていうか…」
「アスカは12歳より前の記憶は所々曖昧なのよ。選定も分からないけど、多分長剣か魔法かしら。」
ケイトの言葉に納得いかないのか少し黙る。
「まあいい。そのうち話を聞こう。それより…」
クロウが炎鳥の亡骸に振り返る。
「倒した後は…どうなるんだ…勝手に移動するのか…」
聞こえるか聞こえないのか分からない声で独り言を呟いていた。
「何ブツブツ言ってんだ?」
ギーブがクロウの顔を覗き込む。
「お前らには関係ない!」
「なんだよー、でもまあ、とりあえず資格の鍵の1つ目はゲットだな!」
ニヒヒと笑うギーブ。
「な…資格!?1つ目…だと…!?」
クロウが初めて大きな動揺を見せた。
「今、資格と言ったな!1つ目とはどういうことだ!この迷宮を攻略したら、8区へ上がれるんじゃないのか?」
!?
クロウも資格を得ようとしていたのか。
遺跡がキーとなると分かったのは凄いが、シーラスの森の遺跡を知らないと魔石が3つ必要とは分からない。
最初にあれを見つけた俺たちは運が良かった、と言うべきか。
クロウに遺跡や3つの魔石のことなどを説明したが、しばらくは動揺を隠せないでいた。
「お前たちは、迷宮の宝が目当てだったんじゃないのか?」
「そんなもんどーでもいいよ。俺たちは8区へ上がって、国選パーティになるんだ!」
ギーブがそういうと、なぜかケイトも胸を張る。
張るほどのものは無いが…
「国選パーティ…なるほどな、バカな連中だぜ…俺と同じで…」
その後、炎鳥の魔石を確認し、魔物ごとポーチの中に入れた。
なるほど、確かに遺跡の窪みにハマりそうだ。
お宝も確かにこの大広間の最奥部にあった。
金貨、銀貨と金属製の腕輪が2つだ。お金はともかく、腕輪は何に使うのか分からないが、まあもらっておいて損はないだろう。
上へと続く階段も現れており、おそらくこれが出口だと思われる。
階段を上ると、最初に出迷宮に入った入り口に出た。一度迷宮を出てしまってそこから入っても、1層に入るだけだった。どういうことだろう。
これも特殊な魔法がはたらいているのだろうか。
こうして一行は無事、貧民街のクロウの家へと帰ってきた。
「「「クロウ兄ちゃん、おかえり!」」」
「お、おう。」
クロウも気まづいのだろう。迷宮で手に入ったお金でこの子供達を孤児院に預かってもらうのだから。
子供達もクロウと離れるのは嫌がるだろうが、彼らのためを思えばこちらの方がいいはずだ。
「アスカ、ケジメのためにもこいつらのためにも今ここで俺から言おうと思う。
俺を、お前たちの仲間に入れてくれ。」
素直じゃないってギーブから聞いてたけど、やっぱり芯は通ってるしいい奴だと思うんだよな。なにか隠してる感じはしないでもないけど。
「俺は歓迎するけど、俺だけでは決められないからな〜」
そういって、視線を後ろに流すと、ギーブは満足そうに頷き、ケイトとシャルルは、
「ふん、ギーブが勧誘して来た人にハズレはないはずよ。今のところ1分の1だけど。」
「よろしくね、クロウくん。」
と言って顔を背けたり微笑んだりしていた。
それを聞いたクロウは振り返り、
「だから、お前たちとはこれでお別れだ。孤児院に頼んで、預かってもらうことにする。今よりも美味い飯がたくさん食えるんだ。布団だってあるんだぞ?」
さあ、子供達の抵抗の始まりだ。クロウは一体何分で説得できるのやら。
「うん、分かった。」
えっ!?
即答で受け入れたのは、毒が治ったイアンだった。
クロウもこの答えは予想していなかったのか一瞬戸惑ったが、頷いて続ける。
「分かってもらえて助かる。お前たちを嫌いになったわけじゃない。俺はずっと遠くでやらなきゃいけないことがあるんだ。
イアン、今回みたいに1人で突っ走るんじゃねえぞ。お前は1番兄ちゃんになるんだ。みんなを…頼むぞ。」
「ゔん!」
イアンの目に涙が浮かんでいるように見えたのは、俺の気のせいではないだろう。
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