第8話 万引と白烏
時は少し前にさかのぼる。
アスカたち4人は無事ロンド村にたどり着き、宿をとって一時解散した。
-----シャルル視点-----
すごい。こんなにたくさんの人見たことない。まさかホントに旅ができるなんて。
これも全部アスカのおかげ。アスカが助けてくれたから。今私はここにいる。
でも、あの日からアスカの顔を見るとなんか恥ずかしくなっちゃう。どうしたんだろう、私。今度ケイトに聞いてみよ。
「…ぇ、ねぇ、ねえってば、シャルル!聞いてる?」
「えっ…えへへ、なんだっけ?」
「もう、あのお店の服、可愛いから行ってみましょって言ったの!」
あっホントだ…カワイイ…私もあんなの着ても変じゃないかな。
「うん!行ってみよ!」
この町の服は見たことない物ばっかりだった。
あと、アスカに似合いそうなバンダナがあったから勢いで買ってきちゃったけど、喜んでもらえるかな…
結局服選びでかなり時間を使っちゃったと思う。
八百屋にも色んな野菜があるなあ。
ってあれ?あの子…あれれ?
「ねえ、お金払わないの?」
「げえっ!」
私たちよりも小さくて汚れた格好の子がトマトを持っていこうとしてました。
「こらっまた貧民街の連中か、今日という今日は許さねえぞ。引っ叩いてやる。」
八百屋さんもカンカンだ。
でも、叩かれるのはいくら悪いことしたって言っても可哀想だよね。
「あ…あの…お代なら私が払うので、許してあげてくれませんか?」
「ちょちょっとシャルル、関わんない方がいいって!」
「で、でもこの子たちもやりたくてこんなことやってるとは思わないの。」
「まあ、払ってくれるならいいが、嬢ちゃん、あんまし貧民街の連中と関わらない方がいいぜ。」
お金を払って子供にトマトを渡してあげた。
「ねえ、今日私たちと一緒の宿に泊まってかない?服も新しいの買いましょう!」
「ちょっとシャルル…
もう、しょうがないんだから。」
当の子供たちはポカンとしてたけど手をつないで連れてっちゃいました。
-----ギーブ視点-----
会ったことないタイプの奴だった。
女みてえな名前してると思ったら頭もいいし、ゴブリン3匹を1人でたおしちまうほど強え。
おまけに資格の手がかりまで見つけて旅をすることになった。
ワクワクがとまらねえ。
武具屋に入ると、たくさんの武器や防具が壁に掛けられていた。見てるだけで1日ここで過ごせそうだぜ。
おっ
これだ
と思った。
ハンマーは1発の威力は高いが動きも他と比べて鈍いし、もし人に使ったら軽いケガじゃ済まないだろう。
人に使うつもりはないが、悪人と対峙してしまったとき、いくら悪人とは言えそこまでするのは気分がいいものじゃない。
そんなことを考えて武具屋へ来ていた。
そして見つけたこれは長さ1mぐらいの金属の棒で先が丸く、膨らんでいる。
「珍しいだろ、それは央都のオリバーが作った新作だそうだ。一応、鉄槌って部類に入るみてえだが、他の槌とはえらく勝手が違うもんだから誰も買わねえんだ。だから安くしとくぜ?」
当然買った。今日からコイツが相棒だ。肩掛けの紐ももらったので背に斜めがけする。ちなみに親父の鉄槌はアスカの魔法のポーチに入れてもらってる。
早くアレも使いこなせるようになりてえよ。
武器の相場はよくわかんねえけど、銀貨20枚だった。
ぼられてねえよな?
店を出た途端、遠くから怒鳴り声が響いてくる。
「白烏が出たぞ〜。捕まえろ〜。」
物凄いスピードでぼろぼろのフードつきのコートを着た子供がこちらへ駆け抜けてくる。
「な、な、なんだあ?」
剣を下げた大人10人ほどがその後ろから追いかけている。
「チッ」
子供が舌打ちしたので何事かと後ろを振り返ると少年を挟み込むように前方からも何人かが駆けてきていた。
「大の大人が大勢で子供1人を追い詰めるたあ、穏やかじゃねえな。」
早速コイツの威力を試すいい機会だと思ったら、子供はコートの背中から2本の剣を鞘に入れたまま取り出した。
それは、短剣よりは少し長く、長剣よりは短い。
子供は剣をだすと同時に襲いかかってきた大人3人の鳩尾を剣先(正確には鞘だが)で順に突いていく。
「す、すげえ…」
自分と同い年かそれ以下ぐらいに小さいのに、その身のこなしは洗練されている。
「こんの、クソガキがー!!」
大人は一撃で崩れ落ちたがそれでもやはり数の差が大きく、後ろからのもう1人に殴り飛ばされる子供。
大きく体勢を崩し、尻をついた。子供に先程鳩尾をくらった奴が激昂してついに剣を抜いた。
子供めがけて振りかぶっている。
まずい。
「死ねぇー!」
キィン!と火花が散った。
今まで感じたことのない金属同士の武器のぶつかり合い。
それは思っていた以上に重たいものだった。
だが、怯んでられない。
こうしてる間に別のやつが襲いにくる。
棒を傾けて剣をいなして、男を蹴り飛ばす。
ついでに近くにいた別の男も棒で腹を突いてやる。
「行くぞ!」
そして俺は子供のコートを掴んで、細い路地へと駆け出していた。
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