第4話 戦果と遺跡

紫色に輝く、魔物のコアの部分。おそらく、魔石だろう。

上位の魔物の心臓部にあるらしいとギーブが言っていた。


それと、ゴブリンが腰に下げているポーチが気になった。

回復薬か何か入っているといいんだが…

正直、殴られたところがかなり痛い。


そしてポーチの中に手を突っ込むと…底がなかった。

「すごい。これも魔法なのか。」


すると頭の中に、ポーチに入っている物らしいイメージが流れ込んできた。どれが回復薬なのかも伝わってきた。


色々気になる物もあったが、とりあえず回復ポーションを取り出して、脇腹にふりかけた。どうやら、こういう道具は俺にも作用してくれるようだ。とりあえず、ポーチは貰っておいた。


そして、すぐ確認すべきことがあった。


「シャルル!シャルル大丈夫か。」


気を失っているだけのようだ。ケガも特に見当たらない。そのうち目を覚ますだろう。


魔物の体は武器の素材などに使えるとケイトが言っていたので、ダメ元で親玉ゴブリンをポーチの口へ近づけてみる。


すると、ゆっくりと吸い込まれるようにポーチの中に入っていった。ポーチの大きさは変わらない。

「やった、大きい物もしまえるのか。」


ゴブリンの杖と残りの二匹のゴブリンもポーチにいれ、シャルルを背をって帰ろうとしたところ、妙な場所があるのに気づいた。


それは言い表すなら遺跡。

石造りの壁に、所々カビが生えているが、神秘的な雰囲気を漂わせている。


少し警戒しながら、遺跡の中へと入っていった。そこには小さな部屋が一つあるだけで、中央に石版が置かれ、大きな地図と、文字が刻まれていた。


《3つの魔石を収めし者に

上への道は拓かれる。》


地図はポツポツと3箇所が薄く光っており、その3つに対応して地図の下に3つのくぼみがある。


「上への道って…もしかして、資格のことか。こんなとこにあったなんて。」


見るからに、それぞれ地図の場所にある魔石をここにはめ込むんだろう。


問題は魔石と上位の魔物がセットということ。おそらく先の親玉ゴブリンはこの遺跡の門番のようなものだったんだろう。


「あんなのがあと三匹…上に行かせる気ないじゃないか…。」


実際、俺に魔法が効いていたら、2度ほど死んでいただろう。戦闘能力については、ある理由から元の世界にいたときから人並み以上にはあると思っていた。


思っていたよりこの世界はシビアなようだ。

これからのことは3人にこの石版を見せて、話し合うことにしよう。


「よし、ギーブも森から出てる頃だろうし、さっさと帰ろうかな。」


森の中、シャルルを背をってきた道を戻って行く。簡易的なマーキングはしてあるので、それを辿っていった。


背中でモゾモゾと動く。シャルルが目覚めたようだ。

「やだ…やめて…いや…

あれ? アス…カ?どうして?」

「ああ、もう大丈夫だ魔物はもういないよ。」

最初は震えていたが、抱きつくように背中にしがみついてきた。よほど怖い思いをしたのだろう。

「帰ったら、なんで1人でこんなとこまで来たか、話してもらうからな。」


「うん…」

シャルルの頰が赤くなっているように思ったが、まあ感情が高ぶっていたせいだろう。


森の入り口では驚きと安堵の両方を顔に浮かべたギーブが立っていた。


シャルルの姿や俺の服の血を見たギーブが何かと騒いでいたが、それをいなしてとりあえず村にシャルルの無事を伝えた。

誰もが心からの安堵を表していた。それほどこの村の繋がりは強いのだろう。


もっとも、俺たち4人(特にシャルル)は大人たちにこっぴどく叱られたのだが---



その後、シーラス防衛団はギーブの家に集まった。みんなの視線はシャルルに注がれている。

「でっなんで1人で森の奥まで行ったんだよ。」

ギーブが珍しく厳しい口調で聞く。

シャルルが怯えたが、ケイトがギーブを睨んだのでギーブは優しく言い直す。


「みんな…心配したんだぞ。」


「ごめんなさい。でも…いつも魔物を倒すのは…みんなに頼ってばっかで、私も…役に立ちたくて…みんなを守れるように強くなりたくて…」

涙目で途切れながらも、シャルルは言った。きっとこれまで思っていたが、迷惑をかけたくなくて言えなかったのだろう。


「お前はいつも俺たちの傷を直してくれるじゃねえか。お前はいつも俺たちを守ってくれてる。

お前がいなきゃ、命に関わることだってこれからあるかもしれない。それに、魔法なんか抜きにしても、俺たちにとってお前は必要なんだよ。」

ギーブはいつものように白い歯を見せてニヒヒと笑う。


俺とケイトもシャルルの目を見て頷く。


「みんな…ありがどうぅ」


シャルルはワンワン泣いた。

これまで溜まっていた何かを涙と一緒に流し出すように-----



ひとしきりシャルルが泣いた後、俺も口を開く。

「こんなタイミングだけど、俺からも言っておきゃなきゃいけないことがあるんだ。」


当然視線は俺に集まる。


「シャルルがいたところの近くに、資格の手がかりらしい遺跡があったんだ。」


それから、石版や魔石について俺の見たことを話した。ゴブリンのことは話したが、俺と魔法についてはとりあえず、黙っておくことにした。


「まじかよ…そんな近くにあったなんて…」


「森の中だし、近くだったからこそ、気がつかなかったのね…」


3人とも驚いていたが、その顔はすぐに喜びの色に変わり、翌朝に4人で遺跡へと足を運ぶことにした。


俺は村長に頼んで紙と黒鉛をもらった。地図を書き写すためだ。この世界(この地域だけかもしれないが)では紙は貴重らしい。


マーキング通りに森の奥へ進むと、あいも変わらず神秘的な遺跡は昨日のままそこにあった。みんなも惹きつけられるように見ていた。


中に入って地図を見たケイトが叫ぶ。

「何よこれ!遠いってもんじゃないじゃない!」


なんでも目的地である3箇所はここからはるか遠くにあるらしい。


やっぱり、上に行かせる気ないだろ、これ。

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