第9話 白烏と勧誘
俺たちは細い路地を進んで、追ってくる男たちをまいた。
道は分からなかったが、コートの子供が手や顎で道を指示してきた。
喋れよ。
ひとしきり走って、追っ手の声も聞こえなくなった。
すると子供はフードを脱いだ。
綺麗な銀髪を無造作に生やしている目つきの悪い少年が姿を表した。
「どうして助けた?」
その睨みは助けた奴にするもんじゃないと思うが、まあいいか。
「俺ぁ大勢で1人を囲っていたぶるのは許せねえかんな。気づいたら手ェ出しちまってた。」
「金なんかないぞ。」
「金?んなもんいらねえよ。
それよりすげえ強えな、オマエ。そんなガキなのに。その二本持ってたやつ、剣だろ?選定はなんなんだ?」
少年は驚いた顔をしてたが、すぐにきりかえす。
「そんなことお前に言う筋合いはない。さっきも1人で逃げられた。礼は言わないからな。
それと、お前もガキじゃないか。」
「なんだよつれねえな。俺はギーブ!国選パーティになる男だ!歳は14、あと少しで成人よ!」
「…チッ…
……クロウだ。俺も14だ。」
「マジかよ!シャルルと変わんねえぐらいチビじゃねえか。」
「うるさい、俺は帰るぞ。」
「待てよってやべっ集合時間過ぎてんじゃねえか。チビ!一緒に来いよ。俺の仲間ぁ紹介してやる。」
「誰がチビだ!いらん、もう帰…っておい!離せバカ…なんつー力だ。」
やべえちょっと遅れちまったが、おもしれえ奴見つけたから許してもらえるよな。
-----アスカ視点-----
ギーブが遅れてやってきた。なんで子供をひきずってるんだろう。
「おーい、アスカー待たせて悪かったな。」
ひきずられているのは綺麗な銀髪の少年だ。
「「「クロウ兄ちゃん!」」」
その場にいた子供たちが皆喜びの声を上げた。
「お、お前ら…なんでこんなとこに。、おい、イアンはどうしたんだ?」
子供たちはバツが悪そうにしていたが、銀髪の少年が睨むと話し始めた。
「イアンが…迷宮に宝を取りに行って、クロウ兄ちゃんにもお腹いっぱいご飯食べてもらうんだって、止めたんだけど…それで、入ってすぐ魔物の毒でやられちゃって…」
「あのバカっ…毒だって?待ってろ!すぐにポーションを…」
「その必要はないよ。俺の毒消ポーションを飲ませたから。しばらく眠ってれば大丈夫だと思う。俺はアスカ…そこのギーブの仲間だ。」
「そうか、そんな高価なもんを…クソッ待ってろ!近いうちに金は払う。」
風格と子供たちの反応からしてコイツが噂の白烏だよな。
盗みとかしてる割には意外と律儀だな。いや、それだけ子供たちのことを思ってるってことか。
そこで待ってましたとばかりにギーブがニヤニヤして口を開く。
何を企んでいるんだろう。
「それならよ、チビには金払ってもらう代わりにウチのパーティに入って協力してもらうってのはどうよ。」
「「えっ!?」」
勧誘ってことか?白烏を?
一緒にいたギーブが言い出したんだから、悪い奴じゃないとは思うんだがな…
だが、あちらもこれについては承諾できないようだ。
「ふざけんな、そんなもん入んねえかんな。」
「でも、金は受け取らねえぞ?」
ギーブが珍しくノリノリだ。そんなに白烏が気に入ったのか。
「くっ…せめてあと少し待て…近いうちに俺があの迷宮を攻略する。そうすりゃ金だって…そのあとは、俺なら好きにすりゃいいさ。」
どうやら白烏はかなり前から迷宮攻略に取り組んでいたらしい。
なんでも、ロンド村の孤児院の経営が難しくなって、溢れて貧民街に流れ込んだ孤児たちの面倒をまとめて見ていたらしい。
迷宮を攻略して得た金を孤児院へ持って行き、子供たちを預かってもらうのだそうだ。
どうやら、俺たちの目的は一致していたようだな。
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