4. 相違
「あっ、
篠原さんの顔がぱあっと明るくなる。彼女のとこまで来て、「そう、体育だった」と人懐っこい笑みを浮かべた男子。
あの人は、
彼のことはよく知らないけど、人当たりの良さそうな人。顔が小さいし睫毛は長いしスタイルもいいしで、とにかくモテるという印象しかない。
クラスの女子たちは爽詩くんだと顔を赤らめて、ひそひそと小声でかっこいいやら話したいやら言っていたけれど誰も話しかけに行く人はいない。
司波くんは篠原さんと話している時に他の人が割って入ってくるのが心底嫌なんだという。一回、女子がそれをしたことがあったらしいのだけれど、冷たい目を向けられて多分結構なことを言われていたという噂が聞こえてきたことがある。
噂は一瞬でまわる。形を変えたりして。
「あれ?
「洸真はまだ遊んでるよ」
司波くんは校庭の方を指差した。サッカーボールで数人と遊んでいるらしい月城洸真くん。私には一体どの人がそうなのかよく見えなくてわからないけれど、彼は
篠原さんは瀬那という弟の方と付き合っている。瀬那くんは生徒会長もしているし、成績もいいしで完璧な人。完璧というイメージしか浮かばない。
洸真くんの方はなんだか不良っぽい雰囲気があって、少し怖い。この兄弟は親の再婚で兄弟になったらしく、血は繋がっていないらしい。だから二人とも同じ歳なんだという。
ね。篠原さんには完璧な彼氏だっている。
私とは大違い。
「爽詩は遊ばなくていいの?」
「もう十分遊んだよ。楓のこと見つけて、思わずこっち来た」
額の汗を手の甲でぐいっとふいて、司波くんはにこにこと笑った。私はそれを横目に校舎の中へと入った。
篠原さんの周りには羨ましいほどかっこいい人たちがいる。ああやって笑いかけてくれる人がいる。すごいよ、あんな人たちと友達で、その中の一人とは付き合っているなんて。
私にはもう遠い、遠い世界で、わからない。
司波くんと月城兄弟は、学校でとても目立っている。その容姿も優秀さも。だから女子がこぞって彼らに近づきたがる。
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