Prelude
EP.
第4@話 彼女の見る夢
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私はいつも同じ夢を見る。
あの少年が自分のところに帰ってくる夢だ。
彼はいつもと同じように笑っていて、
そして妙なものを持ち帰ってくる。
見たこともない植物に動物、信じられない力を持った道具、
輝く剣に美しい服、そしてたまには食べ物も。
それらはすべて、彼が異世界から持ち帰ってきたお土産だ。
なかには、煙を吐き出しつづける箱や、見るもおぞましい六本足のなめくじの卵や、あっちこっちに排泄物をまき散らす猫もどきのような、わけの分からないものも連れ帰ってきて、そのたびに私は眉根を寄せて文句をいう。
そんなとき彼は決まってこう言う。
「異世界には、君が知らないものがたくさんある」
私は答える。
「わたしは、すべて知っているわ」
だけど彼は馬鹿にしたように笑う。
「本物を見に行こう」
「本物?」
彼はポケットから首飾りを取りだす。
――それは彼が14番目に行った世界で手に入れてきた輝石ファンシアだ。
私は、それを手に入れるために彼がどれほど苦労したのかを知ることができる。
だけど私は、そのことを知ろうとはしない。
「大したものじゃないけど」
「綺麗な石……」
「いつも迷惑をかけてるからね」
少年はぎこちない手つきで、首飾りを私にかける。
私は、その腕にある無数の傷跡を見て、彼の苦労を知りたいと思う。
だけど、私は、そのことを知ろうとはしない。
「似合ってるよ」
少年がはにかんだ。
私は、彼の手を掴んで、その冒険に思いを馳せる。
だけどその瞬間に彼の手はするりと溶けて、
黒いゲートのむこうへと消えていく。
「行っちゃダメ」
「帰ってくるよ。そうしたら次は、一緒に」
「本物を、」
言葉だけが残ったまま、私は一人になる。
喪失と後悔。私は翼を閉じて、うずくまる。
いつもそこで、夢が終わる。
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See you in a different world.
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